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私の部屋も竜之介くんの部屋も元から物が少ない事や、家具家電などは既に竜之介くんが手配してくれたとの事で、運ぶ物は本当に最小限。
それに竜之介くんや田所さんを初め、助っ人として手伝いに来てくれた人たちのおかげで引っ越し作業はあっという間に進み、陽が落ちかけた夕方にはほぼ荷造りを終える事が出来た。
アパートの引き払いの手続きなどは後回しにして、明日の午前中にマンションへ荷物を運ぶという事で話は纏まり、今夜はどうするかという話になった時、竜之介くんの提案でとあるホテルに泊まる事に決まった。
「ママみて! ひろいね! おふとんおっきい!」
私たちが泊まる事になったのは市街地にある結構名の知れた高級ホテルで、しかも、そこの客室最上階にあるスイートルームだった。
「竜之介くん……こんな立派なところなんて、私……」
「いいんだよ、気にしなくて。兄貴が来れなくて部屋が余ってるんだから」
「でも……何だか、申し訳なくて……」
何故ここに泊まる事になったのかというと、現在、海外に住んでいるという彼のお兄さん――名雪 慎之介さんが日本に予定があって今日から数日滞在するつもりだったらしいのだけど、会社でトラブルがあったらしく、どうしても今日は帰国する事が出来なくなり、予め滞在期間中はこのスイートルームに泊まる為に予約していた事から、来れなかった今日だけ部屋が余っているという話を知った竜之介くんの提案で今夜だけ私たちがこの部屋に泊まる事に。
ホテルに泊まるという話になった時、同じ部屋に泊まるなんてと戸惑いもあったのだけど、よくよく考えてみたら明日から一緒に住む訳だし、このスイートルームはリビング部分とベッドの部分を扉で仕切る事が出来る事から、寝る時は私と凜がベッドを使って竜之介くんがソファーで寝るという話になったのだ。
でも、それじゃあ悪いから私がソファーで眠ると言ったのだけど、女の人をソファーで寝かせて自分がベッドで寝るなんて出来ないからそれは却下と言われ、更には今日泊まるホテルのソファーは大きくて疲れる事もないから問題無い、気にしないでと彼に押し切られる形で私と凜がベッドを使わせて貰う事に決まった。
実際この部屋を見て、竜之介くんの言っていた意味が良く分かる。
この部屋のソファーは何人掛けなのだろうと思う程大きく、ソファーで眠ったとしても普通のベッドと同じくらい寝心地が良さそうだから。
「飯はどうする? ルームサービス頼んでゆっくり部屋で食べようか? レストランもあるけど、凜が飽きて騒いだりしたらゆっくり出来ないだろうし」
「あ、うん、そうだね。部屋で食べる方が良いかも」
高級ホテルのレストランなんてとんでもない金額の料理ばかりな気がするのと、子連れで行くような場所ではない気がした私はルームサービスを頼む事に頷いたのだけど、
「亜子さん、どれにする? 凜はこのお子様プレートでいいか。おもちゃも付いてるし」
ルームサービスのメニューを見ていた竜之介くんに言われて覗き込んでみると、こちらもなかなかの値段が付いていて思わず二度見した。