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「ぺいんとってクロノア先生のこと苦手なん?」
トラゾーにそう聞かれたから即答してやった。
「苦手じゃなくて嫌い」
「クロノアさんはぺいんとのこと苦手なんですか?」
トラゾーがそう聞いてきたものだから即答した。
「苦手なんじゃなくて、好きじゃない」
一目惚れしたあの子のいる学校にやっと来れた。
俺は教えるクラスが違ったけど、すれ違った時に一目で好きになった。
どことなく危うい雰囲気と、誰かに依存してなきゃダメな感じに。
俺のところに堕としてやりたいって思った。
不純な動機で転勤してきたなぁ、まぁ俺って一途だし?とか考えていたら廊下を歩いていた学生とぶつかって尻もちをつかせてしまった。
「うっ⁈」
「!!、ごめん大丈夫?」
あ。
みつけた。
「いえ、すみません…俺こそ余所見してて…」
見上げてきたトラは当然俺のことは知らないわけで。
まぁここでいきなりがっついてもいけないからと、手を伸ばす。
6割は本気で心配してるけど残り4割は邪な感情を持って。
「……立てる?」
「大丈夫で…っわ、」
腕を引いて立つのを手伝えば、困惑しながらもはにかんでいた。
変わんない、可愛い笑い方。
「ご、ごめんなさい」
「いいよ俺こそ迷っちゃってたから。な、職員室ってどこ?」
「(急いではいるけど職員室の場所は知ってんだよな。時間あったからトラのこと探してただけだし)」
そしてきっと優しいのも変わってないから嘘つけばきっと。
「え、あ俺でよければ案内しますけど、今は職員会議してるかと…」
ほらな。
絶対そう言うと思った。
「マジ⁈やばっ!俺それに出んといけねぇんだ!」
そして騙されやすく絆されやすいのも変わってない。
だけど、それが更に助長してるのは誰かの調教による賜物か。
「え⁈じゃ、じゃあ急がなきゃ…!こっちです!」
廊下は走るなとよく学生時代に言わてたけど言う立場になった俺が一緒になって小走りしてる。
トラが俺の手を掴んで引っ張ってくれてるから、怒る理由にもならない。
と言うかトラなら何しても、なんでも許す。
「ここです…ッ」
「うわぁ、マジで助かったわ」
にこりと笑うと、可愛く笑い返してくれた。
「いえお役に立ててよかったです」
あぁ、やっぱ可愛い。
あん時俺のモンにしとけばよかった。
誰かの手が離れていたあの瞬間に。
「お尻大丈夫か?結構思い切り尻餅ついてたけど」
強く打ったであろうお尻を撫でるとびくりと肩が跳ねた。
「(なるほど、コッチも調教済みか)」
「ひゃ…ッ」
こんな簡単に感じるようにされて、俺相手にこんな声聞かせたの知られたら大変かもな。
「あっ、…ごめんなさいッ、変な声…」
「気にしてねぇよ?んじゃ、案内ありがとな。…トラ」
「いえいえ!……って、え、今名前…⁇」
ついつい呼んじゃった。
でもこれから、もっと、ずっと呼ぶようになるんだしいいよな。
そう思って職員室に入る。
シーンとしてる室内。
トラのお相手はあの人殺しでもしそうな目で俺を見てる男だな。
「(あ?つーかノアじゃん。…へぇ)」
知らない奴だったら完膚なきまでに容赦しねぇけど。
知り合いなら楽勝じゃん。
手加減もする必要もないし。
「すみません。ちょっと迷っちゃって!ここの学生の子に案内してもらったんです。はは、いい子もいるんですねぇ」
この学校、どうやらノアがなんかやってるみたいだけど、残念ながら俺もそれができちゃうんだよなぁ。
「これからよろしくお願いします。皆さんや学生の”みんな”と仲良くなれるように頑張りまーす」
少しだけざわつく空気。
そりゃ、1人だけ触れちゃいけない学生がいるもんな。
ノアの大事な子が。
というか、先に目ぇつけてたのは俺なんだし。
だったらトラはノアのモノじゃなくて俺のモンだろ。
それにもう1人くっついてる奴がいるし。
塾終わりに竹刀担いでトラを迎えに来ていたあいつだ。
「(そいつもどうにかしねぇとな)」
親友ポジ気取ってトラに色々仕込んだ、とんだ野郎がな。
あいつらから助けてやるな。
やっと見つけた俺だけのモノ。
「あ!いたトラゾー!」
職員室前で困った顔して首を傾げるトラゾーを見つけて大きな声で呼んだ。
びっくりしたあいつは慌てて人差し指を立てて静かにするようジェスチャーしてきた。
何その仕草、エロ可愛い。
小走りで近寄るとトラゾーが小声で怒ってきた。
何してもこいつ可愛いから、何しても許せる。
許さないのはクロノア先生と恋人ってことだけだ。
俺は認めてねぇし、渡したつもりもねぇ。
「バカ、職員会議中だぞ…」
「ワリ」
「今日早かったんだな」
「まぁな。…トラゾーは職員室になんか用あったんか?」
竹刀を抱え直していたらトラゾーが手を出してきた。
「人案内。ほら、持つよ重いだろ」
「ふぅん。あんがと、なんか彼氏の荷物持つ彼女みてぇ」
「バッ……親友でも持つだろ」
本気でそう言ったけどトラゾーには肩を小突かれた。
「ふかぁい親友だもんな、俺ら」
「⁇、うん」
そう刷り込んだから。
きょとん顔のトラゾーにこれを見れるのは俺だけだと優越に浸る。
「帰ろーぜ」
竹刀を持ってない方のトラゾーの手を握り引っ張って廊下を歩く。
「なんか高校生にもなってこんな仲良すぎなんって変じゃねぇかな」
「俺とトラゾーには関係ねぇよ。周りのことなんてどうでもいいし、トラゾーは何も気にしなくていい」
「ん?うーん…、うん、分かった。ぺいんとがそう言うならいいんだよな」
こいつの弱いところに付け込んで、俺だけだと刷り込ませて。
トラゾーは本気で俺のことを親友と思ってるだろうけど、世間で親友があんなことするわけない。
頭はいいけど抜けてるちょっとバカなとこあるし、信用を置かれてる俺の言うことを信じて疑わない他人依存なところをつついてやれば簡単に絆される。
「俺はもうトラゾー置いてどっか行ったりしねぇよ。約束したもん」
「お、ぼえてたのかよ」
「忘れるわけないじゃんか。『トラゾーのことは絶対にひとりにしない』っての」
小学生くらいの時にトラゾーと指切りした約束。
あの頃からトラゾーを自分の方に引き寄せて離さないように引っ張り回していた。
ぺいんとがいなきゃダメかもってトラゾーが言った時は小学生ながら興奮で震えたね。
「この先も俺がずっといてやるからな」
「うん、ありがと…」
ぎゅっと握り返される俺より少しだけ大きい手。
差し出せば重ねて握り返してくるこの手を絶対に離さないし、渡さない。
「お前は一生、俺のだ」
「ん?なんか言ったか?」
聞こえてなくてよかった。
いや、聞こえていたとしてもトラゾーはそれを親友の枠として捉えるだろうから誤魔化しはどうにでもなる。
「…なんも。帰って今日出た課題片付けちまおうぜ」
「わわっ、んな引っ張ると転けるって!」
ずっと、俺だけの親友。
ここ最近、トラゾーとちゃんと話できてないなと思って電話をかける。
手元に持っていたのか急いで出たのか少し上擦った声でトラゾーが通話をとった。
『もしもしッ』
「ふは、そんな慌てなくてもいいよ。出るまで待つし」
ちょっとだけ舌足らずな喋り方。
これをもっと回らなくなるまでぐずぐずに溶かすのが愉しい。
『出るまでって…申し訳ないですよ』
申し訳ない顔をしてるんだろうな。
見なくても手に取るように分かる。
「まぁ、着信残しとけば律儀なトラゾーは掛け直すだろうけどね。やっぱり俺からかけたいじゃん?恋人として」
『っっ!!』
今は真っ赤になってるんだろうな。
「(見てぇ…)」
「照れてる?可愛いね、トラゾーは」
くすくす笑うとトラゾーが子供らしくムッとして声を出した。
『クロノアさんは余裕あるでしょうけど、俺はいっぱいいっぱいですよ…』
「俺も余裕ないよ。トラゾーのこと誰にも盗られないようにみっともないくらい必死になってるもん」
『クロノアさんが?…全然見えませんよ…?』
「カッコ悪いとこは見せられないからね。隠してるだけ」
子供みたいに嫉妬してトラゾーのことめちゃくちゃにしたいと思ってるのに。
それを見せたらどうなるんだろう。
もっと俺に依存してくれるのかな。
言葉を発しないトラゾーに、すごい可愛い顔をしてるんだと察する。
「…今、すごい可愛い顔してるでしょ」
『かわ、いくないです…』
それを見ることができるのは俺だけだ。
「俺はいつでも見えるし、この先ずっと見てくつもりだから」
『お、俺も、クロノアさんのいろんな顔見たいです。ずっと』
「うん、嬉しいよ。そう言ってくれて」
こんなにも俺に依存してくれるなんて。
好きになってくれるなんて。
ビデオにしてなくてよかった。
愉悦に歪む顔を見られずに済んだ。
『そんな……っ、あの、』
「なぁに?」
緊張で震えてるトラゾーに歪む口元のまま優しく声をかける。
『今度、クロノアさんの家に遊びに行きたいです』
「俺ん家?」
こんなこと言うと思ってなくて間の抜けた声が出る。
と、言うか、
『ダメ、ですか…?』
「ダメじゃないけど、外に出してあげられなくなるよ」
『⁇、どういう…?』
「ただでさえ人目を気にしながら会ってるのに、俺の家っていうテリトリーに自分の恋人招き入れるんだよ?……何もされないと思ってんの?」
誰も入らせたことがない、俺の家。
俺のテリトリーに入りたいと言う可愛い可愛い恋人。
トラゾーが指し示している言葉の裏の意味は、
「トラゾーは今、俺のこと誘ってるんだよ?シて欲しいって」
『ぁ、う…ッ』
無自覚でこれはヤバすぎる。
歪む口元が更に吊り上がっていった。
「………なーんてね、冗だ『俺はっ、…』うん?トラゾー?」
本気で捉えてるつもりだけど、ここは建前として冗談と言おうとしたら遮られた。
『クロノアさんにいっぱい触って欲しいですし、あなたのこと満足させてあげたいです…。こんな俺でいいなら、たくさん好きなようにして、欲しい…』
あんな純朴そうな見た目で、中身はこんなだなんて俺のこと信頼してくれている彼のご両親が知ったら泡を吹いて卒倒するだろうな。
「…そう、俺の好きなようにしていいんだ」
『はい、俺…クロノアさんになら、なにされてもいい…』
「……分かったよ。今度の三連休泊まりにおいで?ご両親には勉強教えてもらうって言うんだよ」
勉強なんてしないのに、頑張って嘘をつくトラゾーもきっと可愛んだろう。
「クロノア先生とたくさんえっちしに行ってくる、なんて言ったらダメだからね」
『い、言いません!言うわけないでしょ!クロノアさんのバカっ!』
焦ってる。
俺に対してバカなんて言うのはトラゾーくらいだよ。
「トラゾー顔に出るからやらしい顔して言いそうだもん」
『やらし…っっ⁈』
「やらしいよ。俺のこと見てる時の顔」
スマホの向こうでトラゾーが身じろいだ。
「もっと触って、もっといっぱいにして、って」
『っ…はッ、ぁ…』
「……トラゾー」
『ん…ッ、』
切なそうな小さな声に察する。
「最近、俺”は”触ってあげれてないからね。…我慢できなくなっちゃった?」
『ど、どうしたら…わか、んな…っ』
不安と困惑。
混乱したような上擦ったトラゾーの声に自身が重くなる。
「ビデオ通話にしてスピーカーにできそ?」
『は、ぃ…』
ビデオ画面に切り替わるとトラゾーの切なげな発情顔が映っていた。
「ベッドに座って、スマホどっかに立てかけれる?」
ひとつずつ指示をし、トラゾーはそれを言われるがまましていく。
「ん、いい子だよ。じゃあ、下ちょっとずらせる?」
スウェットとパンツを下ろしていた。
恥ずかしさよりも、触れることが嬉しそうな表情をしている。
「(こんなに疑わずに俺の言うこと聞くのは、不本意だけど彼のお陰でもあるんだろうな)」
「声は我慢しなきゃいけないから服、咥えて」
『んむ、』
「俺がしてあげてるように触れる?トラゾーはいい子だからちゃんと覚えてるよね」
「ンッ」
俺がするように下から上に擦るようにして、先っぽを爪先でグリグリとぎこちなく触っている。
その手慣れてない感じも、俺自身を反応させていた。
『ふ、ぅんッ!』
「胸の方も一緒に触るとトラゾーすごく気持ちよさそうにするんだよ。…できるね?」
『は…んぅっ』
片方を爪で引っ掻くようにツンと尖った先を触るトラゾー。
気持ちいいみたいで足先に力が入って背中も丸まっていく。
『ん、ンンッ!、ふ、ッぁ、んっ!』
高く掠れた声が耳に甘く響いた。
俺にだけ見せる、本当に情けなくてやらしい姿。
「ッ、そう、…じょうず、だよ」
硬く反応してる自身を取り出し触る。
トラゾーの我慢しようとする表情と隠そうとしてるけど止まらない手の動きに、いつも以上に硬くなっていた。
「(はは、やば…すげぇ興奮する)」
「ほら、トラゾーの、っ、溢れてきて、るだろ?…その触りか、た…ッん、すると、すぐ、イッちゃう、んだよ」
行為してる時のように囁いてあげると、びくんっと身体が大きく跳ね背中が仰け反ったトラゾーがイッた。
『ふぅんんっ!!』
「ッ、ぅく…っ!」
手の平に吐き出される精液。
肩で息をするトラゾーのイッたあと特有の気怠さと溶けた表情にぐずぐずにもっとしてやりたいと思った。
「一緒に、イッちゃったね」
『ッう、ん…、』
トラゾーがもぞもぞと動いて俺の方を眉を下げて見ていた。
『く、ろのあさ、ん…っ』
『トラゾーすごいやらしい顔になってる』
精液を吐き出した手の平をちらりと見たかと思ったらトラゾーが徐ろに後ろに手を伸ばした。
『ん、ぁッ…♡』
「……」
後ろを弄るトラゾーをじっと見つめる。
ダメだと分かっているみたいだけど、我慢できずにやらしい顔を晒して指で触っている。
『はッ♡ぁ、ンン…お、くっ、とど、かッ♡、なぃ…♡』
「……ひとりあそびする悪い子にはお仕置きだよ?」
こんなん見せつけられて許せるわけがない。
我慢できない子には教え直しが必要みたいだからね。
服も咥えとけって言ったのに離しちゃってるし。
『ぉしおき、ッ♡』
期待に膨らむ表情。
ドロドロに溶けた緑は発情しきってる。
「…して欲しいの?」
『あな、たになら、♡してほし…っ』
嬉しい、と上擦る声が悦んでいた。
どこにあるか覚え込ませた前立腺を押したみたいでびくんと腰が跳ねる。
『ひぁあんっ♡』
「酷くされたいんだ。やっぱりトラゾーはドMだね」
『ん♡!』
もっと言って欲しいって、半開きの口から赤い舌が覗いている。
「お望み通りたくさんいじめてあげる。楽しみにしてて」
わざと声を低くするとトラゾーがまた達した。
『はッ♡ぁ、ふっ♡』
「可愛い…すげぇカオ蕩けてる」
あと2日後にはトラゾーの心身に覚え込ませないと。
寝かせてあげれるだろうか。
その間に壊れちゃったら、それはそれで万々歳だけど。
俺なしじゃダメにできるし。
「そのカオみんなに見せないようにね?じゃなきゃ俺、もっと酷いことするかもしんねぇよ?」
『みせ、ませんっ♡あなた、いがい、嫌だッ♡って言ったもん…♡』
嫌々と首を振るトラゾーはホントに、可哀想だ。
「ふはッ♡…じゃあ、ちゃんと我慢できたらご褒美もあげる。勿論、お仕置きもするけど」
『はぃっ♡』
こんな表情は彼は知らないだろう。
トラゾーにとって、彼としてることは友達としての延長線上でしかない。
それ以上の感情はないのだ。
「ホント俺のこと大好きだね、トラゾーは」
『好きッ、大好きです…♡』
ほら。
こんなカオで好きだと言うのは俺にだけなんだから。
歪む口元を覆い隠して、表情を切り替えにこっと笑う。
「後始末できる?」
こくんと頷くトラゾー。
「よしいい子だね」
ティッシュで汚れたところを拭いてゴミ箱に捨てる姿もじっと見る。
もっともっと情けない表情にさせて、困惑させて、俺に頼らざるを得ないようにしないと。
トラゾーだから許してること。
「あと2日触らずに我慢できるかな?」
『ん…できますッ、』
我慢できない。
でも我慢しなきゃ。
我慢したら気持ちいいこといっぱいしてもらえる。
そんな堪えてる表情。
トラゾーの心情は手に取るように分かる。
俺がそうしたから。
けどそれには障害物が多すぎる。
「…はぁー…早くトラゾー卒業して欲しいな…」
『、一緒に住む?って、言ってたやつですか?』
「俺が我慢できない。四六時中トラゾーといたいから」
傍に置いていないと不安になる。
閉じ込めていないと安心できそうにない。
ずっと俺の下で啼かせて、ダメにしないと。
『っっ!』
下を整えたトラゾーがきゅっと服の裾を握り締めていた。
「それに卒業すれば合法的にトラゾーのこと抱けるし」
先生と生徒、という1番邪魔な障害さえなくせば誰にも邪魔もされないし文句も言われない。
恋人同士なのだから言わせはしない。
『!!?、く、クロノアさんのえっち!』
「ひとりあそびしたトラゾーに言われたくねぇけど?……ま、あと2日お互い我慢しようね」
自分で誘ったんだからちゃんと責任取らせないとね。
高校生はもう大人なんだから。
『…、はい』
そのあとは少しだけ他愛のない話をして通話を切った。
通話履歴を見て口元が歪む。
「ふはッ…」
その為にも、もっと俺たちが過ごしやすいように周りをどうにかしないとね。
離しはしないよ、俺の恋人。
「どうも初めましてー、らっだぁです」
ざわつく教室内。
新しい先生が転勤してくると女子生徒たちが噂していたけどホントのようだった。
「これからこのクラスの副担任として、ノア……クロノア先生と楽しくやっていこうと思いまーす」
にこーと笑う顔に女子生徒が黄色い声をあげる。
クロノア先生と系統が似てる。
優しげで穏やかそうな爽やかイケメンという、女子からは絶対にモテるタイプの人だ。
「(クロノア先生はいろんな事情があってダメだけどな)」
ちらりと窓側の真ん中に席がある短めの黒髪で綺麗な緑の目が特徴的な生徒にご執心だからだ。
オレら、というよりこの学校にいる人全てあいつには手出しができない。
あの先生1人にそんな力あるのかと思ってる奴らもいた。
現に、あいつ、…トラゾーに手を出そうとした人たちは教師も生徒も関係なく姿を消したし。
クロノア先生に好意を寄せる人たちからトラゾーが嫌がらせをされそうになる前に彼女たちはいなくなっていた。
トラゾーはといえば、どうしてそんなことになってるのか全く分かっていないようで。
あの先生単体でしてることだと、オレらは恐ろしくてトラゾーに近付くことも出来ない。
なんてことを考えていたららっだぁ先生が教卓前から降りてトラゾーの方に近寄ってく場面だった。
ぴしりと、空気が凍る。
クロノア先生をちらっと見ると、見たことを後悔させるほどの冷徹な顔をしていた。
綺麗な顔してるから余計に際立つ。
「あん時ありがとな!トラ!ちょー助かった!校長に怒られずに済んだし!”いろいろ”言えたし!」
「ひぇ」
この先生は、クロノア先生とトラゾーの立ち入れない関係を知らないのだろうか。
隣に座るぺいんともらっだぁ先生を射殺さんばかりの目で睨んでる。
クロノア先生の目は冷めきって全く笑っていないし。
これ、ぺいんとが転校してきた時と同じ空気感以上になってる。
「(どんな関係値なのかまでは分かんないけど、ちょっとヤバくないか…)」
氷点下ってくらい教室内の空気が下がる。
誰も声を出せない。
「ぁ、あの?なんで、俺の名前…というか、愛称知って…」
困るトラゾーが首を傾げてらっだぁ先生に聞いていた。
なんていうか危なげというか、無知というか。
「調べたから」
「調べた…?」
「トラ中3の時塾、通ってただろ」
確かにと頷いていた。
てか頭いいと思ってたけど、苦手科目とかもあったんだ。
「俺そん時の講師してたんだよ。トラんとこじゃねぇけど」
「?…⁇」
「で、トラのこと調べ上げてここに来ちゃった☆」
「な、なにゆえ…?」
トラゾーの手を握る手に力が入ってるようで、あいつも助けを求めるようにぺいんとやクロノア先生を見ていた。
「え?そんなん好きだからに決まってんじゃん」
教室内の空気が完全に凍った。
オレらが保たされていた不穏で平穏だった学校生活が終わりを告げる。
「らっだぁ先生冗談、キツいですよ…?」
「冗談?そうじゃないって証明しようか?」
握る手を引き、困惑するトラゾーを置き去りにしてキスをしていた。
この場で、平然と、先生が、触れてはいけない生徒に。
「ほらマジだろ?」
一瞬無音になったかと思ったら響き渡る教室内の人たちの悲鳴。
それは引いたとか一部の人たちの興奮とかじゃなくて、オレらが終わってしまったという悲痛な叫びだった。
クロノア先生がらっだぁ先生をトラゾーから引き剥がし、機械的な低い声で騒ぐ教室内の場を収める。
「(これ、めちゃくちゃヤバいんじゃねぇの。この状況でわけ分かってないトラゾー頭おかしすぎだろ)」
固まって状況が掴めてないトラゾーの頭には疑問符や感嘆符が見える。
騒ぎを聞きつけた隣のクラスの先生やらがオレらのクラスに入ってきたけど、一言二言言って出て行った。
クロノア先生は分かる。
でも、何故からっだぁ先生も見た瞬間、顔を青褪めさせあまり騒がないようにと小さく注意して出て行ってしまった。
あの怖くて有名な体育教師ですら。
肩を叩かれるまで固まっていたトラゾーにぺいんとは呆れ返っていた。
いや、お前もおかしいよ。
「…やっぱお前変なのに好かれてるじゃねぇか」
「変って…」
「あの2人、どんだけこの学校で実権握ったんだよ…」
学年主任も体育教師もクロノア先生に逆らえない。
らっだぁ先生も、もしかして。
巻き込まれたオレらも、この学校自体もおかしい。
「(こんな学生生活送るつもりなかったのに…)」
「トラゾー俺から離れんなよ」
「お前が離れないんじゃんか…」
こんな空気感でよく普通に会話できるな。
頭のネジ外れてんのかよ、と思っていたらバチッと温度のない翡翠と深い青と橙に睨みつけられた。
「(オレ、終わった)」
弱味を握られてるオレはいつまで学校にいることができるだろうか。
外面のいいあの先生に、いなくなった奴らの親たちは懐柔されてるのだろうな。
クロノア先生によって前に連れ戻されたらっだぁ先生は何事もなかったかのようにトラゾーの方を見て笑いながら手を振っていた。
その手をクロノア先生に叩き落とされていたけど。
3人ともう目を合わさないように顔を伏せて寝たフリをする。
「(人を惹くなにかを持ってる奴はいる。ぺいんとが転校してきた時に初めて見たトラゾーの笑った顔は確かに可愛かった。あれを自分にだけ向けて欲しいって不覚にも思ってしまったけど)」
そう思ったが故にいなくなった人たちも現にいる。
それが当たり前で、普通だと思っているオレも大概頭がおかしいんだろうなと始まって数ヶ月、残り少ない学生生活を怯えながら謳歌するしかないのだ。
コメント
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個人的にえろ可愛いツボ笑 最後は、クラスメートとかの視点かな、、 続きが気になるな、、笑