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「あらあ、ごめんなさい、わざとじゃないのよッ」その割には嬉しそうだ。
放心している隆也に向かって、義母がさらに追い打ちをかける。
「TAKAYA先生。うふふっ…先生になら、私をあげてもいいです。資金的にも支援できますよ」
(いやぁ――っ、最悪! 完っっ全にセクハラおばあさんじゃないっ!!)
『私をあげてもいい』なんて年齢を考えない最低な発言に美晴は震えた。
隆也が気の毒でならない。
「ま、松本さん! こんなこと、やめていただけますか! 僕は純粋に松本さんがダンスのレッスンを頑張っていらっしゃるから指導をしようと……そんなつもりはありません!」
隆也の声が震えていた。怒りによるものだろうが、老婆を殴りつけるわけにはいかずに堪えて居のだろう。彼は真面目で優しそうな男性だ。振り払ったり怒鳴りつけたりすることを躊躇っているように見えた。
「そんなつもりってどういうことですかぁ?」
ニタリと不気味に笑って義母が隆也に詰め寄る。問題のある老婆でも、大事な生徒には違いない。無下に扱うことができずに彼は困惑していた。やめてくれと突き飛ばして怪我でもさせたら、こちらが悪者になってしまうことを懸念した。
(このままじゃ、先生がかわいそう)
隆也を助けるため、美晴は近くにあった非常ベルを鳴らした。この様子の動画は後日彼に接触した際、義母を訴える証拠として渡すつもりだ。
今見つかるわけにはいかないので、美晴はその場を退散した。
※
――ということがあったのです。義母もまとめて訴えたいのですが、できますか?
『ダンススクールの講師の男性に接触するのはいいと思います。義母については、今後、彼自身に証拠撮影を依頼しましょう』
美晴は帰って早速復讐アプリに先ほどあったことを相談した。もちろんデータのクラウド保存は抜かりなく行った。これで義母のセクハラいシーンが訴える材料としてひとつ手に入った。
『幹雄さんを糾弾するなら、こずえのことも同時に訴えられますか?』
訴えるというワードで、こずえのことについてアプリにアドバイスを求めた。この復讐アプリ自体はも冷静であり、絶妙なアドバイスをくれる。運営側は人間だとしても、アプリ自体はAIだから冷静なのだろう。人がやると感情が入るため、こうはいかない。
――上原こずえも加害者として訴えることは可能です。慰謝料を請求することもできます。しかし訴訟に至るまでの証拠の蓄積が必要です。今はその時ではありません。証拠が不十分ですから。とりあえず彼女に近づいてみて、なるべく多くの情報を収集してください。
『わかりました。引き続きこずえのことも自分なりに調べてみます』
――証拠なら、新しいメッセージのやり取りを入手しました。美晴さんに送ります。
アプリからこずえと幹雄の最新のやり取りが届いた。こずえが美晴をこきおろす発言をしている様子が幹雄とのやりとりに書かれている。親友だったと思っていた彼女からの攻撃は胸が痛むが、子供を失った悲しみに比べたらかわいいものだと思った。あれ以上の地獄はなにもない。
美晴はメッセージの続きを読んだ。以下のようにクズな内容が書かれている。