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車椅子で入れる美容院の予約が取れたので、薄荷ちゃんに付き添ってもらって駅前に向かった。電動車椅子、道路を行くだけならガタガタしないんだけど、横断歩道の始まりと終わりの凹凸ではやっぱり結構ガタガタするなあ。 美容院に着き、私は薄荷ちゃんに言った。
「待ってる間、買い物でもしてなよ。本屋も近いし、見に行ってていいよ」
「いいんですか? お仕事中なのに」
「いいよ、でも終わったらLINEするから、そしたらすぐ来てね」
「はい!」
で、予約時間。美容師さんに「こちらです」と導かれて、鏡の前に車椅子で行く。
髪を切られつつ、美容師さんに雑談を振られれつつ、私はふと思いついた。
「そうだ、どうでもいいバカバカしいくだらないことで3億円使えって言われたら、どうします?」
鏡に映った若い美容師さんは、目をぱちくりした。
「え、3億あったら自分の美容室開きますね」
「そんな生産的なことはダメなんです。本当に、どうでもよくてバカバカしくてくだらないことです」
「えー……そんなに大金……」
美容師さんは、手を動かしつつ考えるようだった。
「そうですねえ、無駄に高い大きい宝石とか? 無駄に高いブランドのジュエリーとか……あと無駄に高いハイブランドの服とか」
「くだらなくはないですねえ、それだけの価値はあるものでしょ」
「じゃあ、ディズニーランドとかUSJの貸切とか……」
「全然くだらなくないですねえ、純粋に楽しいじゃないですか」
その後もいろいろ話したけど、結局いい案は出なかった。髪型はさっぱりきれいになった。次も同じ人に頼もう。
薄荷ちゃんを呼んで館に帰り、ヤカに美容院でのことを話すと、ヤカは考え込むようだった。
{服や宝石か、確かに高価なものだが}
「そんなにくだらなくないでしょ、きれいだし換金性もあるし」
{しかし、あなたはもっと着飾ってもよいと思う。あなたは着飾ると映えると思う}
「えー、そう?」
そんなこと言われたの初めてで、私は思わず照れ笑いした。ヤカはさらに言った。
{普段のワンピースも似合うが、あなたはもっといろいろな服を着てよいと思う}
「じゃあ、なんかいいの買っちゃおうかな。親の3億は使わないけどね」
その後、スマホで服を調べてみた。興味本位でハイブランドの服の価格を調べてみて、そしたら一着で50万とか100万とかして私は腰を抜かした。無理無理、服一枚にそんなに払えない! いや掛川さんの遺産なら何百枚買っても余裕だけど、気持ち的に払えない!
……いや、高い服じゃなくて、好きな服や似合う服を買えばいいわけで。
私は気を取り直して、前にバイト先の近くにあってかわいい服だなって思ってたブランドを調べた。チチカカやチャイハネ、民族的な意匠の柄や刺繍でちょっと個性的な服が多いブランド。2つのオンラインストアを見比べて、私はいい感じの刺繍が入ったワンピースをいくつか買った。別に外に出るわけじゃないけど、届いたら着て、ヤカに見せて、褒めてもらおう!
コメント
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美容院で「どうでもいいことに3億円使え」って話題、絶妙にバカバカしくて好きです。あれだけ「それくだらなくないです」「それも違います」って会話を重ねて、最後に「やっぱり自分が好きなものを選ぶのが一番」って着地するところ、なんかすごく納得感ありました。ヤカさんに「着飾ると映える」って言われて照れる主人公もいいし、民族柄のワンピースを探してる姿が想像できてほっこりしました。日常の小さな自己肯定感の積み重ね、しっかり描けてますね。