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びゃ
#ホラー系でも、恋愛系でも、いじめ系でも、青春系でも。
はい、こんにちは
今日は告知通り、名前が決まったので、自作小説を投下したいと思います。
アンチ許しません!
では本編へ、
幻想的な世界へ、いってらっしゃいませ
第1話:絶望の果ての招待状
この世界は、不公平な弱肉強食だ
降りしきる雨の中、街頭の大型ビジョンが虚しく光を放っている。画面に映し出されているのは、最近世間を騒がせている「魂喰い(たましいぐい)」という怪物のニュース。そして、それを狩る「喰い狩り」と名乗る英雄たちのインタビューだ。
『……魂喰いに襲われた方々は、本当にお気の毒だと思います。残されたご遺族の深い悲しみを思うと、胸が締め付けられる思いです』
コメンテーターがもっともらしい顔で同情を口にする。だが、その瞳の奥には、自分は安全な場所にいるという傲慢な安堵が見え隠れしていた。
「魂喰い」――。
約一年前、突如としてこの世界に現れた異形の生物。彼らは人間の「魂」を糧とする。襲われた人間は、外傷こそないものの、中身を吸い取られた抜け殻――「廃人」となり、二度と意識を取り戻すことはない。
そんな絶望的な状況の中、救世主として現れたのが「喰い狩り」たちだ。
画面の中では、派手な衣装に身を包んだ「喰い狩り」のリーダーが、得意げに武勇伝を語っていた。
『道端で廃人を見つけてね、近くに異形の生き物がいたから、咄嗟に手に持ってた食べかけのアイスでぶん殴ったんですよ。そしたら、まさかの反撃を食らってしまいましてね、頬を少し掠めた程度だったんだけど、生命の危機を感じまして。異形生物の頭?を鷲掴みにして地面に叩きつけたんです。そしたら、そいつがグチャリと嫌な音を立てて潰れて、手の中に七色の結晶が残った。それが、これ。僕らの力の源さ』
彼は「ソウル・コア」と呼ばれる輝く球体を掲げ、カメラに向かって不敵に笑う。
世間はこの新しいヒーローに熱狂し、一方でネット上では「人守り」と呼ばれる、正体不明の救護者の噂が飛び交っている。
だが、そんな喧騒も、私にとっては別世界の出来事だった。
「……はぁ」
私は、テレビの音を遮るようにため息をついた。
私、崎原百香(さきはらももか)は今、人生のどん底という名の深い泥の中に沈んでいる。
29歳。引きこもり生活5年目。
鏡を見れば、手入れのされていないボサボサの髪と、ストレスでニキビだらけになった肌。部屋は足の踏み場もないほどのゴミ屋敷。
わずかな生活費を出してくれていた母は、一週間前に書き置き一つ残さず消息を絶った。
唯一の支えだった彼氏とは、数日前に些細なことで大喧嘩をしたきり、連絡すら取っていない。
「あはは……。まさに、人生負け組のテンプレじゃん」
自嘲気味に笑ってみるが、虚しさが募るだけだった。
ニュースで流れる「魂喰い」の被害者。それを見て、「こいつらよりはマシだ」と思うことで、かろうじて自分の尊厳を保っている。そんな醜い自分が、何よりも嫌いだった。
家賃の滞納、隣人からの騒音トラブル。管理会社からは今週末に出ていくよう最後通告を突きつけられている。
財布の中身は、小銭が数枚。
「……もう、いいかな」
カビの臭いと埃が充満した部屋の中で、独り言が空虚に響く。
返事なんて、あるはずがない。
私はフラフラとした足取りで、数日ぶりに玄関の扉を開けた。外の空気は冷たく、私の汚れた肌を遠慮なく刺してくる。
行く当てもなく、夜の街を歩き続けた。
意識が朦朧とする中で、ふと気づくと、私は見たこともない漆黒の空間に立っていた。
「ここ……どこ?」
前後左右、上下の感覚さえない。光が一切届かない、完全なる闇。
死後の世界だろうか。あるいは、私が狂ってしまったのか。
とりあえず出口を探そうと、重い足を引きずって歩き出す。
どれほど歩いたか分からない。永遠とも一瞬とも思える時間の後、闇の向こうから、一軒の建物がぼうっと浮かび上がった。
「……洋館?」
それは、古い木造の建物だった。全体的に黒ずんでいるが、窓枠や柱には高貴な紫の装飾が施されている。不気味でありながら、どこか吸い寄せられるような美しさを纏った、異質なレストラン。
コンコン、と扉を叩いてみるが、返事はない。
「もう、どうにでもなれ……」
私は半ば自暴自棄に、重厚な扉を押し開けた。
「――お待ちしておりました、崎原百香様」
扉を開けた瞬間、冷ややかな空気と共に、鈴の鳴るような声が響いた。
そこに立っていたのは、一人の青年だった。
月光を溶かし込んだような白銀の髪に、深いアメジストを思わせる紫の瞳。完璧に手入れされた執事服を纏った彼は、まるでお伽話から抜け出してきたかのような、人離れした美しさを湛えていた。
「え……あ、あの」
状況が飲み込めず、私は固まる。
「さあ、ご案内いたします。席はすでに用意してございますので」
青年は私の困惑を無視するように、優雅な所作でレストランの奥へと歩き出す。
「待ってください! ここはどこなんですか? あなたは誰?」
呼びかける私の問いに、彼は足を止め、ゆっくりと振り返った。口元に、冷たくも艶やかな笑みを浮かべて。
「失礼いたしました。自己紹介が遅れましたね」
彼は胸元に手を当て、完璧な角度で一礼した。
「私、ヴァレンシア・グレイと申します。このレストランの支配人です」
ヴァレンシアと名乗った青年は、その紫の瞳で私を射抜くように見つめた。
「絶望の果てに、ようこそ。あなたの魂、最高に熟成されているようですね」
彼の言葉に、私の背筋に冷たい震えが走った。
(第1話・完)
【第2話の予告】
ヴァレンシアから語られるレストランの正体。そこは、人間ではなく「魂喰い」をもてなす場所だった。提示されたメニューの代償は、百香の「魂」。彼女が選んだ、最期の願いとは――。