いつからだろう私がこの日に少しの涙も流さなくなったのは
生徒のために命をかけて死力を尽くす教師
そんな理想を掲げる教育者は今何人残っているだろう
生徒の問題を注意すれば笑みを浮かべてパワハラと騒ぎ立てられ
生徒の悩みに耳を傾ければ直ちにモラハラと糾弾されるこの時代に
彼らが教師に期待する役割は最早、ただ彼らの自由を邪魔せず卒業の日を迎えさせることだけとなっていた
今年も嫌になる程問題が山積した。だが、私は何もできずにいた。
いや、何もせずに生き抜いた。
教師とは、私とは、一体何者なのだろうか。
背中に強い衝撃。
え、死ぬ?
落ちる瞬間見えたブレザーの袖。
私の、クラスの子
今私、生徒に殺された?
なんで、どうして
嫌だ、怖い、死にたくない!
地面と衝突まで残り10センチ
走馬灯のように流れ込んできた今までの記憶。
嗚呼、本当に死ぬのだ。そう確信した時
目の前に映ったのは教室の中で生徒たちが騒いでいる様子だった。
その中で私は教卓に立っている。
黒板には
『令和5年4月6日 始業式』
と書かれていた。
ガタン、と椅子が倒れた音がした。
音の方向を見れば星崎くんが椅子ごと倒れていた。
周りは楽しそうに笑っている。
私は知っている
1年前の始業式、私は全く同じ光景を見た。
星崎「里奈ちゃん早く始業式始めてよ」
私はどうやら再びこの日に戻ってきたようだ。
だが笑顔を浮かべる31人の生徒たちを見て、私は震えが止まらなかった。
何故なら
この生徒たちは1年後、
私を殺す
31人の容疑者なのだから。
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