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高橋和也(たかはしかずや)が自分達に向かって倒れてくる鉄柱に気付いた時にはもう手遅れだった。このままいけば鉄柱は隣にいる恋人の佐々木彩(ささきあや)の頭を直撃するだろう。何もしなければ自分の身は助かるが、彩は大怪我をするかも知れない。一瞬の判断だったが、和也に迷いは無かった。
次の瞬間、和也は咄嗟に彩の体を庇い、自分は倒れてきた鉄柱の直撃を頭に受ける。
体を自由に動かせる状況であれば、和也は自分も助かる行動をとれたかも知れない。だが、今は花火大会が終わり、出口に向かう人混みで十分に身動きできない状況だった。彩を助けるには自分の身を犠牲にするしかなかったのだ。
何が起きたか分からず驚きと脅えで顔が引きつる彩。
それが和也が見た恋人の最後の表情だった。
――俺にもしもの事があっても、彩は幸せになって欲しい。
和也は薄れゆく意識の中でそう強く願う。その願いは体を離れ、和也の自宅の部屋に向かい飛んでいった。