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そんなある日、マナが家に知り合いを連れて来たいと言ってきた。
「次の日曜日の夜でもいい?」
「俺は別に構わないけど、一体誰を連れてくるんだ?」
そう質問したけど、マナは教えてはくれなかった。
そして約束の日曜日になった。マナは朝早くから出掛ける支度をしていた。オシャレをしているし、妙に浮かれているというか嬉しそうだった。 そんなマナの様子から女友達ではないというのは直ぐにわかった。そもそもマナには女友達はおろか男友達も殆んどいなかった。高校の時から遅刻はするし、授業中に居眠りは日常茶飯事、勉強も学年で最下位、運動もダメ、自分勝手でわがまま。そんな奴と友達になろうという人がいたら余程物好きだろう。みんなマナと同類だと思われたくない。仲間だと思われたくないのだ。だから誰もマナには近付こうともしなかったし、ましてや友達になろうという物好きは誰一人いなかった。唯一友達だったのは、俺とゆずきくらいなものだ。つまり残念ながら俺とゆずきは相当の物好きということになる。ちなみに今現在のマナも、あの頃のマナも大して変わっていないと思う。だから友達と言える友達はいないはずだ。だとすると今日連れてこようとしているのは、一体何者なんだろう? もしかしたら新しく付き合い始めた恋人だろうか?
マナに駅まで車で送ってと頼まれたので8時32分の電車に間に合うように送って行ってあげた。でも複雑な気持ちだった。俺がしていることって、もしかしたらマナを恋人とのデートに送り出してあげてることになる――。そして家に帰ると勉強をしようとしたけど、全くと言っていいほど何も手につかなかった。心を落ち着かせようとリビングでコーヒーを飲みながらTVを観てみたけど、何も変わらなかった。何なんだよ。自分の気持ちがコントロール出来ない――。それからも何も手につかないまま時間は無駄に流れて夕方になってしまった。
《あと30分くらいで家に着くから》
時計の針が18時を回った頃、マナからメールが入ってきた。俺は慌ててコーヒーメーカーで出来たてのコーヒーを作り始めると、マナと客人が来るのを待った。
ピーンポーン――
玄関のチャイムが鳴った。外からはマナと客人の声が聞こえてきた。何だか急に憂鬱になり、玄関に向かう足取りが異常なほど重くなった。
ピンポン、ピンポン、ピンポン――
出迎えるのを渋っていると、玄関のチャイムが何度も何度も鳴らされた。そして仕方なくドアを開けるとマナの隣には男性が立っていた。しかもマナはその男と手を繋いで寄り添っていた。この2人の距離感から付き合っているのは疑いようがなかった。
「圭ちゃん、遅いよ! 早く開けてよね!」
「ワリい」
「初めまして、わたくし荻野と申します」
「初めまして」
爽やかな好青年の男性だった。マナが好きそうなタイプのイケメンだった。
「挨拶はいいから中に入ろうよ!」
「はっ、はい」
「どうぞお上がり下さい」
「はい、それでは失礼させて頂きます」
するとその男性はマナに手を引かれてリビングに連れて行かれた。俺はキッチンで先程淹れたコーヒーをカップに注いで、2人が待つリビングに運んだ。そして俺は2人が並んで座る反対側の席に座った。