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おお、第24話読んだよ!豆隆がホストだったってのは予想通りだけど、自らリタイアしてまで叶えたい夢があるってのが熱いな。三億円より大事なものがあるって姿勢に月呼が共感してるシーン、じーんときた。それと月呼が侑加をかばって「責めたりしない」って言い切ったところ、めちゃくちゃ成長してるなって思ったわ。くるるの応援もいい味出してるし、これからの賞金か侑加かの選択が気になる🔥
#探偵
橘靖竜
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月海(ルア)@新垢
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るしゅ
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午前七時三十八分。ふたりは部屋に戻った。月呼はダイニングルームに向かう前に化粧をし、香水をつける。
「あれ? 昨日と匂いが違う」
侑加がくんくんと月呼の服を嗅ぐ。
「香水も取り上げられちゃって」
運営が香水すら返さないのは、月呼がエジプト好きとさとられないためだろう。香水の容器や匂いだけで神武庫大学の文学部と結びつく人間はまずいないだろうが、用心として。
「そうなんだ。昨日の匂いの方が好きだな」
自分が選んだ匂いを肯定されるとうれしくなる。月呼はエジプトで買った香水だと言いたくなるのをぐっとこらえた。
侑加となんの縛りのない会話ができたらどんなにいいか。限られた中で彼と話そうという考えはがらりと変わって、欲がでてくる。
午前八時。朝食の時間となった。ダイニングルームには十人の参加者が集まる。ひと晩経っても、参加者はひとりも欠けていない。
月呼は侑加以外の参加者の顔をひとりひとり見ながら、他の八人もそれぞれのパートナーとキスしたのか、と思う。月経痛を訴えていた湯江奈の顔色も昨日よりはよさそうである。
朝食のメニューは洋館らしくパンが主食だった。朝というテンションがあがりにくい時間帯もあってか、参加者どうしの会話はない。十人とも黙々と食べる。
「……リタイアしたい」
食事の途中、豆隆が手を挙げて宣言した。聞き捨てならないセリフに、月呼は食事を中断してぱっと顔を上げる。
「ちょっと待ってよ! どういうこと? あなたにリタイアされると、私の賞金は三億円から一千万円になるのよ?」
瑞麻がイスから立ち上がって、反抗した。
「……俺は歌舞伎町のホストだ。源氏名は水王寺涼青(すいおうじりょうせい)。今は店の代表に頼んで二ヶ月ほど休みをもらっているところだが、来月から復帰するつもり」
豆隆は自分の正体を口にする。前言撤回しても、この時点で失格だろう。豆隆はくるるが予想していたとおり、ホストだった。
「ちょっと! 自分のことをしゃべったらだめでしょう! ホストの経験があるなら、なおさら女とキスして寝るくらい容易いでしょう?」
「俺はホストとしてどうしても勝ちたいやつがいるんだ。そいつは俺と同じグループにいながら、ホスト業界で歴代一位の売り上げ記録を持っている。俺がそいつの記録を塗り替えて、ホストの頂点に立ちたい」
売り上げとか記録とか、その業界を知らない月呼としては話についていけない。
「復帰は来月なんだろう? だったら、一週間ここで休んでも同じなんじゃ。しかも、ここにいて、徳宿さんと口裏を合わせておけば三億円をもらえるんだぜ?」
気介がたずねた。月呼もまったくそう思う。自らリタイアして帰らなくても、と。
「俺はホストをしていて年収が億をこえたことが何回かあるから、ある程度金を手にしたことのある人間の気持ちについてなら理解している。人間は三億円を持っているからと言って、その人間に三億円分の幸せがあるとは限らないんだ。だから、年収三億円の人が年収五百万円の人より絶対に幸福というわけでもない。俺はここで三億円を手にしたら、俺自身が目指している理想のホストには一生なれない気がする」
「……」
ホストの豆隆の話は大学生の月呼の胸を打った。確かに、この先店をたたんで莫大な借金が残ったとしても、月呼の両親の幸福度は高そうである。
「フン、結局は女を不幸にする職業のくせに、かっこうつけているんじゃないわよ」
瑞麻は嫌味を言う。
「ホストはかっこうつけるのが仕事なんだ」
豆隆は一本取る。
「ホスト業界の売り上げですって? そんなくだらないプライドのために私を巻き込まないでよ!! バッカみたい!! これだからホストは嫌いなのよ!!」
瑞麻はコケにした。
「……くだらないプライドなんかじゃないですよ」
月呼は瑞麻の言い様にいても立ってもいられず、席を立つ。
「はあ? そりゃ、あなたはパートナーがこのゲームをやめたいと言っていないから、そんな悠長なことが言えるのよ。あなたも私と同じ立場になったら、パートナーにたいして腹を立てるに決まっているわ」
「私は侑加くんが失格となっても、彼を怒ったり責めたりしません。すべてしょうがないものとして受け入れます」
最終的に自分が賞金を選ぶのか侑加を選ぶのかは、月呼の中でまだ定まっていない。ただ、侑加が月呼を選ばなくても、それは自分の魅力が足りなかっただけで、それを悪く言う義理はないと思っている。
「……」
豆隆は黙って月呼を見ていた。
「俺は自分からリタイアしたりしないよ」
侑加が月呼を庇うようにして言った。月呼はその言葉にうれしさを感じながら座り直す。ふたりは少しの間ほほえみ合った。
「後は煙草が吸えないのがきつい」
豆隆は瑞麻になにを言われようとも怒らないでいる。品格を失う行動は取りたくないのだろう。
「巽豆隆さんは自分のことについて話してしまったので、ルール違反により失格となります」
豆隆の自主リタイアのしらせを受けてか、その場に駆けつけたウルという男性局員が宣言した。彼は局長のバールバラの次に立場が偉い人物らしい。
「そんな!! あんまりよ!!」
瑞麻は怒り狂う。
「いいじゃない。たったの二日で一千万円をもらえるんだから。一日に換算すると五百万円よ」
くるるが言った。
「一千万円と三億円じゃ大違いよ!!」
そもそも、ここへ連れてこられなければなにももらえなかったのに、人は欲深くて勝手だ、と月呼は思う。
「こんなことなら、他の参加者がよかった! そもそも、喫煙者なんか参加者にしないでよ!」
瑞麻は自分の席のテーブルクロスを掴んで、思いきり引く。それによってテーブルにのっていた食器は割れ、激しい音が鳴った。瑞麻はドスドスとした足音を立ててその場を去る。第三者の不始末を必要とする瑞麻の行動に、他の参加者の多くが唖然とし、言葉を失う。野利彦は特に絶句していた。一千万円という大金をもらえるのにその態度か、と。
「ふーん。ホストってお金のためならなんでもする生き物だと思っていたけれど、ああいう人もいるのね」
くるるがつぶやく。
月呼は豆隆は誇り高い人間であると感じた。
「あの人、これから一般人にも認知されるくらいに名が売れるかも。そうなると、私たち、未来の有名人と会ったことになるね」
月呼はくるるに言った。「一生会わない人が有名になったところでねえ」と、くるるは冷静に返す。
そこで月呼はくるるに耳打ちをした。
「くるるちゃん、侑加くんはなんで巽さんと違ってホストだと思わなかったの?」
「それって、あなたの彼氏がホストになれるほどかっこいいっていうのろけ?」
くるるはからかう。
「ち、違うよ。私、ホストの世界って全然知らないから、どうして巽さんがホストって直感的に気づいたのかなって。それは実際に当たっていたし」
「そうね。まず、仙敷さんは欲望がうずまく世界には足を踏み入れたことがなさそうって感じた。彼はまだ他人の悪意がどんなものかわかる経験をしたことがなさそう」
「ああ」
月呼はくるるの分析にとても納得した。侑加とひと晩過ごしてみて、彼はたとえるなら人間の感情があまりインプットされていないロボットのようにも感じていたからだ。
「それから、仙敷さんはホストの仕事が向いていなさそう。不特定多数の女性にたいする奉仕の精神がなさそうかな。見た目がいいにこしたことはないんだけれど、顔さえよければ売れる世界じゃないのよ、ホストって。まあ、そんなことを言っているあたしも、ホストクラブで遊んだことはないんだけれどさ」
「そうなんだ。じゃあ、不特定多数じゃなくて、自分が好きになった女性だと、どうだろう?」
月呼はたずねる。それは「自分にたいしてはどうか」という意味だ。
「うーん、きっと尽くしそうね。そうなるように、あんた、がんばんなさいよ!」
くるるは月呼の背中をたたく。
「う、うん……っ!」
くるるには月呼が今いちばん言われたいセリフがわかっていて、それをそのまま言ったようでもあった。これが瑞麻だったら、月呼に向けられた侑加の言動を真っ向から疑っていただろう。「すべて演技だ、彼を選ぶのはやめておけ」と。結果的にそのとおりだったとしても、月呼は息苦しかったに違いない。二日目の今はまだ女として夢を見ていたいのだ。侑加に気をとられてうっとりとなっているのと同時に、月呼の恋を応援するくるるは居心地のよい存在でもあった。
侑加はきょとんとした顔で月呼を見ている。「さっきからふたりでなにを話しているのだろう」というような顔だ。
ただ、月呼の頭には賞金の三億円がずっとこびりついている。くるるの提案する、侑加と期間つきの恋人になるということも検討しておくことにした。