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ゼノの科学王国での試練
玲央が気づいたとき、目の前には鋭い目つきの男が立っていた。
ゼノ「目が覚めたか。」
冷静な声が耳に届く。玲央はぼんやりとした頭を振って、周囲を見渡した。どうやら、どこかの施設の中にいるらしい。
(……無事に生きてるってことは、殺される気はねぇのか。)
腕や足に拘束はないが、状況は明らかに尋問のそれだった。
ゼノ「さて、君はどこの人間だ?」
玲央は目を細めた。ゼノの背後には、銃を構えた男──スタンリーが仁王立ちしている。
(ヤバいとこに来ちまったねぇ。)
玲央は適当に肩をすくめる。
玲央「俺?ただの流れ者さ。気づいたらここにいたんだよねぇ。」
ゼノ「ほう?」
ゼノの目がわずかに細まる。その瞬間、玲央は理解した。この男は嘘を見抜くタイプの人間だ。適当にごまかしても通じない。
(とはいえ、全部話すのもリスクがデカいねぇ。)
玲央は慎重に言葉を選んだ。
玲央「大波に飲み込まれたら、いつの間にかここに流れ着いてた。それだけさ。」
ゼノはしばらく玲央を観察していたが、やがて静かに口を開いた。
ゼノ「なるほど。では、君に試験を受けてもらおう。」
玲央「試験?」
ゼノが指を鳴らすと、スタンリーが銃を構えたまま言う。
スタンリー「逃げたら撃つ。それだけだ。」
玲央は肩をすくめた。
玲央「俺をどうするつもり?」
ゼノ「君が我々にとって有益な存在かどうか、それを確かめる。」
ゼノは玲央に背を向け、施設の奥へと歩き出した。玲央は仕方なく後に続く。
ゼノの科学施設
施設の奥に進むにつれ、玲央は驚きの連続だった。
(……マジかよ、ここ、かなりハイレベルじゃん。)
まるで近代文明がそのまま残っているような光景だった。発電設備、工具、化学実験の器具……石神村とは比べものにならない科学技術がここにはあった。
そんな玲央の様子を、ゼノは横目で観察していた。
ゼノ「どうやら、君は多少の知識はありそうだ。」
玲央「ま、多少ねぇ。」
本当は科学には詳しくないが、場の空気を読むのは得意だ。
ゼノ「では、試してみよう。」
ゼノが机の上にいくつかの道具を並べた。
ゼノ「これらを使って、電気を発生させてみたまえ。」
玲央(……マジかよ。)
困った。科学はさっぱりだ。
だが、ここで「できません」と言えば、おそらく役立たずと判断されてしまう。
玲央(どうする……?)
すると、玲央はふとゼノの顔を見た。ゼノはただ冷静に観察しているだけで、特に急かす様子もない。
(……なるほどねぇ。)
玲央はゆっくりと道具に手を伸ばした。
玲央「やってみるさ。」
玲央は慎重に手を動かしながら、道具を確認する。どうやら、摩擦で静電気を発生させる簡単な実験のようだ。
(なんとなく、こんな感じでいいんじゃねぇの?)
適当に動かしていると──
バチッ!
静電気が発生し、思わず玲央は手を引っ込めた。
玲央「っつ!びっくりしたねぇ。」
ゼノはその様子を見て、わずかに口角を上げた。
ゼノ「興味深い。君は知識はないが、勘はいいようだ。」
玲央「まあ、音楽と戦いのリズムには自信があるんでねぇ。」
ゼノは少し考えるような仕草をした後、静かに言った。
ゼノ「君は歌うのか?」
玲央「ま、そんな感じ。」
ゼノが興味を持ったように玲央を見つめる。
ゼノ「それなら、君にはある役割があるかもしれない。」
玲央「役割?」
ゼノは微かに微笑んだ。
ゼノ「少し、興味が湧いたよ。君にはしばらくここで働いてもらおう。」
こうして、玲央はゼノの科学王国でしばらく過ごすことになったのだった