重たく、湿った空気だった。さきほどまでいた“逆光の痕”とはまるで違う。
蒼く、冷たい霧が辺りを覆い、海の匂いだけが静かに満ちている。
「この道は……六連島の方角だ。」
神子元島が、懐から地図の写しを取り出す。
「名前の光も、この先を指してた。間違いないよ。」
観音埼が勢いよく頷いたが、部埼は静かに目を伏せた。
霧の底から、音がしている。
風ではない。波でもない。
それは……「誰かの足音」だった。
やがて、霧の帳を切り裂くように、ひとつの灯が浮かび上がる。
――六連島灯台。
しかしその姿は、見慣れたものとは違っていた。
鉄のような外殻に包まれ、灯台の“目”は赤く光っている。
灯火の代わりに、黒く燃えさかる炎が天に伸びていた。
「六連島……!」
特牛が叫び、角島が小さく首を横に振った。
「違う。あれは……“囚われた姿”だ。」
「逆光に、呑まれた……」
神子元島の言葉に、誰もが息を呑む。
だが、部埼だけは一歩、前に出た。