⚠︎ 🌉🌸夢/妄想まとめ
ほとんど長男夢です
固定夢主注意
順次更新予定
ノースポール / 凶一郎視点
(この話にはタヒ亡ifが含まれています。)
『わたし冬って嫌いなの』
生前、あいつが口にした言葉だった。
それは唐突で、何がその話に繋がるかすら分からなかった。
ただ口を開いたかと思えば、この言葉があいつの喉を通った。
なぜだがこの言葉が引っかかって、あいつが命を絶った後も脳裏から一時たりとも離れなかった。
季節は情もなく移ろいで行くもので、あいつが俺の前からいなくなった冬から一年が経ち、また冬が訪れる。
今日は一段と冷えていて、外では雪が降っていた。
何を思ったか俺は、家の庭へと足を運んだ。
『凶一郎くん家って、お庭広いから羨ましー』
『お花植えたりするんだ、意外』
『わたしもその花好きなんだよね』
ずっと、頭の中ではあいつの事ばかりだ。
靡く白髪、全てを見透かしたような、全てを悟っているような瞳、それら全てが脳内に染み付いて落とせない汚れのようで。
気づいたら、どこかに行ってしまう。
今思えば割とあいつは自分勝手だったのかもしれない。
俺は何を考えているのだろうか、もうどうにかできるわけでもないのに。
なぜだか頬に涙が伝った。
大切なものは、失ってから気づく。そのことは十分すぎるほどに知っていたはずなのに。
どうして何もできなかったのだろうか。
そんな後悔が胸を締め付ける。
「相変わらずの気分屋だったんだな。お前は。」
視界の端に、あいつが植えていた花がうつる。
冬に咲く花がいいと言っていたあいつが植えた花。
ノースポール。花言葉は「誠実」「清潔」「輪廻転生」「冬の足音」。
知っていたのか知っていなかったのか、今になっては聞けもしないが。
「転生なんてあるならさっさと帰ってこい」
『やーだね、わたしが来世に潔く移るのは、君が生涯終えてからだな』
そんなあいつらしい生意気な返しが聞こえたような気がした。
たまには甘えたかった
(原作にも同じハプニング有)
「はえ?」
帰宅すればそこには…昔見飽きるほど見た凶一郎の幼い頃と同一人物っぽい子供がリビングにいた。
「あ、幸来ちゃんだよね?すんごい美人さんになったね!」
そう言って満面の笑みを浮かべるその子。
「…凶くん……なんだよね?え、記憶なし?」
「凶くんだよ、幸来ちゃん。でも多分大人のおれの記憶はないんだよね」
どうりでこんなピュアな顔してるわけだ…凶一郎には失礼だけど。
懐かしい背丈、今のわたしからしたら小さくて、余裕でタイマンはれそうな見た目。
でも腐っても幼児化しても凶一郎。多分無理がある。
それよりも…ー
「わぁ〜…ちっちゃい…可愛い…、凶くん可愛い…」
わたしはどうしても我慢できずに抱きついた。
ずっと凶一郎には身長では勝てなくて、ずっと見下ろされてばっかで、首が痛かった記憶がある。
でも今日限りは違う。わたしの方が余裕で高い。抱き寄せた凶一郎の体はわたしの腕の中に収まるほど小さかった。
「ゆ…幸来ちゃん!!?」
「…少しだけ、我慢して欲しいな、凶くん。」
この呼び方も久しぶり。凶一郎が元に戻ったら、呼んでみようかな。「凶くん」って。
小さくなった凶一郎からも変わらない匂いがして。
昔に戻ったみたいで、現実味もなくて。
失いたくないものって、やっぱ身近だなぁ…。
なんて当たり前のことを今一度実感したのは秘密。
今はもう少しだけでも、この優越感を味わいたい。
歩幅
「きょーいちろぉ〜、歩くの早い…ちょっと待てやゴラ!」
久しぶりの共同任務で、いつが1番間近だったかすら忘れている。
さっきまで隣にいたと思えば、すぐ離れてく自分の幼馴染みの背中を見るのは、なんだが嫌だった。
「お前が遅いんだろ」
「あー、意地悪言うなし。君の身長が高すぎんのがいけないの!」
「上から眺めるのもいいぞー」
「マウント取んな!」
任務中なのをすっかり忘れていつもの言い合いになりかけた時、不意に遠方から放たれた銃の弾を凶一郎が鋼蜘蛛で斬り捨てる。
「この件はもういいだろう。任務中だ」
「はぁーい」
そう言ってまた歩き出す君の横にはどうしても追いつくことができなくて。
でもどうしても隣に並びたい。先に行ってほしくない。
色々な意味で。
わたしを置いていってしまうんじゃないかって、嫌な考えが浮かぶ。
少し歩みを早めれば、少し距離が縮まって。
それだけでも安心できる。
幼い頃はよく共同で任務に出て、毎回わたしは怖くて凶一郎の手を握ってたっけ。懐かしいな。
あの頃は置いていかれることも無かったのに。
いつの間にか遠くに行って、実力を伸ばしてしまう君が、少し嫌いだった。
わたしは隣にいれないのかもしれないな。なんて不安になるから、後でちょっと悪戯してやろう。
でも、本当に
「歩くの、早くなったよね」
なんて、独り言を呟いても、君の耳には届かないから。
もし、これから先で君の隣にいられるのがわたしじゃなくても。
ずっと、わたしは君を応援するからね。
そんな勝手な誓いを自分で立てて、また足早に君の後を追う。
不眠症
寝れない。眠れない。そんな日々がいくつか続いた。
疲労感、倦怠感はある。もちろん眠気も。
なのに、目を閉じると不安が頭の中を駆け巡る。
眠れないことが、こんなにも辛いとは思いもよらなかった。
わたしは暇を潰そうと部屋から出る。
父と母が他界してからは夜桜家に居座っている。
長く暗い廊下を歩く音が静かな夜に響く。
廊下を何かを求めるわけでもなく歩いていれば、ある一室の前でわたしは歩みを止めた。
凶一郎の部屋だ。
灯は付いていて、寝ているわけでもなさそうだ。
そっとドアをノックしてみると、中から聞き慣れた声が聞こえてくる。
「幸来か、入れ」
許しが出たのでそっとドアノブに手をかけて、ドアを開ける。
「なんだ、こんな時間に」
「寝れなかったから、…よくわかんないけど、来ちゃった。」
わたしがそう呟けば呆れたようにため息をつく君。
彼は自室のベッドに腰掛けて手招きをする。
「寝ろ。」
「…いやだよ。」
こんなやりとりを数回繰り返すと、痺れを切らしたようにわたしを鋼蜘蛛で引き寄せて布団の中に滑り込まされる。
そもそも誰が幼馴染みだとはいえ男の部屋で寝るか。と言ってやりたくもなったが、凶一郎のやけに心配そうな顔を見てやめた。
「…何か寝られないことの理由に心当たりはあるかのか?」
「……一応。あるよ、」
「言ってみろ」
「…目ぇ閉じると、起きたらみんないなくなっちゃうんじゃないかって、思うようになったの。」
そっと思い当たる節を上げていく。
夢ではまた大切な人がいなくなったり、逆にわたし自身がいなくなったり、大切な人を自分で殺めてしまったり。
そんなことが頭の中から消えないのだと述べてみる。
そうすると凶一郎は少し思い詰めた顔をして、わたしの頭をそっと撫で下ろす。
「…なに、急に。」
「いや、なんでもない。」
とりあえず今日はここにいろ。俺もこの部屋から出ないと約束する。
そんな事を言われて、わたしは渋々凶一郎の部屋に留まった。
なんとなく布団に包まってみる。
でもどうしても目を閉じるのが怖い。
わたしも凶一郎みたいに不眠術でも使い始めようか、とさえ思う。
過ぎてく時間が長く感じる。
でもいつもより心が落ち着くことに気づいた頃には、わたしは夢の中だった。
人がいるだけでこんなに安心できるんだと、初めて知った。
それからは眠れなくなると毎回わたしが凶一郎の部屋に押しかけるのはまた別の話。
コメント
5件
えもい、泣ける...