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「はい皆~? もう寝る時間だから部屋に戻ろうねー?」
「「えぇぇー!」」
「まだ出っ歯しかやってないじゃん! 他の人とも対戦してよー!」
「駄目でーす、もう時間でーす」
テンの息子さんの言葉に、皆揃ってブー垂れる子供達だったけども。
確かに、それなりの時間になって来ているので。
本日のガンサバ対戦は、先程の一戦で終わりって事になりそうだ。
という事で、皆揃って「終わった終わった」とばかりに片付けを始めていたんだけど。
「良い試合だった……only one」
「なかなかやるじゃねぇか、death bullet。見直したぜ、ナンバーズキラー」
お二人だけは、満足そうな表情で硬く握手を交わしているのであった。
映画とかで、喧嘩したり戦ってから仲間になるってシチュエーションがあるけど……そういう、アレですかね?
とりあえず仲良くなったらしいお二人は、そのままワイワイと盛り上がり始めるけども。
timelimit:10が怖い顔しながらお孫さんの背後に立った瞬間、二人の時間が止まった様に静かになってしまった。
「皆様、申し訳ありません。少々ウチの孫と話がありますので……昨日の訓練、覚えていますか? アレを始めていただいてもよろしいですか」
「なっ!? 俺だけ説教かよ!?」
「黙りなさい、愚か者。貴様の行動で、どれ程多くの方々にご迷惑を掛けたのか。それを理解するまで正座を崩すな」
我らが師範、怒るとめっちゃ怖いと言う事が判明。
今まで握手していた筈の出っ歯さんまでスッと掌を放し、あっさりと背を向ける程。
「で、出っ歯! 俺等……もう“戦友”、だろ……?」
「すまんな、1番。現状俺はこちらの方に教えを受けている……つまり、師の命令には従う義務があるのだ」
「出っ歯ぁぁぁ!」
「すまぬ! 許せ!」
誰よりも早く逃亡する出っ歯さん。
悲痛な声を上げるonly oneに関しては、お爺様にガシッと頭を掴まれているけど。
でも、うん……賞金首があっさり正体を晒すのは……私も不味いなって思うので。
けどまぁ、高校生だし。
友達とかいっぱい居たら、喋っちゃいそうだなって気持ちは分かるけど。
大事にならない限り、運営側にはバレないかもしれないけど……駄目、だよねぇ。
そういう意味では、私は友達が少ないから助かっていたのかも。
あと自慢気に語れる程強くないし、男性キャラ使ってるって知られるのも恥ずかしいし。
という事で、私達は皆揃ってお庭の方へと足を向けるのであった。
なんか可哀想だけど、こればかりは仕方ないかなって。
規約違反でクビにならない事だけ、お祈りしておきます。
◆
「えっと、皆さん目隠ししましたか? 声を上げるので、私を探してみて下さい……危ないので、ゆっくり……」
ちょっと自信なさそうな声を上げる白川さんの声と同時に、俺達は全員立ちあがった。
さっき彼女がやっていた事を皆に説明した結果、皆揃って“教えて!”となった訳だ。
そしてズルを禁止する為、タオルを巻いて目隠しした状態。
このままで庭を歩くと言うのも……なかなか難しいけど。
「ぁのっ! えっと、こっちですよ~? 出っ歯さん、止まって下さい。そのまま進んだら、お庭の飾り石にぶつかっちゃいます」
「ぬっ!? こ、こっちか? 実際やってみると難しいなコレ!」
「そ、そうです! そのまま~……私も最初は、子供達から声を掛けてもらって出来る様になったので。ちょっとずつ慣れましょー?」
物理的に視界が奪われている以上、視界は真っ暗。
その中で掴めるのは、声と物音だけ。
しかしながら……皆動き回っている影響か、色んな所で音がして分かり辛いな。
出っ歯が変な方向に行ったみたいだけど、俺だって普通にやっちゃいそう。
「お、落ち着いてくださいね~? 分からなくなったら、一回止まって、集中して下さい。師範と違って、私の声なら“誤魔化して”ないので、聞きやすい筈です」
白川さんが、不思議な事を言い始めた。
つまり昨日の佐々木さんは、あえて此方が把握し辛くなるように喋っていた?
いったいどうやって? とは思ってしまうが、このカラクリに彼女はもう気が付いているって事なのだろう。
相も変わらず、白川さんはやっぱり凄い。
どうにかその領域に上る為にも、俺だって頑張らないと……だからこそ、集中しろ。
無駄に動いても、完全に真っ暗じゃ方向感覚が余計に狂うだけだ。
だったらジッとしたまま、耳に集中して――
「ナナさん、ちょっとだけズレてます。グレーさんも、途中まで良かったのに逸れちゃってますよ~……出っ歯さん、どこ行くんですかー?」
聞える、ちゃんと。
その方向を特定して、予想して、頭の中で目に焼き付けた光景と照らし合わせろ。
庭に元々あるものは、絶対に動かない。
動いているのは、俺達だけなんだから。
音を上げているのは人間だけって考えれば、どうにか皆の位置が把握出来る筈だ。
そして、何と言うか。
白川さんが教えてくれているというのなら……一番に、成果を上げたいって思ってしまって。
深く呼吸して、集中して。
また、彼女の声を探そうとした所で。
「…………く、黒沢くーん。こっち、ですよー……?」
皆に声を掛ける時より、明らかに小さな声だったけど。
でも、ちゃんと耳に届いた。
真っすぐ此方を見ながら、俺に声を掛けてくれたんだって、何となく分かった。
だからこそ、そっちに向かって真っすぐ足を進めて行くと。
ポスッと、身体を包み込む様な感触が返って来て。
「ゴ、ゴールです。へへ……黒沢君が、一番に見つけてくれました。やっぱり、凄いです」
すぐ近くから声が聞えて来たので、目隠しを取ってみると。
多分、こっちが見えていないからこその安全確保なんだろうけど。
白川さんが、俺の事を抱きとめているではないか。
「ご、ごめっ! いや、あのっ!」
「だ、大丈夫です! 黒沢君、結構良い勢いで進んで来たので……見えていない相手に対して、急に一か所だけ触れたら危ないかなって思って! 私が勝手にやった事なので! だから、えっと!」
二人揃って、バッと勢い良く離れちゃったけど。
次の瞬間には、横からナナさんがフラフラと近付いて来て。
「見っけ! シロちゃん見つけた!」
「わっ、あわわ……えと、お見事ですナナさん。大正解、です」
続いて白川さんを捉えたのは、彼女だった。
その後目隠しを取ったナナさんから、めっちゃ抱き付かれた上にヨシヨシされているけど。
そんな訳で、周囲に目を向けてみると。
「クロ! クロ貴様! 昨日の技術を使って、どさくさに紛れてシロに卑猥な事をしたな!? 節度を持て馬鹿者!」
「見えてないフリして、エッチな事したのか!? 止めろよお前! 最低だぞ!」
「し、してないよ! 馬鹿言ってないで集中しろ二人共!」
お馬鹿二人は、変な事を言いながら庭をウロウロしていた。
色々言い返したくなったけど、あんまり大きな声を上げるとヒント出しすぎるよな。
ついでに言うと、オイ出っ歯。
何処に行くんだ、勘で突き進み過ぎだよ。
「出っ歯さ~ん? こっちです、一回止まって集中ですよー?」
「ヌンッ! こっちか!」
「い、勢いよく振り返り過ぎて角度がズレてます! もうちょっと、集中して動きを細かく~……」
「お? お? 段々分かって来たかも。こっちだよね? 多分。シロさーん? この辺かー?」
「グレーさんは、もうっちょっとです! 声の聞こえ方からして、距離を掴んで下さい!」
「ん~~~……ここ! 手の届く範囲に居る筈! ハイッ!」
「えと、えいっ!」
こっちに近付いて来たグレーが、ちょっと上に突き出した掌に対して。
白川さんが少しだけ飛び跳ねながらハイタッチ。
そっか、あぁすれば良かったのか。
声がした所まで突き進んじゃったから、そりゃ相手を止める為にガシッってするよね。
「も、もう皆見つけたのか!? シロ、どこだー!?」
「こ、ここでーす!」
「そっちかぁぁ!」
「ちょいちょいちょい出っ歯さん! 動き過ぎだってば! 本当に怪我するって!」
焦り始めた出っ歯に対して、慌ててナナさんが救助に走るが。
ほどなくして、そっちも白川さんを発見。
「コレが自然に出来る様になったら、凄くないですか!? 多分、ガンサバでは凄く役立つと思うんですよ!」
皆が彼女を見つけられた事を、まるで自分の事みたいに喜ぶ白川さんは。
拳を握りながら、そんな事を言い始めた。
「スナイパーのクロさんは特にですけど、他の皆も。ガンサバの対戦フィールドって、色んな所で音がしますけど、基本的にそれはフィールド外から聞えて来るBGMなんです。それ以外は、凄く“静か”なんですよ」
「……え?」
「人の声っぽいザワザワした音とか、電車や車の音、たまに飛行機の音とか工事現場の音とかしますけど。それって定期的に聞えて来る上に、絶対に方向は決まってるんですよ。だからもしも、これらを把握した上で“あって当然なモノ”として意識から除外出来たら」
「……フィールド内でイレギュラーな音を立てるのは、“プレイヤー”だけ」
「その通りです!」
コレだ! とばかりに声を上げる彼女だったが。
他の面々としては、ポカンとしてしまった。
そんな事今まで考えた事が無かったから。
ガンサバの対戦フィールドは、基本的に“騒がしい”と言える程に色んな音が聞こえて来る。
けど確かに白川さんの言う通り“フィールド外”であり、対戦中は踏み込めないエリアからの音。
これ等のノイズは発生地点が変わらず、定期的に聞えて来る?
多分オープンフィールドで戦う場合は別なのだろうが、特定のエリアでの戦闘は全てそうだと言う事であってる?
え、待って。
この大前提に、既に気が付いていたって事なんだよね?
もはやこの時点で凄いというか、ゲームの検証を主とするプレイヤーじゃないと知らない様な項目な気がするんだけど。
でもそれが本当で、実際にそういったノイズを思考から除外出来るのなら。
以前timelimit:10のNPCと戦った時、相手の反応が妙に早かったのも納得出来る。
明らかに視界外に居るというのに、此方のチームの位置を完全に把握したり。
それどころか、俺の位置まで掴んでいる雰囲気があったのだ。
「そっか……もしもフィールドを“静寂”として捉える事が出来るのなら、別の音がする方向に相手は居る。しかも準備段階や警戒しているだけでも、俺等が使ってるのは」
「銃、です。つまり金属。金属音は、静寂の中ではよく響きますから」
とても人間技じゃない気がするけど、もし本当にコレを技術として習得した場合。
それはガンサバにおいて、非常に強い武器に代わる事は間違いない。
俺なんか狙撃手だから、周囲は皆に比べて静かなのだ。
もしも回り込まれても、音だけでそれに気が付ける状態になったら。
「冗談抜きで……最強じゃない? それ」
「です! 特に黒沢君は覚えた方が良いと思います! なんて、私が偉そうに言ってもアレですけど――」
「俺はやるぞ! スプリンターだからこそ、なかなか厳しい条件だが……足を止めれば、相手の位置が把握出来るって事だな!? やる! もう一回だ、シロ!」
「そうなって来ると、デカい銃にも消音装備が欲しくなるな。今度クラフトで無理矢理試してみるか……?」
「シロちゃん! 私ももう一回! それめっちゃ欲しい技術! もっかい練習させて!」
という事で皆最初の場所へ戻り、再び目隠しをし始めるのであった。
「黒沢君は……えっと……どう、します?」
「やるよ、絶対やる。それに……白川さんの声なら、一番に見つけたい」
結構恥ずかしい台詞な気がするけど、こればかりは本気。
さっきの出っ歯の様子を見ていると、彼女のハグがアイツに渡ってしまいそうなので。
白川さんの事だ、さっきみたいな勢いで近づかれたら“安全の為にも”って事で、避けずに抱き止めに掛かるよね。
それだけは、絶対阻止する。
などと、やる気を漲らせていると。
「じ、実は私も……黒沢君を見つける時、ズルしました」
「え?」
目隠しを準備しながらも、不思議な事を言いだした彼女へと振り返ると。
ちょっとだけ恥ずかしそうにポリポリと頬を掻きつつ、視線を逸らした白川さんが。
「黒沢君の声は、凄く“聞きやすい”というか。普段から、あぁここに居るのかって……落ち着くので。見つけ、やすかったです。なので、ズルかなって」
「…………絶対最初に見つけるから」
という事で、ダッシュで皆の隣に戻ってから目隠しをした。
気合を入れろ……最短で彼女の元まで向かうんだ。
集中、集中しろ。
あんな事を言ってくれたんだ、俺だってそうだと行動で返したくなるじゃないか。
だったら、やれ。
マジでやれ。
深く息を吸い込んでから心を落ち着けて、彼女の「開始」の声を待つのであった。
柘榴とAI

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柘榴とAI

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コメント
1件
ああ、もう、この回すごく良かったです……! 白川さんの「黒沢くんの声は聞きやすい」って告白、めちゃくちゃキュンとしました。普段から相手を無意識に探してるからこその言葉ですよね。しかもお互いに「一番に見つけたい」「見つけやすかった」って両想い感がたまらない。そしてガンサバの音の仕組み解説も、なるほどなあと納得。こんな風に世界が広がっていくのが楽しいです。みんなで練習する様子も賑やかでほっこりしました。くろぬかさん、今回も素敵なエピソードをありがとうございます!