戦後数十年。再婚し一人の娘が生まれた。
名前は「ミラ」まだ幼いミラは笑うとエスターに似ている気がする。
ある日書斎の机に向かっていた、振り向くとミラが頭に何かをつけてニコニコと笑っていた
「パパどう?似合う?」
息を呑んだ、ミラの髪には、あの赤いリボン。エスターの赤いリボンを着いていた
箱の奥に仕舞われたはずの、色あせたリボンだった
「どこれでそれを…?」
「お家の古い箱にあったよ!エスターって名前書いてた!」
その前に彼女は無邪気に笑っわた
しばらく何も言えなかった。
そしてようやく微笑んで言った。
「…すごい似合ってるよ、まるであの子、エスターがもう一度戻ってきたみたいに。」
ミラはクッキーを食べながら笑った。
あの記憶が蘇る。
母が淹れた紅茶。
あのリボンの赤い色。
そしてミラの声が優しく響いた
「ねぇパパ、ずっとパパの子供でいられる?」
その言葉に、涙を流しなら言った。
「もちろんさ。例え何度生まれ変わっても、な。」
ミラの秘密。
夜。
部屋の明かりを落としてミラはベットの中にいた。
ふかふかな枕に顔を埋め、そっと笑った。
昔かパパ何も変わらない。
困ったように頭をかきながら笑うくせも、
ケーキを食べる時密かに一番大きく切る所も、
そして泣くとブサイクになるとこも。
「ホントなんも変わらないんだから…」
ぽつりとつぶやき、布団を抱きしめる。
心の中にもうひとつの名前がある。
誰にも教えない。
教えるつもりは無い。
エスターという名前。
再会できたことが嬉しい。
ずっと会いたいかったし甘えたかった。
何度も夢を見た。
パパに「また会えたね」って、ちゃんと伝えたかった。
でも、まだ言わないの、
今は「ミラ」として生きる。
「おかえり、エスター」そう言われることを夢に見て、ふっと笑う