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せっかく素敵な街ができたのに、もったいない話だ。
むかし、この土地は長いあいだ混乱していた。
けれど、人々はあきらめずに力を合わせ、暮らしを立て直していった。時間はかかったが、街はすっかりきれいになった。
広い道、にぎわう市場、気の合う仲間たちで運営する議会。年配にも若い人にも優しく、働く場所も住む場所もすぐ見つかる。「こうだったらいいのに」がすぐ形になる、便利で親切な街だった。
街は人々の声をよく聞いた。
あまりに聞きすぎるほどに。
便利さを求めれば求めるほど、街は考えた。
——必要なものは、街の外に置いておけばいいのでは?
加工も製造も管理も、ひとつずつ外へ出していく。中には、効率よく動く物流ラインと受け取り口だけが残った。
そうして街はすっかり整いきって、まるで磨かれた果実のようになった。
けれど果実は成熟すると、そのうち甘さと共に地に還ろうとする。
気づいたときには、中身がどこかへ消えていた。
「街の外に預けたものが、どんな手で作られているのか——誰も確かめなくなったんだね」
今日も街の人が口にするものは、知らない場所で、知らない誰かが淡々と作っている。
便利さの裏側は、すっかり街の視界から抜け落ちてしまった。