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6 ◇破廉恥なことをできる人間はいる
「疲れていて、夢でも見たんじゃないのか。私たちがいる同じ屋根の下で
いくらなんでもそんな破廉恥なことできまい」
「夢なんかじゃないわ。それに、破廉恥なことをできる人間はいるって
ことです」
「凛子、温子の話してることはホントなのか?」
「淋しくしているお義兄さんをちょっと慰めてあげてただけよ。
お姉ちゃんったらオオバ―なんだから。だけど、ちょうどいいや。
この際だから、みんなの前で宣言しとく。
私がお義兄さんもらうことにしたから」
「何言ってるんだ。そんな馬鹿なことできるものか」
「お父さん、私お義兄さんのこと本気なの。本気で好きなのよ。
それにお義兄さんだって姉さんより私のほうが好きだって言って
くれたのよ」
「な……に」
私は凛子の言葉に夫の顔を見た。
夫は俯いたまま、何も言わない。
『そういうことか……そういうことになってたんだ』
私は胸の内で酷く落胆した。
そんな中、部屋の外で話を私たちの話を聞いていたのか
娘の鳩子が部屋に踊り出し口を挟んできた。
「出て行くなら……出て行くのはお母さんのほうじゃない。
叔母さんのほうが若くて綺麗なんだからお父さんがお母さんより
叔母さんを好きになっても不思議じゃないじゃない」
私は娘の言葉に驚きを禁じ得なかった。