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「日本でも馴染みのあるホテルだから、安心だろ?」
「……いや、聞き馴染みはありますけど、こんな高級ホテル泊まったことありませんって」
恵は顔の前でパタパタと手を振る。
「我々庶民を、尊さん基準で考えないでもらいましょうか」
私がドヤ顔で言うと、彼は「なんで威張るんだよ……」と突っ込んでいた。
「そういえば、尊さんが涼さんと世界各地を放浪していた時、毎回いいホテルに泊まっていたんですか?」
今思った事を尋ねると、彼は「うーん……」と少し考えてから答える。
「セキュリティはしっかりしていたほうがいいから、ある程度ランクの高いホテルにはする。でも毎回スイートには泊まらねぇな。涼と二人でツインに泊まって、食事は街中のバルとかで現地の人と話しつつ、色々話を聞く。大体外にいるから、寝る所さえあればいいんだ」
「……ほう。なら今回は?」
恵が聞くと、尊さんは「みなまで言わすなよ」と笑う。
「女子が一緒だと、野郎二人以上にセキュリティに気をつけないとならないし、……あとは見栄だな」
「見栄。正直でよろしい」
うむ、と頷くと、尊さんに「何様だよ」と笑われる。
その時、涼さんが「お待たせ」とスタッフさんと一緒に戻ってきた。
「涼さん、英語でチェックインできるんですね。凄い」
私がパチパチと拍手すると、彼は舞台役者みたいなお辞儀をしてから、ウインクして言った。
「英語もできるけど、ここは日本人スタッフもいるよ」
「あはは! それなら私も安心です」
エレベーターに乗って、廊下で涼さんと恵と別れる。
「わぁ……! 凄い!」
部屋のドアを開けると、ウォーターフロントビューのプレミアスイートが目に飛び込んだ。
広い空間には、窓の外の川を見るようにソファが配され、ガラスのテーブルも置かれてある。
ソファは茶色の革張りで、クッションはオレンジと水色だ。
窓際にある一人掛けのソファ二脚の間には、南国の花が美しく活けられている。
奥には大きな正方形の黒いダイニングテーブルがあり、一辺につき二脚のブルーの椅子が置かれ、合計八人座れる
その上には天使の輪みたいな円形のライトが下がっていた。
壁際には額に入った鏡と、その手前にはチェストがあり、上には花瓶がある。
バルコニーに出ると、海みたいに広い川と、空が独り占めできる。
勿論、バルコニーにもソファやテーブルなどがある。
テレビはダイニング側の壁にもあるし、リビング側の壁にもある。
ベッドルームはリビングダイニングとは別の空間にあり、キングサイズのベッドはやはり窓側を向いて置かれてあった。
とても広い部屋なので、壁際にはソファもあるし、勿論テレビもついている。
洗面所とお風呂は、シックなグレーの大理石で統一されていて、余裕で二人で入れる大きなバスタブに、二つの洗面台と大きな鏡がある。
その奥にはシャワーボックスと、スライドドアを閉めて独立するお手洗い空間があった。
これにはちょっと安心したりもする。
海外ドラマや映画などを見ていると、お風呂や洗面所とおトイレが同じ空間にあるのが普通らしいので……。
どうやらこのプレミアスイートは建物のコーナーを使っているらしく、涼さんと恵はもう一つのコーナーを使った部屋なんだろう。
「こんな凄い部屋、ありがとうございます!」
「どういたしまして。喜んでくれて何よりだよ」
あとから尊さんに〝種明かし〟され、ホテルの会員になっているから、多少割引されていると知った。
それでも、一番いい部屋だったら絶対お高いので、割引されても物凄い金額なんだろう。
付き合いたての頃だったら、スイートルームを前にしておっかなびっくり……になっていたと思うけれど、最近はあちこち探検するのが楽しみになっている。
「こんなにお金を使わせて申し訳ないな」という想いはいまだあるけれど、尊さんが私を相手に手抜きをするはずはないと分かってきた。
なら、与えてくれるものを全力で喜ぶほうが、彼のためになると割り切った。
スタッフさんが説明をして出て行ったあと、私はタタタタ……と助走をつけて、尊さんにジャンプして飛びついた。
「おっと!」
彼はしっかり受け止めてくれ、抱っこする。
「んー」
私は尊さんの頬にチュッチュとキスをし、ストンと降りる。
「お礼です」
ドヤ顔で言ってサムズアップすると、彼は「ぶふっ」と噴き出した。