ある日突然、味がしなくなった。
ハンバーグ、トマト、焼肉、プリン、寿司、ポテチ、からあげ、チョコ、キムチ、オムライス、ココア、アイス、林檎、鮭、ジュース。何を口に入れても味がしない。味覚障害を疑い病院に行ったら「フォーク」という診断結果が出た。
フォークに対する認識は、ニュースで見たことがある程度だった。ケーキを殺して食べる。そんな認識。
そんなのに俺がなってしまった。絶望と罪悪感に蝕まれる。いつかは俺も人を殺してしまうのだろうか。ケーキを、人を食べてしまうのだろうか。どこからともなく押し寄せる空腹と気持ち悪さから逃げようと、布団に潜る。これが夢であることを願い、現実に戻ろうと眠りについた。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
そんなことがあってから半年。未だに味の感じない舌に苛立ちを覚えながら、今日も栄養食を食べる。今までも対して好きではなかった食事が、今では大嫌いになった。あれもこれも美味しくない。メンバーとよく行く居酒屋も、酔うためだけに酒を飲んで気を紛らわした。
『ぁぁ…づがれ゛だぁぁ』
ut「おー、珍しくショッピが酔うとるな」
その日は浴びるほど酒を飲んだ。味覚がないため、ただの水と何ら変わらない酒を。悩みを忘れるために飲んだ。
「俺ちょっとちょっとタバコ、ショッピもいく?」
ゾムさんに捕まっている大先生を横目に、俺を誘うちーの。うん、と頷きちーのに近づくと、何処からかいい匂いがした。味覚がなくなって以降、感じにくくなっていた嗅覚が、唐突に働いた。薄らと甘い、ドーナツのような、バニラのような、チョコのような、ケーキのような匂い。
匂いの先にいるのはちーの。これってもしかして…
「ショッピ?大丈夫?」
ぼーっとしている俺を心配してか、ちーのが覗き込んでくる。その途端より強くなった甘い香りに確信を持ちながらタバコを吸いに行った。
「最近のショッピってなんか変よなぁ」
『変ってどこがやwいつもと変わらんやろ』
心臓の動きが早まったのは気づかれていないだろうか。
「いやさ?なんていうか…辛そう?っていうか、悩みでもあるんかなーって」
正直悩みまくっている。三大欲求の一つが満足に満たされない、って言うのは結構心に来ている。食べることが義務になっていて、全く楽しくない。味がしない煙草にももううんざりだ。でも煙草は脳が喜ぶから辞められない。
「なんかあったら俺に言えよ〜?」
出来ることならなんでもするから、なんて素敵な言葉を言ってくれるちーの。ちーのなら受け入れてくれるだろうか。俺の味覚を生き返らせてくれるだろうか。
『味覚がなくなった』
藁にもすがる思いで、ちーのに言ってみる。こてん、と口を開けるちーの。それでも、その瞳から軽蔑の気持ちは感じられなかった。
『半年くらい前、病院に行ったらフォークやったんよ。薬とかもないらしくて、何にも美味しくない。この煙草もなんも味がせんくて、酒も、さっき食べたご飯も、全部全部。』
酔っているせいか、はたまた相手がちーのだからか。1度口から出た感情は止まらない。
『ずっと、味のしないご飯食べて。美味しいって嘘ついたり、メンバーの感想から味想像したりして。なぁちーの、ちーのってケーキやろ?お願い、何でもいい、涙でも髪の毛でも唾液でも。何でもいいから食べさせてや』
罪悪感、絶望、悲しみ、恐怖、苦しみ、孤独、不安。負の感情が心を食っていく。味はしないのに、この状況が不味いということは分かる。
情けなさからか、涙が出てくる。
「ショッピ、ごめんな。今までなんも気づかんかった。もっとはよ言ってくれたら、何でもあげたのに」
眉を下げ、にっこりと微笑みかけてくれるちーの。やっぱりお前は優しいな。今すぐ殺されて、食われるかもしれないのに。俺はケーキにとって、危険なフォークなのに。
「一旦帰ろっか、俺の家でいいよな?」
ここから近いちーのの家に、二人で向かう事にした。俺が酔ったということで、飲み会から抜け出し、ちーのの家に向かう。何を話したらいいのか分からない俺とは対称に、何事も無かったかのように話してくれるちーの。昨日の動画が、最近流行ってる漫画が、次の飲み会は。
まだ俺たちは親友としてやっていけるだろうか。
「何がいい?」
ソファに座り、急にそんなことを言われた。
正直こんなことは初めてで、なんて言えばいいか分からない。そんな俺を見て、ちーのは呆れたような顔をする。
「あーんして」
言われた通りに、口を開ける。
ちーのの顔が近づいてくる。少し気まづくなり、目を閉じてしまう。
『ぁ、!?』
キスをされた。舌が入ってくる感覚がする。堕ちる音がした気がした。
もう戻れない。元の関係には戻れない感覚がする。気持ちのいい感覚。
美味しい。甘くて甘くて甘くて甘くて。有り得ないくらい美味しい。脳が熔けてしまったかのような、激痛すら感じる美味しさ。病気になってしまうのではないかと思うほどの甘さ。
『んッ♡』
長い長いキスが終わった。
「どうやった?味した?」
心配そうにこっちを見てくるちーの。今までなら優しいな、なんて思っていたその顔も、今ではとてつもなく愛おしく見える。これは恋なのか、それとも今後もちーのを味わいたいがためになった、洗脳なのか。
『ぁ、ぉお、おいしぃ♡』
脳は溶けてしまって使い物にはならない。呂律も上手く回らない。舌に残った刺激を味わいながら、幸せを噛み締める。
「んふ、良かった。…俺もショッピの事食べたくなっちゃったな」
美味しそうなご馳走を目の前に、俺の理性は働くのを辞めた。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
『あ゛、やッッ♡…あ゛っ♡』
あっという間に組み敷かれ、気づけば男としての尊厳を失ってしまった。
目の前にいるちーのの首筋を舐めると、とても甘い。甘くて美味しくて気持ちよくて受け入れてくれたことが嬉しくて。正の感情で心がお腹いっぱいになる。
「ぁっ、ショッピ気持ちぃ?」
上から落ちてきた汗を舐める。気持ちいいと答えると嬉しそうなちーの。
まさかお尻がこんなに気持ちいいなんて知らなかった。
前立腺を押しつぶされ、結腸を抜かれる。グポグポ、なんて人体から鳴ってはいけない音が聞こえてくるが、気持ちよくてそんなこと考えられない。
『あ゛、ぅぁ!…♡むり゛ぃ♡っやだッッ、きゅ、きゅ゛けぇ…♡』
「休憩?俺まだイってないけど」
鬼畜絶倫野郎が。
イきすぎて、薄くなった俺の精液が俺とちーのの腹にかかっている。なんだか急に恥ずかしくなり、腕で顔を隠そうとすると、馬鹿力で腕をのけられた。
「栄養食ばっかやで、元々細かったのにこんな非力になってもうて」
簡単に押さえつけられ、自分の体なはずなのに、自分じゃない誰かによって動かされて、男なのにこんな事になって。かなり惨めだ。それでも不愉快な気持ちは無かった。ただただ気持ちがよすぎて、死んでしまいそう。
『あぇ゛、♡♡ぁあッ…♡も、むり゛だ…からッ!♡…はよ゛イッてぇ♡』
「ん〜もうちょっと♡」
余裕そうなちーのとは正反対に、精液を出しっぱなしな俺。
亀頭が結腸で引っかかって、出し入れされる。AVでしか見たことの無いような腰の振り方をされる。
「ショッピのおちんぽ、壊れちゃったなぁ。もう女の子抱けないね♡」
可哀想、なんて言いながら笑っているちーの。
なんだか悔しくてキュ、と少しナカを締めてみると、ちーのの形をより感じて、気持ちよくなってしまった。
「自分でやって自分で気持ちよくなってんの?可愛い♡」
『あ゛ぁ!?♡…ご、ごめん゛なさッッ♡♡』
種付けプレスと呼ばれる体位で、ゴリゴリと前立腺を虐められる。孕まされる、なんて脳が本気で勘違いしてしまいそうだ。
「あーイきそ」
いきなりそう言ったかと思えば、ナカに熱いものが出された感覚がした。ヌポッ、なんて音が聞こえて下を見てみれば、白濁液が俺のナカから垂れているのが見える。
美味しそう。そう思ってしまう俺は、異常者以外の何者でもない。
「ショッピ、」
俺のナカに指を入れ、精液を掻き出しているちーの。気持ちよさと同時に、期待している自分もいる。
はい、なんて差し出された手には、先ほどちーのが出した精液が沢山のっている。
一度俺のナカに入っていたものだとわかっていても、美味しそうに見えて仕方がない。耐えきれずに、ちーのの指についた精液を舐める。
『…おいしぃ♡♡』
満足そうに笑顔なちーの。
甘くて美味しくて脳にガツンと刺激が来る。ずっと舐めていたいなんて思いながら、手のひらに乗っている液体をすべて舐め取る。
「ショッピ?掃除してや」
ちーののちんこを差し出される。普段なら不快感を示すはずのそれを見て、涎が垂れてくる。
耐えきれずにそれを咥え、全部舐め取ろうと必死に口を動かした。
「ぁ♡可愛ええなぁ」
我慢汁が溢れてきて、1度舌で味わってから余すことなく全部飲みほす。苦いはずの我慢汁でも、甘く、極上に感じる。
裏筋や亀頭を舌で刺激すると、沢山液体が溢れてきて美味しい。
「ちゃんと全部飲めよ?」
ちーのの問に頷くと、俺が待ちわびていた液体が吐き出される。
『んッ…♡』
精液を口に含み、少しづつ飲んでみたり、噛んでみたり。色んな方法で味わってみる。どの方法でも美味しくて、ずっと口に閉まっておきたいくらいだ。
「ありがとうな、ショッピ」
お礼を言いたいのはこっちの方だ。それでも今は恥ずかしくて、顔もまともに見れやしない。
「……なぁ、もし良かったらなんやけど、これからもこうやって…やってかん?ほら、俺らの関係ってウィンウィンって言うか…」
気まずそうにしつつも、とっても魅力的な提案をしてくれるちーの。
「…勿論ええで」
やったぁ、なんて小さくガッツポーズしているちーのが可愛くて、先程までのキャップにときめいてしまう。
一緒に住みたいだとか、予定を交換し合いたいだとか。なんならちーのの体液や髪の毛を、非常時用に持ち歩きたいなんて、流石に引かれるかと思い、口に閉まっておく。
たった一日でちーのの虜にされてしまった。もしかしたら、元々ちーのに恋愛感情があったのかもしれないが、今となっては分からない。
『これからは毎日一緒にご飯食べよーな♡』
今までの日々とは裏腹に、楽しそうな生活に少し胸が踊った。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
あとがき
ちーの:元々ショッピのことが好きで、どうやって両思いになろうか考えていた。
ショッピ:哀れで可哀想で可愛いフォーク。
後日
一緒に住んでご飯は全部口移しで食べさせてて欲しい。飲み物も全部ちーのが一回口に入れてからショッピに口移しで飲ませるって形で味わわせるのだよ…仕事行く時はお弁当で食ザーでも…(流石にキモイか?許せ)誰か書いてくれてもええんやで♡
4579文字…ちょい少なめか
まぁ🔞シーン苦手な私にしては頑張ったですますよ。
またね
コメント
6件
まじで赤の他人が首突っ込んですみません!!🙇♂️🙇♂️ たまたまおすすめで見かけてまして、興味本位で覗いてみたら素晴らしすぎる作品でした……😭😭2人の関係性の表現や語り部が美しすぎてすごく参考にしたい所存です…✎切実に伸びて欲しい作品を見つけてしまった、素晴らしいノベルをありがとうございます……🍵
もっと伸びて欲しい(切実)
_:(´ཀ`」 ∠):、神作品すぎました