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「食べないのか?毒は入ってないぞ」
駄目だ。このドールの心情が一切理解できん。
「私は、ドールという名前では有りません。西華です」
頬を膨らませてまるで子供が拗ねた時のようにそう言う西華は可愛らしかった。
「そうか、じゃあ、西華。これを食え。お前とて仮死状態になるのは嫌だろう」
「ほら、見ての通り毒は無い」
「分かりました」
名前を読んで目の前で毒味をするとやっと食べる気になったらしい。少し面倒臭いが、それを打ち負かす程、彼女の仕草は美しく、洗礼されたものだった。
西華が食べ終わったのを確認して食器を手に部屋を出る。食器洗い等はメイド達にやらせれば良い。
流石に風呂に入らないのはあれだからな。だが、相手は女だ。見張りは、メイドに任せるとするか。
さて、そろそろ仕事をするか。そう思い俺の書斎の机に置いてある紙束を見る。
「嫌気が差すほどの量だな」
苦笑いを浮かべ、早々に仕事に取り掛かる。事務作業も慣れると早くなるもので、普通の人間がやれば九時間かかるものを俺は四時間前後で終わらせられる。慣れというものは凄いのだなと、この時実感した。
仕事が終わり、西華とフランス王国の風呂の見張りを決めるべくしてメイド達を普段はパーティールームにしている広い部屋に招集した。
兵隊の如く、美しいまでに整列したメイドを見渡す。
「!」
一人のメイドの元へ革靴をトントンと鳴らして近づいて行く。
メイドの目の前まで来た時、そのメイドの首元にナイフを突きつけた。