TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

シェアするシェアする
報告する

無言の蓮さんに手をひかれ、部屋の中に入る。


「お邪魔します」


私があんな態度をとってしまったから、怒ってるよね……。

蓮さんはタクシーの中でも何も話してはくれなかった。


「ソファに座ってください」


彼の言うまま、ソファに座る。

彼は上着を脱ぎ、違う部屋から救急箱を持ってきて、この間と同じようにテキパキと私の膝の処置をしてくれる。


「沁みますが、我慢してくださいね」


「……!」


案の定、両膝の出血している部分は沁みた。


「良かった。この間よりは酷くなかった。他に痛いところはありますか?」

私は、首を横に振った。


しかし彼は

「手のひらとか、肘見せてください」

見ると、少し血が滲んでいた。


「ここも消毒しますよ?」

慣れた手つきで、処置を進める。


「終わりました」

彼は使った綿や救急箱を片付け、部屋を出て行った。


いつもの彼ではない、怒っている理由が浮かびすぎてどこをどう謝っていいのか考える。


彼がリビングに戻ってきて、私の隣に座った。

沈黙が続く。


謝らないと、そう思い口を開こうとした時

「すみません」

蓮さんが一言、呟いた。


「もう愛を傷つけないと決めたのに、またこんなに痛い思いをさせて。自分が嫌になります。もちろん、真帆《あの子》とは何もありません」


なぜ彼が謝るのだろう。


「私の方こそごめんなさい!お店が終わって蓮さんが見えたと思ったら、あの子がいて。なんでいるのかよくわからなくて。そしたら蓮さんが抱きつかれて。蓮さんのこと信じなきゃいけないのに……。動揺して……。他の女の子に抱きつかれているのを見たくなくて、その場から逃げてしまって……」


「蓮さんのこと信じているなら、ちゃんとあの場にいなきゃいけなかったのに。私が弱いから……。ごめんなさい」


私の言葉を聞いて

「最初から説明します」

そう言って、アルバイトが終わる私を待っていたら、急に真帆ちゃんが現れたこと、写真を見せられたこと、告白をされたこと、蓮さんは全て話をしてくれた。


私が想像をしていた以上の彼女の行動にゾッとした。


「急にあんなところを見せられたら動揺だってします。俺が気をつけるべきだった。すみません」


彼は、俯いていた。


どうして自分を責めるの?

なぜ、私を責めないの?


「どうして、私を責めないんですか?怒らないんですか?冷静に判断できなくて、勝手に走って転んで。また蓮さんに迷惑をかけちゃったのは私です」


彼は悲しそうにふっと笑い

「愛は何も悪くないですよ」

そう言った。


「俺の話、全部信じてくれるんですよね?」


「当たり前じゃないですか!」


「不謹慎かもしれないですが、愛が妬いてくれたのは……。嬉しいです」


彼女が、蓮さんに一方的だが抱きついているのを見たくなかった。蓮さんに触れているのを見たくなかった。


これはすごく焼きもちかもしれない。

「はい。蓮さんが他の女の子に触れられているだけで、すごく嫌だって思ってしまいました」

こんなことを本人に伝えてもいいのだろうか。

重い女とか思われてしまう?


「俺は、あなたにしか興味がありません。なので信じてください」

私を見る、まっすぐな瞳。


「はい」


「せっかく治ったのに、痛かったですよね?本当に他に痛いところありませんか?」

彼が私の近くに寄って、再度ケガをしていないか確かめてくれた。


なぜだろう、すごく愛おしく感じた。

私は蓮さんに抱きついてしまった。


「愛……?」


「好きです。蓮さん」


「俺も好きですよ」


彼に抱きしめられ、頭を撫でられる。ずっとずっとこの空間が私の場所であってほしい。


「蓮さんにずっと好きでいてもらえるように頑張ります」


私の言葉に少し笑って

「そんなに可愛いこと言わないで下さい。これでも、自重しているんですよ?あなたにケガをさせてしまったから……」


この作品はいかがでしたか?

25

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚