テラーノベル
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私は、彼の腕の中から一旦離れる。
彼の肩に両手を置かせてもらい、少し背伸びをした。
「愛?」
自分から蓮さんの唇に軽くキスをした。
「蓮さんは、私の……だから……」
こんなセリフ、一生言うことなどないと思っていた。
「そんな可愛いこと言われてしまうと、我慢できません」
隣に座っていた私を彼は軽く持ち上げ、自分の膝の上に対面で座らせる。
「連さん……。私、重いです」
彼の膝の上にいるため、私は今彼より目線は高い。
「愛、キスして?」
「へっ?」
顔が真っ赤になる。
「もう一度、お願いします」
彼に見つめられる。
私は勢いに任せ、もう一度彼にキスをした。
「もっと……」
一度唇は離れたはずなのに、彼に頭を支えられもう一度キスをする。
「んん……」
彼の膝の上にいる私の方が態勢は上なのに、口の中では圧倒的に彼にリードされていた。
「はぁ!……んんっ!」
「強引すぎますか?」
彼が私に問いかける。首を横にふる。
すると再び、唇と唇が合わさる。
彼の舌が気持ち良くて、彼の肩に掴まっている私の手にも力が入ってしまう。
「は……。ん……ん!」
「もうダメ……」
これ以上続けていると、頭が真っ白になりそうだ。
名残惜しそうに
「わかりました」
彼はキスをするのを止めた。
「はぁ……」
まだ吐息が漏れてしまう。
「まだ続きをしていいですか?」
「ダメです!」
残念です、そう言いながら彼はしばらく私を離してはくれなかった。
その後、夕食を一緒に食べ、彼に車で自宅まで送ってもらった。
「ゆっくり休んでください。何かあったらすぐ連絡してくださいね」
私は一人アパートに戻り、ベッドへと倒れ込む。
明日、もし学校であの子と会ったらどうすればいいの。
そんなことを考えていた。
一方、彼は自宅のマンションに帰り、さっきまで愛《彼女》と座っていたソファーに一人座り込む。
本当は、彼女を帰したくはなかった。
こんなに一緒にいたいと思える人なんて今までいなかった。自分の感情に戸惑う。
さて、どうしたものか。
彼は携帯をポケットから取り出す。
〈プルルルル……プルルルル〉
何回かコールを鳴らした後、相手から反応があった。
<はい?もしもし?どうしたんですか?>
「夜遅くにすみません。相談したいことがあるんですが……」
<黒崎さんが、私に相談って何事ですか?>
「実は……」
彼は電話の相手に今日あった出来事を伝える。
<はあ?マジあの子、許さない!>
「愛に変わったこととかあったら教えてください。きっと一人で抱え込もうとするので……。あと、その真帆って子に気を付けてください」
<わかりました。ご連絡ありがとうございます。黒崎さんってホントに愛のこと好きなんですね!いいな>
とりあえず、頼りになりそうな相手には連絡をしておいた。これで何も起こらなければいい……が、そんなわけにはいかないだろう。
あの日、真帆ちゃんが私のバイト先に来て、蓮さんに告白をした日から何日か過ぎた。
学校で会ったら何を言われるのだろうと身構えていたが、廊下ですれ違っても、ゼミの講義の中でも何も触れて来なかった。
もう諦めてくれたのだろうか。
蓮さんとは毎日連絡を取り合っていた。
だが彼の仕事が忙しく、なかなか会えない日が続いている。
会いたいと伝えたら、きっと彼は無理をしてでも会ってくれる。
でも、彼の仕事の邪魔をしたくはないし、私と会う時間があるのならゆっくり休んでほしい。
夜、眠る前の会話だけが楽しみだった。
<今日は、変わったことはありましたか?>
低いけど、聞きやすい彼の声。
「うーん。あっ、優菜と一緒に久しぶりにランチに行ったんです。デザートがつくんですけど、そこのケーキがおいしくて……」
とりとめのない会話、しかし、彼は私の話を笑いながら聞いてくれる。
<今度の土日、しっかり休みが取れそうなんですけど、空いていますか?>
蓮さんと会えるんだ。
「はい、空いてます!あっ、でもアルバイトが入っているので、代わってもらえるように頼みます」
<いつも急な提案になってしまって申し訳ないです。なかなか予定が立てられなくて。もし大丈夫そうなら教えてください。またドライブにでも行きましょうか?>
「はいっ!行きたいです」
<良かった。もうこんな時間なので、ゆっくり休んでくださいね>
おやすみなさいと言って電話を切る。
次の土曜日、蓮さんに会えると思うと、すごくドキドキする。何週間も会っていないわけではないのに。
私はアルバイト仲間にLINNをし、交代をしてもらえるかどうかお願いをした。土曜日が待ち遠しい、喜びでいっぱいになりながら眠りについた。
次の日、優菜に久しぶりに蓮さんに会えることを伝えた。バイト仲間から交代をしてくれるという返事が来たのだ。
「良かったじゃん!どこに行くの?」
そんな会話をしていた時
「愛ちゃん、ちょっと話したいことがあるんだけど」
後ろを振り向くと真帆ちゃんが立っていた。
「なに?」
あれから話したことがなかったので、緊張してしまう。優菜が隣にいてくれて良かった。
「話したいことなんてないんだけど」
優菜が代弁してくれた。
「優菜ちゃんには言ってないんだけど。とにかく、今日のゼミの授業が終わったら、そのまま少し残ってて。ああ、別に優菜ちゃんは残ってなくていいから」
「何それ?私だって残るよ」
「どっちでもいいけど。それじゃあ、またあとでね」
彼女は要件だけ伝え、すぐその場から立ち去った。
「なに、あの態度。愛、どうするの?」
今日はアルバイトも休みだ。
私は悩んだが、彼女と話したい気持ちがあった。
「私、残るよ。優菜は帰っていいから」
「そんなわけいかないよ。何言われるかわからないんだからさ、私も残るから」
巻き込みたくなかったため、帰っていいなんて伝えてしまったが、優菜がいてくれた方が心強かった。
「ありがとう。助かる」
「当たり前じゃん」
ゼミでの授業が終わり、そのまま教室に残る。
皆が帰り、真帆ちゃんと私たち二人だけになった。
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