ー異世界ー
そう聞いたら何を思い浮かべる?
広大な土地に広がる魔物が住む森?
美しい魔法の数々?
私たちが知ることの無い魔法学校の生活?
それとも…
ダークに広がる裏社会?
異世界の秩序を守る者
暗闇に広がる路地裏に1人の少女が立つ
「んー…つっかれた…!」
黒っぽい黄色の髪は数々の建物の隙間から流れてくる光に照らされ、真っ赤だった瞳は数回瞬きしたら綺麗なエメラルドに戻った
ボロボロで真っ赤なナイフを鞘に戻す
「楽しかった❤︎」
そう言って不適な笑みを浮かべる少女の前には血で赤黒く染まった死体が冷たくなっていた
リトナ・クルイバナ
裏社会、社名黄昏時
S級幹部の一人であり暗殺者と言う異名を持つ
日が当たる所では最凶と恐れられるS級冒険者でもある
「夜は晴れましたか?」
「はい…!ありがとうございます…、!」
顔を抑えて泣いている女性をジッと見つめるのは同じく黄昏時S級幹部接客者リュートル・フェイスナル
真っ直ぐな青い髪を一つに結んだ髪と橙の瞳はとても美しく、紅色のメガネを長い指が支える
「晴れたのなら次は地獄ですね、敵対社、夜ノ闇コードネーム夜ノ月」
「は…、?」
『なぜバレた』と言う表情をする彼女をリュートルは変わらない表情で彼女に杖を向ける
「黄昏時S級幹部が一人、リュートル・フェイスナルがお相手しましょう」
「はっ!舐めんじゃないわよ!こちとら夜ノ闇の第一幹部なんだから…!」
何かを言いかけると彼女の首がゴロっと音を立ててカーペットを赤く染めた
「よぉ、相変わらず殺るのがおせぇなリュートル」
「貴方が先に殺ったのでしょう?ファイアール」
黄昏時S級幹部最後の一人、ファイアール・ヌーヴェルト鑑定士である彼は真っ赤な癖っ毛の髪と失明した右目、その額から頬にかけて続く大きな切り傷が特徴的だ
水色の左目は嘘を見抜き、火傷を負った手で振り下ろされる大剣は五百以上の首を切り落として来た
「にしても…また仕事を横取りですか、私に追いつかれるからと焦っているのですか?」
「んな訳ねぇだろ?これで給料貰って…何しよ」
「思いついてないじゃないですか、好物のホロホロクッキーでも買えばいいじゃないですか」
リュートルがそう言うと彼の顔はパッと明るくなるがすぐに気を引き締めキリッとした表情に戻る
「た、確かに良いかもな…」
「今表情変えましたよね?」
「変えてない!」
「たっだいまーー!!!」
言い合う二人の声を遮った声の正体はリトナだった
彼女は床に転がる頭を見て少し驚いた後持っていた黒い袋に入れて手を合わせた
その後二人の元に駆けて行き他の少女と変わらない優しい顔になる
「また派手にやったねー!でもせめて手は合わせないとダメだよー!」
「すまん、次から気ぃつける」
S級幹部の3人には死体をいざなうし、死ぬのも怖い、だがそれと同時にグロい過去と狂った想いが深く刻まれている
そこだけが人生の大きな道を真っ暗でとても細い分かれ道へと誘った
ただ、そこだけが違った
それだけだったはずなのに
「S級幹部の皆様、A級幹部の方々から伝言を頂きました、『会議を今日の17時に行う為会議室に集合してくれ』との事です」
部屋に入って来たのはマリトーナ・ラーファと言うC級幹部だ、基本的に秘書等の役割を果たして貰っている
SからCまであるこの会社にはその階級に基本的な役職がある
Sは全面的に殺しを強要する仕事や相手が危険な場合に起こる、基本は今問題の人に関わる事だがその問題に仕事が割り振られることも勿論ある
Aは殺しは殺しでも魔物の方が多く、問題に関わり深い魔物から情報を抜き取る、その情報をSに報告したりもする事が多いが、人を殺めることもある
Bは強くある程度の殺しが出来るようになったら入れる階級だ、弱めの魔物や敵対組織の部下の情報を少しでも集め続ける階級、拷問等はこちらの仕事なので嫌になり自殺する人も多い
Cは全面的な殺しはほとんど無い階級、秘書や情報収集など裏から支える重要な階級、情報を取ろうと自身が敵陣に侵入し、そのまま帰らなくなる事も多い
C以下は裏切る可能性が少しでもある人間が配属される、どれだけ強くとも可能性が0になるまで昇格する事は絶対に無い
と…そんな話をしている間に会議の時間になったようだ、A級幹部とS級幹部は数日に一度計6名で会議を行う、情報の提供、依頼等の話がほとんどだ
「只今より会議を始めます、今回開かせていただいた理由は問題の悪化です」
話を進めるのはA級幹部情報屋の名を持つヴィーナス・アガメムノン
真っ黒な髪に紫色のメッシュが三つ編みの中に編み込まれている
青色の目は真剣に私たちを見つめる
彼女の足は彼女自身の魔法で浮かされている
「姉さーん!ごめん遅れた!」
「ほんっと相変わらずね、ジュピター」
そしてその弟、私と同じ暗殺者の名を持つジュピター・アガメムノン
同じく真っ黒な髪に青色のメッシュが目立つ
私は彼が目を開いたところを一度も見た事がない、糸目と言う奴だ
「とりあえず本題に戻らへん?魔物の活性化が更に酷なっとるわ、このまんまやすぐに犠牲者出るし対策練らへんと全方面囲まれて強制ノックアウトや」
男らしい声の主はA級幹部執行員の名を持つサーナルガ・クゥカイブだ
真っ黄色の短髪と筋肉質な体が特徴であり、背に大きなオノを背負う彼は執行員
裏切り者の処刑、魔物の討伐が基本の仕事の彼はこの問題に一番問題を感じている
私たちが今抱えている問題は魔物の活性化だ、最近は更に酷くなり被害も増えて来ている
この街は森の中央に建てられている、街の住民は少しぐらいなら戦う事が出来るが魔物が最近強くなり被害が大きくなりかけていると言う訳だ
「魔物の活性化で起こる被害は主に三つや、一つは人的被害、今現在でも死者が出てないのが幸運や、このままやったら…何倍やっけ?」
「約17倍よ」
「せやせや、ありがとさん、約17倍にも膨れ上がってまうわ、二つは建築被害、家等を壊されたと声があがっとる、そいつらは今避難所で生活してもろてる、三つが畜産被害、豚さんや牛さんが食われたり野菜食われたりしとるんや」
淡々と説明を受ける私たち、だが最後の豚さん牛さん呼びで全部ぶっ飛んで行った
「豚さん牛さん…」
「そこ突っ込まんといてや、癖なんや」
ジトっとヴィーナスを見つめるサーナルガの耳は少し赤くなっていた
「つまり魔物を全員蹴散らせばいいの?」
「危ねぇにも程があるわドアホ」
私の声に真っ先に反応したのはファイアールだった
「俺が行く」
「バカなんですか?」
「あでっ!?」
ファイアールの頭を思いっきり叩いたのはリュートルだった、ファイアールは驚きと痛みで声をあげた
「私が行きます」
「「一旦落ち着かん?/一旦落ち着きませんか?」」
サーナルガとヴィーナスが慌てて止める
大体会議はS級幹部みんなが戦闘狂なのでA級の二人がよく止めるだけで終わる事が多い
「みんな慌てようが酷いなぁ…堀とか作ればいいんじゃないの?」
「もしかしてジュピター天才?」
みんながジュピターの方を向く、ジュピターはふふんとドヤ顔を見せる
「すまん弟から電話や、ヴァーライどないしたん?え!?ヴェーラに熱ある!?すぐ薬と食いやすいもん買っていくわ!それまで頼めるか…?ありがとさん!」
サーナルガが慌てる理由は弟、妹関連なのがほとんど、彼はすぐに部屋を出て行ってしまった
「…よし解散!」
「熱はしゃーねぇわな…」
私の声が部屋に響く、ファイアールはボソッと言葉を呟くと席を立ってどこかへ行ってしまった
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