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「ね、手出して」
俺はバッグから小さな箱を取り出す。ベロア生地のシンプルなデザインの箱だ。
おずおずと差し出された右手を握り、あろまにアイコンタクトをする。不思議そうに見つめるその瞳には、不安の色が揺らいでいた。
「何を心配してるのかはわからないけど、俺のことは信じてほしい」
小箱をパカッと開け、僅かな光を反射しキラリと光るシルバーリングをそっと持つ。こういうの、やってみたかったんだよね。
俺は片膝をついてその骨ばった薬指にすーっと指輪を通していく。ふと顔を上げると、困ったような、嬉しいような、何かを我慢しているような表情をするあろまの顔があった。
「好きだよ、あろま、大好き」
すると、あろまは自分の鞄から何やら大きな袋を取り出した。中から取り出したのは白いマフラー。立ち上がってそれを広げては
「立って」
とぶっきらぼうに言ったと思ったら、俺の首にマフラーを掛けてグイッと引っ張った。
「ちょっ」
急に引っ張られて倒れそうになったが、何とか持ちこたえる。そして数センチの身長差を埋めるようにして近づけられた顔はその距離ではよく見えた。
(真っ赤じゃん…)
その時、唇に感じた柔らかな感触。一瞬触れたかと思ったらすぐに離れていき、代わりにふわふわの髪の毛が鼻をくすぐる。
「あろま…」
続けて聞こえたのは、鼻をすする音だった。俺はその音に納得して、俺の胸に顔を埋めるこいつの背中に手を回す。
「ねぇあろま、なんで泣くの?」
「…るさい」
「これプレゼント?」
「ん」
「白いマフラー欲しかったんだよね、ありがと」
そのふわふわの頭に手を乗せ、そっと撫でる。
「ちゃんと選んでくれたんだな、嬉しい」
「……ぐすっ」
「もー…泣きたいのは俺の方だよ…」
こんなにもらしくないところを見せてくれるのは、俺に対して心を開いてくれてるのだと思うと愛しさが募る。俺は抱きしめる腕にさらに力を込めた。
To Be Continued…