「ほらあそこ。よく狙って」
僕はライ姉さんに手を添えてもらい、一緒に狙いを定めてくれた。
「⋯⋯ここだっ!」
勢いよく放った魔気はスライムの核へ一直線。見事に直撃した。
「やった!」
「凄いわラウロ!」
自身の心臓である核を失ったスライムは動きが止まり、核が消滅したと同時に宝石のようなものが地面に落ちた。
「なんだろうこれ?綺麗な石だなぁ」
「これは魔石ね。魔物を倒すと出てくる魔力の塊よ。魔物が強ければ強いほど大きい魔石がでてくるわ」
「これはラウロが倒したんだから、記念に持って帰ろう!よーし、今日はお祝いだー!」
「お祝いって⋯⋯。今日はあくまで実力を試しに来たのよ?それに、これで終わりじゃないわ」
そうだ。僕がスライムを倒せたって、あんなに近距離じゃ、魔気を使えたとは言えない。
まだまだ訓練しないと。
「そう言えば姉さん達の依頼まだ終わっ」
〖──ドクン〗
「て⋯⋯ない⋯⋯」
〖ドクン〗
「ラウロ?」
な、なんだ⋯⋯?体が、あつ⋯⋯い⋯⋯。
僕は思わず膝をついてしまう。
「どうしたの?ラウロ、ラウロっ!」
「落ち着いてライ。これは恐らくポーションで治るようなものじゃないわ。とにかくギルドへ⋯⋯」
『グルルルルル⋯⋯』
「「──っっ?!」」
2人は悪寒を感じ、すぐさまラウロを守るように戦闘態勢を組んだ。
「アリサ、これ、やばいね⋯⋯」
「ええ。でも、どうしてこんなところに」
目の前にゆらりと現れたのは、狼。それも数メートルどころの大きさではない。全身を灰色の毛で覆い、淡い水色の瞳がしっかりと3人を捉えている。溢れんばかりの魔力が白い光となり、身にまとっていた。
その膨大な魔力がライとアリサを襲う。
「「(勝てない⋯⋯!)」」
最低でもAクラス、いや、Sクラスだろう。伝説の魔物、灰狼(と書いてフェンリル)と言ったところか。
以前言った通り、この森は初級冒険者用となっている。Cクラス以上の魔物など存在しないはずなのだ。
このままでは逃げることは愚か、1歩でも動けば粉々にされるだろう。
「いったいどうすればいいの⋯⋯」
頭をフル回転させて今の状況を回避する方法を考えていると、突然灰狼の口が開く。
食われる⋯⋯そう思った時、
〖ガルル⋯⋯ココハドコダ⋯⋯?ワレノシンイキデハナイ⋯⋯〗
「えっ⋯⋯」
「魔物が、人間の言葉を⋯⋯?そんなことが⋯⋯?」
動揺を隠しきれなきライとアリサ。だが今の灰狼の呟きから、今のところ自分たちに敵意がないということがわかった。
〖フン、ソコノニンゲン。ワレヲ⋯⋯マモノナドトイウザッシュアツカイシナイデモラオウカ〗
(ふん、そこの人間。我を⋯⋯魔物などと言う雑種扱いしないでもらおうか)
「「?!」」
「(この声の大きさでも聞き取られるの?)」
ラウロは、まだ調子が戻らない。
そこでアリサはお互いに目的を認識し合おうと試みる。
「⋯⋯会話は⋯⋯可能?なのかしら」
「アリサ?!」
〖ホウ、ワレトカイワヲモトメルモノガオルトハ。ナカナカキモガスワッテイルヨウダナ〗
(ほう、我と会話を求める者がおるとは。なかなか肝が座っているようだな)
「⋯⋯絶対に守りたいものがあると、自然と命を懸けてしまうものよ」
〖ナルホド。ソコノショウネンノコトカ〗
(なるほど。そこの少年のことか)
「アリサ、ラウロを守るために⋯⋯」
何をやっているんだ私は。とライは拳を握りしめ、アリサの隣に並ぶ。
「灰狼。私たちは敵意がないの。あなたをどうなの?」
〖ワレハオマエタチフタリニキョウミハナイ〗
(我はお前たち2人に興味は無い)
それを聞いて、ほっと息を着く⋯⋯はずもなく。
⋯⋯⋯2人?
「彼に⋯⋯ラウロに用があるということなの?!」
〖ソウダ。ソイツカラトテツモナイジャキノヨウナモノヲカンジル。ニンゲンガモッテイイチカラデハナイ〗
(そうだ。そいつからとてつもない邪気のようなものを感じる。人間が持っていいチカラではない)
「何を、言ってるの?」
「そんなの、ラウロが人間ではないと言っているようなものよ?!」
〖ソノオーラハオマエタチニハミエンカラナ。ワレガドウヤッテココニタドリツイタカハワレニモワカランガ、セカキノユガミヲタダスノガマロウゾクノヤクメ。ホレ、ムラサキノモヤクライナラミエルダロウ?〗
(そのオーラはお前たちには視えんからな。我がどうやってここにたどり着いたかは我にも分からんが、世界の歪みを正すのが魔狼族の役目。ほれ、紫のモヤくらいなら視えるだろう?)
恐る恐るラウロの方へ振り返る。
「ぐ、ううう⋯⋯⋯」
苦しそうにうずくまるラウロの体から、魔力とは違うモヤが溢れ出していた。
「そんな⋯⋯」
「嘘⋯⋯だよね⋯⋯」
「⋯⋯ぅああ”あ”あ”っっ!!!」
突然モヤが覇気へと変わり、辺りが夜になった。
「くっ⋯⋯!」
「っ⋯⋯!」
あまりに覇気が強かったため、ラウロの近くにいた2人は吹き飛ばされてしまう。
〖チイサナコドモノナカニスミツクトハ。ソノオーラハドコニシマッテオケルノヤラ〗
(小さな子供に住み着くとは。そのオーラはどこに閉まっておけるのやら)
『───────うるせぇよ、犬』
ラウロは、別人のように灰狼に言葉を返した。
えーと、途中で列を開けたのは、視点が変わったからです。
あと、〖〗の中が読みにくいと思ったので()に普通に書いてあります。カタカナにしたのは⋯⋯まぁ、雰囲気的な?
では、気になる第9話をお楽しみに!!
9話では、挿絵として新しい登場人物のイラストも解禁します!!!
コメント
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やりたいです!! どうすればいいですか?
こんにちわ蜘蛛ですが何かのなりきりしませんか?