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鴨之助
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わ
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第28話
ハンナが倒れた。
俺は急いで、体を抱き抱えて、治癒を始めた。さっきまで見えなかった傷が沢山……治せない傷も沢山。
咳込んで……結局、吐血。今回も、内臓が、やられているらしい。
はぁ〜……本当に知ってるのか? 使い魔の契約。
大半を治せたとき……ハンナの限界がきた。
何の限界かと言うと……治癒魔法の限界。
あれを使われ過ぎると、記憶障害とかに繋がる。
でも、大切な部分は大体できたはず。
ノックが二回鳴った。
「入っていいか?」
ミヒャエルの声だった。
何か疑ってるような……魔力の動きがそんな感じ。
「大丈夫だ」
俺がそう言うと、ミヒャエルは扉を開けて数拍固まった。
だろうな。
ここには、ベットに寝かされた真っ青な顔で傷だらけのハンナと、吐血の返り血がかかった俺がいる。それに、部屋に敷かれたカーペットは、一点だけ赤く染まっている。
「……何だ? また、何かやらかしたのか?」
「無理をしたんだ。傷も隠されててたし……流石、笛吹の少女と呼ばれるだけある。この手の魔法は見破るのをできるようになる頃には、数百年かかるな」
俺はそう言ってハンナの頬を撫でた。
脈はちゃんとあるし、呼吸もさっきと比べたら深くなっている。
でも、何かうなされている。
「……ハンナは、本当に魔長を倒したんだよな?」
「ん? そうだが、何か問題があったか?」
「魔長って、天災級の強さって言われることもあるんだが……常識を言っても、無駄だったな」
苦笑して……涙がポタポタとミヒャエルの黒い瞳から溢れ出した。
え? あのミヒャエルが? 泣く?
「あぁ……駄目だな。俺の妹は双子で弟もいるんだ。どちらも病弱で……こうやって寝込んでる姿を見ると、いつあの二人が逝くのかが、過ってな……すまない」
「え?」
俺は、呆けた声を出すしか無かった。
いや……え? 一人息子とは?
俺はそんな顔で固まりながら……何もできない自分を恨んだ。
やってやる義理も無いが……結局、何も……王子を守れなかった俺だから、色々と思う所がある。
「黒猫……? ミヒャエルさん……?」
ハンナが体を起こして、目を擦っていた。
なぜか、俺の返り血と、カーペットの血痕はいつの間にか洗われていた。
「起きたか」
「泣いていたんですか?」
ハンナは、頬を膨らましながら膝を抱えている。
……コイツは前世も、前前世もあるが……一応、七歳児。
嫌な事は沢山あるだろう。嫌だと叫びたいだろう。
だけど、人の前は勿論……俺の前でも出さない。
「ごめんなさい。思い出したくも無いことを思い出させてしまって……」
「は? どこから聞いてたんだ?」
「え……? あ、あぁ。黒猫が固まってた時に起きましたよ。魔力が、奥の底にあった何かの悲しみとか……色々を思い出させてるような動きでしたので」
……一度聞いた事がある。
俺も、同じような状況下にあって……ハンナは『前世の先生もずっとその魔力の動きだったから分かるの……だから、ごめんね』と寂しそうに言っていた。
今も、寂しそうな顔をしている。
「そうか……そんな事まで悟らせてしまってすまない。俺も遅いから、御暇する。明日は安静にしといた方がいいと思う」
ハンナに向かって、フッと笑ってから部屋を出た。イケメンだ。
凛とした姿は、つい数週間前までは見れなかった気がする。
……人って、そう簡単に変わるんだな。
✵
数日後。
完全回復。周りが過保護すぎて、今日まで外に出させてくれなかった。
少し腕が落ちた気がする。
「おい。炎天下にいつまでいるつもりだ?」
「まだ、お昼じゃないよ。それに、水分補給もちゃんとしてる」
私は、プクーとフグのように頬を膨らませて木剣を振るった。
その軌跡からは、水の刃が出て……黒猫の目の前で不自然に消滅した。
「変な魔法ばかり使うんだな。俺には真似のしようがない」
「簡単だよ」
そう言って黒猫の魔力をいじり始めた。
黒猫も、最初は酔ったけど……もう、慣れたらしい。これで、強くなったといった方が正しいし。
「ったく……っ!」
黒猫がすっかり固まった。
金縛り……? それとも……
「何の御用でしょうか?」
後ろにある魔力反応があった。しかも、マリアでもミヒャエルさんでも、教皇様でもない。
他の仲良くしている人でもない。
……ニーナ嬢だ。まぁ、断言もできないから名前をあげてないけど。
「あら? バレてしまったのですね」
コメント
1件
第28話、読み終えました……。 ミヒャエルが泣いてたシーン、すごく衝撃でした。あの冷静な人が、って思うと余計に胸に来る。家族の話、初めて出たんですよね……。ハンナが魔力の動きで黒猫の悲しみを感じ取って、「ごめんね」って言うとこ、すごく切なかった。この子、見えないところでちゃんと全部感じてるんだなって。 黒猫も王子を守れなかった後悔抱えてるし、二人とも無理してる感じが苦しい……。でもだからこそ、続きがすごく気になります。