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あれから何ヶ月経っただろうか。ようやく心の整理がついて、オレは久しぶりに実家へ帰った。
“彼女”に会うために。
午前6時半。いつものように早朝の散歩をするため、目を覚ます。
このままではダメだ、前を向かなければいけない。本能がそう言っていた。
布団から出て、昨日買った花束を持ってオレは家を出た。
そして香織ちゃんから教えて貰った墓地へ歩いていく。
早朝の朝日がゆっくりと地を照らした。
十数分歩いた先には彼女の名前が掘られた墓石を見つけた。
「葵ちゃん」
昔のように、それでも昔より少し低くなった声でオレはそう彼女の名前を言う。
そして、花束を供え目を合わせながら暫く目を瞑る。
ただ、君がいた。その事実だけを覚えていよう。
「悲しいけど、前を向かなきゃね」
変わらない自分の情けなさに思わず苦笑してしまう。
そんなオレを葵ちゃんもきっと、笑って見ている。オレの言うことを受け止めてくれるはずだ。
朝日が完全にオレ達を包み込む。
「葵ちゃん、朝が来たよ」
君はオレを許してくれるだろうか。それとも、馬鹿だと言っていつもみたいに叱るだろうか。
どちらでもいい。
君への恋心はきっと、消えていく。
ただ、“君がいた”その事実だけが残っていく。時間の流れというものは残酷だ。
だから、後悔する前に、オレは告げたい。
高校時代、毎朝いつものように君へ告げていた挨拶を。
君がいつものように生きていた朝へ、
君に恋していた毎日へ、
そして、君が生きた世界へ
「おはよう」
総てが少しだけ美しく見えた気がした。