「う……」
失ったままの意識を無理矢理覚醒させ、僕は大きく跳ねながら飛び上がる。
辺りを見渡せば、まるで変わらない街のよう。
だけど、なんだか不吉の二文字が漂っているみたいで、どうしても好めなかった。
「何があったんだっけ……」
地面と顔を合わせ、ちょっと考えてみる。
確か、爆豪と轟が喧嘩みたいなのをしている合間に僕は観客席に戻って……戻っ、て……
何を、したんだっけ
そこから先がどうしても思い出せなくて、僕は僕の頭を壊れたテレビを直すかのように何度も叩いて、叩いて、叩いて、何とかしようとした。
でも、なんともならなかった。
ただ痛いだけ。
思い出せない虚無感を倍増させるように、空っぽの頭の中に痛みが広がる。
とても痛くて、目からは涙が出てきた。
無理矢理起こしていた身体も、起こす意味がないかのように思えてしまって、地面に身体を打ち付ける。
左半身痛いのを確認して、夢じゃないことを再認識した。
こっちが夢じゃないなら、あっちが夢なのだろう? だったら僕はそっちに居たい。
痛くてもそっちに居たい。
僕はそのまま目を閉じて、深い深い深海のような眠りに浸ろうと思った。
その矢先、耳をつんざくような爆音が街一帯に鳴り響く。
それはとても不快で、これからのことを暗示するかのような、嫌なもの。
空を見上げ、音の元を探そうとする矢先、ホログラムのように何かが空に映し出される。
それは不快な機械音を放ち、視界を乱す。
「アーアー、マイクテスマイクテス、聞こえてマスカー?」
乱れる映像はやがて正常となり、一人の女性を映し出す。
今回の黒幕かもしれない。
姿を正常に捉え……て……?
「なんでだよ……なんで……」
そりゃ頭の片隅にはあった。
ちゃんと映し出していない可能性だって考えてた。
けど、実際に見るとこれ程虚しいものはない。
悔しい。
「姿を現せよ……!」
「エー、アー、これから皆様には」
これ以上聞きたくもない機械音声のような声は途絶えることなく、次の言葉を綴る。
「ゲームを、してもらいマーァアーースス」
これが地獄の始まり。
僕が僕になる始まり。
最悪な地獄の始まり。
コメント
1件
良いですね!頑張って下さいね!