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数日後
僕は猫宮の葬式に車椅子で出席した、
止まない雨はない、そんなもの当たり前だ、
冷めない夢もない、そんなことわかっていた
仏壇でお経が読まれる、お坊さんが名前はわからない、金属のお椀を
チイーーーーーーーーーン
とならす、
その音が部屋の中で響き渡れば、また、猫宮が
死んでしまった、そう思ってしまう、
悲しいと思った葬式は初めてだった
それから少しして、火葬場に運ばれた、
これから、猫宮は燃やされるあまりにも非現実すぎる、
1週間前までは一緒に登校していた子が今日棺桶の中で燃やされる、
火葬する装置に棺桶が吸い込まれる、まだ実感が湧かなかった、涙も何も出なかった
数時間後、僕らは呼ばれて、骨になった猫宮と
対面することになった、
もっとも、トラックのタイヤに巻き込まれたせいか、骨はぐちゃぐちゃで、原型を留めていない、
大抵はヒビの入った骨や真っ二つに折れてる骨、
粉々になった骨だってあった、
死者をお骨あげするとき、生きてる姿と同じになるよう足の骨から入れていくのだが、
どれが足の骨なのかもぱっと見じゃわからないほどの惨状だ
僕は何もなくなったソイツを見たんだ
あれ?どこに骨があるんだ?何もないじゃないか……..
もしかして、焼きすぎて煙でも出ているのか?
あれ?………
僕、、、泣いてるの?
ただ一緒に学校に登下校して、たまにゲームや勉強をするだけの友達であり幼馴染、
それだけの関係なのに………
猫宮との思い出が頭の中でグルグル回る、
辛い……苦しい…….胸が痛い……….
寂しい……
『水城ーお願い!!、明日のテストやばいから勉強教えてくれない?』
数年前の記憶
『またかよーもうそろそろ自分で自主的に勉強しろよー、後、下の名前で呼ぶなって!立花でいいよ』
『そこをなんとかー次のテスト70点切ったら塾に入れられるんだよー』
『むしろそうした方がいいんじゃないか?
先週だって56点とかとって親にゲーム禁止になったんだろ、俺の家でゲーム借りてやってたけど』
『お願い!水城!本当にお願い!』
『はぁーわかったよ〜めんどくさいなぁ、
あと下の名前で呼ぶなって…..』
『なんで猫宮は俺のことを名前で呼ぶんだ?』
沈黙が生まれた、教えてくれよ、俺は嫌なんだよ
『じゃあさ、…..
立花はなんで私のことを名前で呼ばないの?
幼馴染なんだよ?』
………
『下の名前で呼ぶのって、恋愛関係にある人がやるんだと思うんだ……だから…….』
『ふぅーーーん』
『お前から聞いといてなんだよそのやる気のない返事…..』
『まぁそんなこといいでしょ!早く家に帰って勉強しないと!水城!』
『下の名前で呼ぶなよ………(小声)』
はっと我に帰る、そこには、もう骨は残ってなかった、あとはもう蓋を閉めるだけ、後から聞いた話だが、僕はこの時、呆然と立ち尽くしていたらしい、箸を左手に持ったまま、そのまま僕の番が来ても、何も返事をしなかったらしい。
僕より少し小さい身長、僕が150cmだから、アイツは大体140cmくらいか、それなのに、こんなに小さくなって…….
『昇華……..』
言葉にならないほどの小さな声、かすれた声、
虫の声、誰にも聞こえないような声だった、
なんで、僕は、彼女の名前を?
思えば、昇華と呼んだことはなかった、
大体猫宮かお前って呼んでいた、
なんで今そんな言葉が出てくるんだ、
胸の鼓動が早くなる、立っていることも辛い、
早く逃げるように家に帰りたいと思った、
僕は……
昇華のことが好きだったのか?
わからない、
自分でもわからない、
でもとても胸が苦しい、鼓動が早い、涙、
それに、不意に出た『昇華』
感情は嘘をつかない、
自分の好きな言葉だ、自分の思っていることには嘘がつかないんだ、
自分は、本当は………
心の奥底で、昇華のことが好きだったのか?
長い葬式が終わった
心にはポッカリ穴が空いた、
一度は満たされた心も、全てがさらに大きく
ポッカリ空いた……..
帰ろう……..
とにかく、早く家に帰りたかった、
早く、いち早く、外に出たくない、
早く、昇華のことを忘れたい、