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上野文
9,610
#魔法
こはる
409
植まどか
484
第62話
私は必死に走った。
疲れた。足も痛い。
でも、ロルフがまたあの時のようにボロボロになって……
貴方とまた笑い合いたい。
しばらく走ると、ロルフがドラゴンと戦ってた。
ロルフはボロボロだったけど、ドラゴンもドラゴンで、動きが鈍くなっていた。
多分、ロルフは私に気づいてない。
でも、ロルフは龍の攻撃を防ぎれなくて、飛ばされた。
駄目っ!
ロルフはぐったりとして、動かなかった。
私はボロボロのロルフに向かって駆け出した。
意識はあるみたいだけど、苦しそうだった。
脈も早くて、息苦しそう。
私はロルフに向かって、光を放った。
……使い過ぎかな……? ロルフの量だと、私は気づかなかったかも……
すると、ロルフは力んでいた力を抜いて目を開いた。
「姫様……すみません」
「謝らないで。ここで一人で足止めするなんて無謀よ。私も手伝うから、頼って」
「はい」
そう言ってロルフは立ち上がった。
「これは、人の手で作られた龍です。大災厄のようにとは行きませんが、また、大暴風が……っ……」
ロルフはそこまで言った所で言葉に詰まった。
ロルフは、あの時、どんな事を思ってたのだろう……
「大丈夫。同じ事は繰り返さないから、ね。私は、貴方の役に立ちたい」
「……分かりました。身の危険を感じたら、この弓と矢を使ってください。姫様の弓の使い方はとても上手なので、任せます」
そう言ってロルフは、私に弓と矢を渡した。
えっ! 重っ!
感想はそれしか出てこなかったけど、ロルフの気持ちの強さはどれ程だったのだろうかと思うとそんな事も気にできなかった。
私は集中して、光を龍にぶつけた。ロルフは月夜に舞う――狼に見えた。
龍の周りを舞う狼。龍を狩る狼。
そう比喩させた方が正しいのだろうか。
いつ見ても、美術品のような美しさだ。
金色に光る髪は狼のような毛並み。獲物を捕らえる美しい青い瞳。華麗で、軽快な狼の舞。
私は心を奪われた。その美術品に。
よし、頑張ろう。ロルフのためにも……
私は、光を思いっ切り龍にぶつけた。
すると、私の力の波動が跳ね返って私に向かって走ってきた。
もう駄目っ……
私が目をギュッと瞑っているとふわりと浮いた。
「アニカっ!」
そう言ってロルフは中に浮いている私に手を伸ばした。
「ロルフ!」
私もそれに応えられるように手をめいいっぱい伸ばした。
すると、ロルフは私の手を取って私を抱き寄せた。
「やっと、掴めた……」
そのまま、ロルフは星空の中、私の事を上にして、平原に落ちた。
✡
「――フ。返――……起きて。ロルフっ!」
僕は飛び起きた。
「ロルフっ……うわぁーん……」
そう言ってアニカが僕に抱き着いた。
アニカ……
「大丈夫です。生きてますから……」
辺りを見ると、晴れて、満月が綺麗に見える。
「姫様。ご迷惑をおかけしました。お怪我は?」
「大丈夫だよっ……ロルフこそっ、私が治せっくて……怪我っ、あるはずなのっに……」
「僕の事は大丈夫です。体が冷えない内に帰りましょう。風邪を引いてしまいます」
「うんっ……」
そう言って、アニカが僕に手を差し伸べた。
でも、僕の記憶はここまでだ。視界が歪んで、頬に草が刺さっている。
「……っ……んっ!」
僕はベットの上で飛び起きた。
アニカは椅子の上でウトウトしていた。今日は満月なので、もうそろそろ、日付が変わる頃だろう。
「何で……っ」と飛び起きた体も支えられずにベットに横になった。
食欲は相変わらず無いし、力も入らない。
……栄養が足りないのかな……でも、食べられるような感じはしないし。
水だけじゃ無理だよね……
「ん……え? ロルフっ……」
目を開けるなりに、アニカの青い瞳は滲んで頬には涙が流れている。
「ごめんなさい……少し、疲れたみたいです……僕は、大丈夫なので、寝ていてください」
「そうじゃっ……謝らないでっ。ロルフは極度の栄養失調って……だから、何か食べて……お願いっ……」
「ご心配かけてしまいましたね……でも、ここ数日、食欲不振で……ごめんなさい……」
「……すり下ろしたリンゴだけど、食べれる?」
そう言ってアニカが僕の前にリンゴが乗ったスプーンを差し出した。
僕はそれを飲み込んだ。
……ん? アニカに食べさせてもらってる……?
「最初は、お腹に優しい物から取らないとって、医師がいってたんだ……何も出来ずに……」
「ありがとうございます。龍は大丈夫なのですか?」
「うん。そこはロルフがやってくれたでしょ。残りを食べてから休んでね」
そう言ってアニカはまたスプーンを僕の前に出した。
アニカは僕に食べさせ終わったら、ベッドに突っ伏せて寝てしまったけど、僕は他のベッドに運ぶ余裕も、頭も働かなかったから、そのままアニカをベッドの上に乗せて深い眠りについた。
コメント
1件
読み終わりました…! 「やっと、掴めた」ってロルフがアニカを抱き寄せるシーン、めっちゃ胸にきました。守るだけじゃなくて、ちゃんと弱さも見せ合える二人の関係、尊すぎます。 最後の食べさせ合いも、静かで温かくて、泣きそうになりました。 こはるさんの描く「支え合う強さ」、すごく好きです…🤍