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#あべさく
めかぶぷりん
8,223
29
雪月❄️
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深澤と目黒が二階の事務所に降りてくると、ラウールがコントロールルームから出てくるところだった。
🤍「無事、完成したよー」
言いながら、手に持っている鍵を見せてくる。
🖤「あれ? 阿部ちゃんは?」
💛「休憩室。あの鍵が近づくと、阿部の封印が出てくるって言ってたろ。だから離れててもらってるのと、意識が朦朧としたって言ってたからベッドなら安全だと思って」
💜「じゃあ、解除は休憩室でってことだね」
💛「そう。舘さんとラウにいてもらって、かな。みんなで見るもんでもないだろ」
💜「俺とめめも一緒にいていい?」
💛「まあ、そのくらいならいいんじゃねえの? 俺らは別のことやってるから」
🤍「なら、ふっかさんとめめも一緒に入ろう。僕、阿部ちゃんの状態を見てたいから、ふっかさんに鍵、渡していい?」
💜「えっ、俺がやんの?」
🤍「めめでもいいけど、めめは多分、やでしょ?」
🖤「……正直、できる気がしない」
🤍「うん、だからふっかさん」
💜「まあいいけど。誰かがやらなきゃなんだし」
🤍「よろしくー」
差し出された手に鍵を乗せ、休憩室に入って行った。すでに阿部はベッドに横になっており、その傍に宮舘が立っている。
❤️「目黒とふっかは、そりゃ来るか」
💜「なべと佐久間がいないのが不思議だよ」
❤️「翔太は、見ると多分辛いからって」
🤍「阿部ちゃん、解除の時、なんていうか意識がハッキリしてないし、あの時も倒れちゃったからね」
💚「倒れたのは解除のせいだけじゃなかったと思うけど。金縛りの最中も、ちょっとずつ動こうとしてて力入れてたし。なんとか知らせなきゃって思って」
🤍「緊急信号、出してくれて良かったよ。作っといて良かったね、このピアス」
💚「ホントだよ。ラウのおかげだね」
そう言う阿部に、ラウールは嬉しそうにへへっと笑った。
それから、モノクルをかける。
🤍「じゃあ、そろそろ始めようか。阿部ちゃん、準備はいい?」
💚「いいよ。ふっか、やな役回りさせちゃうけど……」
💜「なに言ってんの。封印解除なんて、ゲームの主人公っぽいじゃん。俺、そういうの得意だから」
💚「封印解除が得意ってどういうことなの、それ」
💜「まあ、気にしない……じゃあ、近づくからね」
ずっと休憩室のドアの傍にいた深澤が一歩ずつ近づいてくる。それと同時に、阿部の瞼が落ちてくる。焦点が定まらず、ボーっとした表情のまま、ゆっくりと目を閉じた。
そして、阿部の胸に錠前が浮かび上がり、緑色のハート形の宝石が淡く輝いている。
深澤が更に近づいた。目黒と宮舘は阿部の右側、ラウールと深澤が左側に立つ。そして深澤は持っている鍵を、錠前に差し込んだ。
直後、錠前を取り巻くように魔法陣が出現した。
🤍「……やっぱり魔法陣。CLOSE、大分特殊な封印だね」
💜「どの辺が?」
🤍「魔法陣ってさ、発動の瞬間だけ見えるんだよ。だから、基本は数秒で見えなくなるのね。効果は残ってても、僕の眼鏡みたいに特殊な道具を使わない限りは見えない。でもこれは、展開された魔法陣がずっと視覚化されてる。つまり、発動の状態を維持してるってこと」
💜「……わからん」
🤍「えっと。とにかく、複雑で高度な技術ってこと。魔法陣は条件を満たすと消えてなくなるんだけど、その条件が鍵を開けることなの。でも、鍵を開けるには魔法陣を正確に読み解いて魔術式を上書きしないといけない。今、その上書きの作業を、鍵に仕込んだ魔術式でやってるんだよ」
説明をしたけれど、誰も何も反応しなかった。
宮舘は微動だにせず眉を顰めていて、目黒は考えるのを放棄し、深澤は聞かなかったことにするかのように鍵に集中している。
🤍「阿部ちゃーん。この人たちに説明するの、僕、無理かもー!」
💜「うわ、匙投げられた」
🤍「考えるのやめた人たちに言われたくないよ」
💜「うおっ。なんか、鍵、ちょっと奥に入った」
🤍「あ、じゃあ、一つ目が解除されたんだ」
🖤「一つ目って……何個あるの?」
🤍「鍵の先端のギザギザというか凸凹した部分あるでしょ? あれの数だけ、中で揃えなきゃいけないの。CLOSEの鍵は、三つだね」
💜「じゃあ、あと二つか……阿部ちゃんは……」
阿部の額に手を当てている宮舘を見る。
❤️「熱は上がってないよ」
🤍「体の中も問題はなさそう。今のところは、だけど」
💜「お、二つ目もいったっぽい」
🤍「じゃあ、もう少しだ」
けれどそこから、先には進まなくなった。
10分ほど経っても、解除される気配がない。
🤍「おかしいな……魔術式はちゃんと機能してるのに、解除まで進まない」
❤️「原因、わかりそう?」
🤍「んー。別に弾かれてるとかじゃなさそうなんだよね。ちょっと待ってね」
そう言って、ラウールは眼鏡にかけかえた。
🤍「……うん、問題ない。最後が複雑なんだよ。だから、前二つとは比べものにならないくらい時間がかかってるんだ」
不意に、阿部の右手がピクリと動き、ゆっくりと上がった。何かを求めるように、手を伸ばしている。咄嗟に目黒がその手を掴んだ。ぎゅっと、力強く握る。
🖤「阿部ちゃん、大丈夫だよ。もう少しだからね」
その瞬間、錠前を取り巻く魔法陣が一度、強い光を発して、鍵についている時計の針が一つ進んだ。そして魔法陣が消え、鍵が、回る。
カチリと、音が鳴って錠前が開き、錠前と鍵は金色の光になって消えていった。
ふうっと誰からともなく息が漏れる。
🤍「……うん、阿部ちゃんの体調も問題なさそう」
❤️「熱も上がってない。そういう症状には出てないね」
💜「あー……良かったー……封印解除なんて、影響出てもおかしくないからなー」
🤍「そういうもん?」
💜「え、なんかイメージ。封じられた力が溢れるってさ、なんか、こう、ゲームの一大イベントっぽいじゃん」
🤍「ふっかさん、さっきからゲームの例えばっかじゃん」
💜「しょうがないだろ。そういうのでしか知らないんだし」
そうして話していると、目黒が握っている阿部の指が動き、ゆっくりと目が開かれていく。
🖤「阿部ちゃん。大丈夫?」
💚「うん……平気」
❤️「変わったところとか、ない?」
💚「それもなさそう。解除されたって実感もないや」
🤍「そういう感じなんだ。軽くでいいんだけど、電波拾えるかだけ試してもらっていい?」
💚「ん」
阿部は一度目を閉じ、数秒後にすぐ開かれた。
💚「拾える。みんなのスマホの電波がわかる。それと、ラウがくれたイヤリングからも、微弱な電波が拾えるよ」
そう言って、ニコッと笑う。
そこで再び、盛大に深澤が息をついて床に座り込み、ラウールは「やったー!」と両手を上げ、宮舘は微笑を浮かべ、目黒は、握っている阿部の手に自分の額を当てた。
💚「もー、なんか大げさじゃない?」
💜「なんで阿部ちゃんがそのテンションなのか、わっかんないよ」
💚「何だろうね。俺もホッとしてる。ただ、なんだろ。しっくりくる感じ。それ以上でもそれ以下でもないっていうのが感想かな」
🤍「それだけ阿部ちゃんの体に馴染んでたんだろうね。だから、嬉しいとかより、もっと違う感覚の方が強いんだよ」
💜「どんな?」
🤍「こればっかりは体感だからね、言葉で説明するのは難しい。ってか、さっき説明したって理解できなくて放り投げたじゃん! 僕もう、説明したくない! 阿部ちゃんいなくてちょー困ったんだから」
💚「え、あとで聞かせてよ。どんなだったか知りたい」
❤️「阿部はそうだろうね。その話は、二人きりでゆっくりするといいよ。でも、先ずは向こうでティータイムかな」
🤍「康二くん、用意するって張り切ってたね」
💚「楽しみだ」
💜「めめ、俺ら先あっち行ってるから、阿部ちゃんのことゆっくり起こして連れてきて。ちょうど、手ぇ握ってるし」
🖤「あ……はい」
よろしくーと軽く言ってから、深澤、ラウール、宮舘の三人が休憩室から出て行き、それを見送ってから目黒は阿部に視線を戻した。
🖤「このまま、起こしていい?」
💚「うん、大丈夫」
握った手に力を込めて阿部を起こす。
🖤「……ホントに、大丈夫なんだよね?」
💚「大丈夫。もう隠してないよ。なくなったものが元に戻っただけっていう感覚かな」
🖤「そっか……なら良かった」
💚「どうなるか分からなくて怖かったよね。俺も、意識がはっきりしなくなるからちょっと怖かったけど」
🖤「やっぱり怖かったんだ」
💚「そりゃ、ね。俺だって何でも平気なわけじゃないよ」
🖤「知ってる。ドッキリとか苦手だもんね」
💚「……ドッキリが平気な人っているの? ああいう、予想してないことはね、ビックリしちゃうよ。まあ、佐久間とか康二がやろうとしてるのは気付くから驚かないけど」
🖤「バレバレだからね、あの二人は。ドッキリクリエイターには向かないよ」
💚「仕掛けるの好きなのは分かるんだけどね」
そんな他愛もない話をしながら阿部を見つめていた目黒は、不意に、一点を見つめたかと思うと阿部に顔を近づけた。
💚「え、なに」
🖤「ストップ。阿部ちゃんの目、変わった」
💚「えっ?」
🖤「前から、近くで見ると緑っぽく見える黒目だったんだけど、違う。緑の線が入った」
💚「線? どんな?」
🖤「なんか、ずっとあるわけじゃなくて、たまに線が走るって感じ。緑の、電子っぽい線。それと、黒目のとこもちょっと違う。うーん、説明むずい」
💚「電子っぽい線は、俺の異能がちょっと浮き出たのかな。封印を解いたから、その影響なのかも。黒目の方はよく分かんないけど、そっちもきっとそうなんだろうね。俺の異能、どういうわけか目に出やすいみたいだし」
🖤「色が変わるのもそうだよね」
💚「そう。めめ達はさ、異能使っても、別に変化しないじゃん?」
🖤「うん。でもたまにいるよね、オーラみたいなのが出たりとか。ふーちゃんもじゃない?」
💚「確かに。姿を変える時に見えるね。あと、ラウも同じ系統かな。クリエイトの時に白い光が出る」
🖤「こう考えると不思議だよね、異能って。未だに俺、自分の異能もよく分かんないし」
💚「そうだね。俺も分かんないよ。だからこそ、扱いは慎重にしなきゃいけない。でも、体の一部みたいなものだから、全部を知らなくてもいいのかなって思ってる。うまく付き合っていければいいんだよ」
🖤「だね」
それから休憩室を出ると、向井が淹れてくれたコーヒーが並べられており、全員で飲むことになった。
阿部のだけがまた特製で、深澤と佐久間がブーブー文句を言っていたけれど、向井が「阿部ちゃんが頑張ったご褒美」と言うので、すぐに二人とも黙っていたのだが。
何事もなかったかのような穏やかな時間を九人で過ごし、談笑をしながら休息を取ってその日は帰宅することになった。
それでも、異能が戻って狙われやすくなった阿部を自宅に帰すことはできず、阿部、岩本、佐久間の三人で泊まり込むこととなった。
翌朝、9時半を過ぎた頃、阿部はコントロールルームに入った。自分がいつも座っていた椅子に座り、机に向かう。
後ろに立っているのは、目黒、深澤、佐久間、渡辺の四人。阿部は思わず、半眼になりながら後ろを振り返った。
💚「だからさ……ギャラリー多くない? 俺、電脳空間に入るだけなんだけど」
🩷「でも久しぶりじゃん」
💚「そうだけど」
💜「別にどうこうってわけじゃないけど、なんとなく見守りたいんだよ。久しぶりだと、阿部ちゃんがどのくらい中に入ってられるか分かんないし」
💙「電話、すぐできるようにしてあるから」
💚「準備いいね。まあ、俺も最初だからそんなに長く入るつもりはないよ」
💙「そう言って3時間くらい籠るだろ、阿部ちゃんは」
💚「う……今日はホントにちょっとのつもりなんだけど」
💜「30分。今回はそれで止めておきたい。いいね?」
💚「例の組織の情報収集するだけだから、とりあえずはそのくらいでいいと思う」
🩷「これで何か分かれば、前に進めるもんな」
🖤「阿部ちゃん、無理しないで」
💚「わかった。じゃあ、いってくるね」
ニコッと笑ってから前に向き直り、瞬きをすると目が緑色に輝く。虚空を見つめる緑の目に、電脳空間に入ったことを知った。
💜「うん、ちゃんと入れたみたいだね」
🩷「ちゃんと異能、戻ってんね。実はそっちも心配だったんだー」
💙「まあ、電波拾えてたから全部元通りなのかはわかんねえしな」
そうして話していると、パッと大型モニターに映像が映った。いつもは、見てもよく分からない情報がいくつか映し出されているだけだというのに。
自然と目が向くと、そこに映っているのは、青と緑の光の線が格子状に走って構成された暗い空間。そしてそこに立っている阿部の姿。
🩷「え、なにこれ?」
🖤「あ。これあれに似てる。ルミナシアパークのトラムのとこ。阿部ちゃんが、電脳空間に似てるって言ってた」
🩷「じゃあこれ、電脳空間ってこと?」
💜「封印を解いたから、見れるようになった?」
不思議に思いながら映像を見ていると、突然、阿部の胸の辺りから鎖が飛び出した。
それは意思を持っているかのように阿部の四肢に絡みついた。膝に巻き付いた鎖に引っ張られるように阿部の膝が頽れて床につき、手首の鎖が斜め上、左右に引っ張られている為に立ち膝のような格好になっている。
🩷「阿部ちゃん!?」
💙「何だ、これ! どうなってんだよ!」
そこへ。
コツ、コツ、と靴音が響く。ハッとして奥の方を見る阿部の視線を追うようにそちらを見ると、そこに一人の男がいるのが分かった。
仕立ての良いスーツに身を包んだ、静謐で、それでいて重厚な雰囲気をまとった30代の男。シルバーのネクタイピンが、電子の光でキラリと輝く。
『ようやくだ。この時を待っていたよ……阿部亮平』
男は真っ直ぐ、阿部だけを見つめていた。
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