「ここはパラレルワールドかい?」
「いや、違うわよ?」
「本を読むことがおかしいと言われる世界線で生きてきたつもりは無いんだけどな」
彼女は首を傾げてキョトンとしている。何故だろうか、その表情を浮かべたいのは僕の方だ。
この人は無視するとしよう。今は国語の授業だ。僕の夢を叶えるためには、この教科は必須だ。ここで遅れを取る訳には行かない。
彼女はあれから何か話してきたが、僕が無視を決め込んだところで静かになった。
「ねぇねぇ、次の授業なんだっけ?」
「道徳の授業だよ」
「なんで、そんな冷たいの?授業中だって無視してたじゃん」
「馬が合わない」
「冷た!」
「それに、授業はちゃんと取り組む人間だから集中したかっただけ」
「ふーん」
「そろそろ、授業始まるよ」
時計の針が授業始まりの時間を指そうとしていたのを確認した後、僕は席に着いた。
ガラガラガラと、教卓に近いドアが開いた。
「今日は夢についての授業をします。皆さんは夢がありますか?すぐに思いつかないと思う人もいると思います。ゆっくりでいいので、自分の夢を見つけていきましょう。」
夢、か。僕の夢はあの頃から決まっていた。
「因みに、もう夢があるっていう人はいますか?」
「はい」
「はい、佐野」
「小説家です」
辺りがざわついたような気がした。だが、そんなものは気にもとめないし、止める気もなかった。
夢のないやつが、夢を持つ人を下に見ることはおかしい事だから。ただ、横を見たら周りの状況と相応しくない目尻に涙を浮かべてた彼女、朝谷零の姿があった……。
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