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めっきり顔を出していなかった
同期同僚とのランチ女子会
正直あまり行きたくはなかったが
この日のお昼時
久方ぶりに
かつて毎日の様に通った
食堂のいつもの席へ向かった
かつて毎日の様に一緒にランチタイムを過ごした
いつもの同期女子メンバーは
かつてと同様に
いつもの席にいた
「お、水川さん!久しぶり~!」
私を見るなり
少し驚いた表情で
それでも
かつてと変わらぬ感じで
私を出迎えてくれた
少なくとも表向きは
その微少の驚きを孕んだ反応は
まるで久しく参加していなかった表れかの様でもあり
少し気まずかった
だが
以前と異なる点が一つ
鈴木さんがその場に居なかった
かつてと変わらぬ感じで
何気ない愚痴トークと
他愛もない世間話に花を咲かせる
だが
そこに鈴木さんの姿はない
気になった私は
話の合間に
さり気なく聞いてみた
「そういえば鈴木さんは?」
その間
ほんの一秒足らずだったと思う
一瞬
神崎さんと小山田さんの表情が固まり
一刻置いた後に
神崎さんが口を開いた
「何か忙しいみたいよ、よくわからないけど」
「……そうなんだ」
それ以上
あまり深くは話さなかった
噂話は大好物なはずのメンバー
きっと〇〇に違いないと
根も葉もない噂話をしそうなものだが
あまり深く話したくもなさそうな空気感だった
何か知っているのか
はたまた
単純に興味がないだけなのか
私には知る由も無かったが
私もそれ以上は突っ込まなかった
だけど……
あの小山田さんの表情は……
何か知ってそうな気もしたが
私にグイグイと突っ込む気概があるはずもなく
リュカや伊藤さんの様に勘が鋭いわけでもない
私個人の中では
渦中の人でもある鈴木さん
少し引っ掛かる気もしたが
それ以後は話題にも挙がらず
それ以上突っ込むのも気が引け
久方ぶりのランチ女子会は
相変わらずいつも通りの
ランチ女子会で幕を閉じた
鈴木さんの不在を除いては
***
それから幾日か経った頃だった
伊藤さんが
ニヤニヤとした顔で言い寄ってきた
「聞いて下さいよ水川さん~」
「元居た購買部の子から聞いたんですけど——」
そう前置きして
さも特ダネとばかりに
元購買部の伊藤さんが
仲の良い購買部の同僚から聞いた話として
語り始めた
それは
購買部の一部に
不正の嫌疑が掛けられ
経理等、関連部署を巻き込んで
監査が介入しているという噂だった
私は
なるほどこれだったのかと思った
先日
久しぶりに顔を出した同期ランチ女子会
購買部の鈴木さんは不在だった
部署内で起こったゴタゴタで
きっと鈴木さんは忙しかったのだろう
きっとこの話は取って出しのタイムリーな話
そんな話噂にもなっていないし
会社としての動きも表面化していない
正に伊藤さんの特ダネスクープなのだろう
それを
さも得意げに笑顔で語る伊藤さん
「まあ購買部って外部との窓口ですからね~」
「癒着や何やって不正行為は一番起こり得ますから」
「だから通常は何年かで担当範囲を異動するんですよ」
「担当範囲って?」
「基本的には製品群のカテゴリー別に担当が分かれてます」
「同じ取引先の同じ担当者と同じ購買担当の接点が長期間に及ぶと不正に繋がり兼ねないじゃないですか」
「だから購買の担当カテゴリーは定期的に異動します」
(なるほど……)
……
と思いつつ
私は
一つ自分が重大な見落としをしていた事に気付いた
私は当初
夫の浮気相手として
同期ランチ女子会のメンバーを疑っていた
それは
夫に付着した香水の匂いから来る
感覚的な疑惑に過ぎなかった
そして
それ以上の夫との接点は
同期ランチ女子会のメンバーには見い出せなかった
何故なら
同期ランチ女子会のメンバーの職種は
基本的に皆社内勤務
出張に出向く事は稀
それ故に
プライベートで知り合うという
天文学的な確率論の上でしか成立しなかったから
だが
営業職である夫純也が出張先で顔を合わせるのは
取引先である他社側の窓口は
——購買部だ
純也と込み入った仕事の話などほぼしない
もし
純也の会社とうちの会社に取引があった場合
若しくは
純也の会社が契約の候補として挙がっていたならば
購買部の鈴木さんと
夫純也との接点が生まれる可能性は
十二分にあり得る
#独占欲
#ダークファンタジー