あいつに謝罪を伝えるために。
「プルルルル」
にじさんじライバーが多く出演するライブの会議中、私のスマホが鳴った。
「すみません、一瞬だけ出てきてもいいですか?」
「おけ〜」
そう返事をくれたのは隣の席にいた不破さん。一礼をして部屋を出て、扉の近くで電話に出る。電話先は小柳ロウ、私の後輩である。
『凪、さんっ。あの人がっ、来ましたよっ。凪さん。そこに皆さんはいますか?魁星さんのお店でみんな待ってます。早く、きてくださいねっ』
電話越しでも涙を流しているのが伝わってきた。
「っ、もちろん」
そして電話を切り、会議室に戻る。多少大きめに扉を開き頭を下げる。
「すみませんが、急用ができてしまったので帰ってもよろしいでしょうか?」
無理だと言われることしか想像してないが、どうしても帰らなければならない。
「アキラ、、?何があったん?」
たらいが質問してきた。それはたらいが正しい。大切なライブの会議を急用で休むなんてあってはならないだろう。
「たらい、奏斗。あいつが魁星くんの店にいるらしい。早く行こう」
「「っ」」
二人はそれだけで伝わったのか、席を立つ。
「ん〜、ごめんだけど事情を説明してほしいな」
そう言ってきたのは叶さん。
「もう、会えないと思っていた親友が帰ってきました。この機会を逃したら多分、いや絶対に会えないんです。俺は、親友に酷いことをしてしまった。許されないことをしてしまったけれど、謝罪がしたいんです。だから、お願いしますっ!!」
たらいが私の言いたいことを代弁してくれた。私たちは必死だった。どうしても会いに行かなければならない理由だった。
「いいよ」
そう言ったのは叶さん。そう言われるとは思ってもみなくて顔を上げてしまった。
「その代わり、その親友さんにきちんと謝罪して、きちんと仲直りしてきて。会議は君たちが戻ってくるまで進めない。いいよね?みんな」
叶さんの言葉に皆さんが賛同してきた。
「もちろんだぜ!!奏斗君も雲雀君もアキラくんも、親友と仲直りしてきてよな!」
「仲直りしてこなかったらにじさんじライバーとして認めませんからね」
「あ〜、剣持に同意」
「凪ママ!奏斗!雲雀!仲直りしなかったら半・同期として認めないぞ〜」
「はぴの言う通りだ!!」
伏見先輩に葛葉先輩、海妹に鏑木。それ以外にもたくさんの人が私たちの身勝手な申し出を許してくれた。
「で、でも、、」
しかし、スタッフさんは困った表情だった。予定的に間に合わない可能性があるのだろう。
「この場合の責任は俺が取るな。やり直しのきくライブとやり直しが効かない親友との仲直りやったら仲直りの方がいいで。でもこれは今回だけやからな?だから、悔いのないようになってこい。何かあったら俺の責任っちゅーことで。お前ら、行ってこい」
不破さんが、最後に背中を押してくれた。みんながみんな、わがままに付き合ってくださっている。これで、謝罪もできないってなったら人として最低じゃないか。
「「「はい!!!!」」」
そして私たちは勢いよく扉を開けて、飛び出した。
あいつに、ごめんねと伝えるために。あいつに、謝罪を伝えるために。
NEXT 12月15日(お昼)
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