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「蛇足」


僕はつい、 扉の前で立ち止まってしまった。魁星くんのお店の前の扉を開ける勇気が何1つでなかった。

「奏斗、いきましょう?」

アキラの声がする。でも、でも、、。開けていいのだろうか?

「僕が、あいつと会っていいのかな、、、」

涙が頬をつたり、道にポツリと落ちた。また、ぽとぽとと。落ちていく。あいつの期待を裏切った張本人が、あいつにあっていいのかと。あいつを裏切ったのに、あいつにまたあっていいのか。あいつと会わない選択をしたのは僕なのに。

「会っていいとかじゃないだろ。会って、謝るんだよ!!それしか、俺らにはできないじゃんだろうが!!」

ひばが怒る。その通りだと、理解していても。あと、一歩が踏み出せない。あと一歩、扉を開けて言うだけなんだ。『ごめんね』って。それなのに。

「いくぞ」

アキラのその一言で、僕は扉を開けた。背中を叩かれたからだ。アキラが早く会いたいと言っていたから。扉を開けるとそこには、光のない、黒い男の子がいた。大人になれていないような、体だけ大人になって心が子供のままみたいな。そんな感じがした。その男の子は頬に一筋何かが伝っていた。

「ねぇ、期待してるから。俺を救ってくれる?」

あなたはそういった。その目線の先には長尾さんがいて、手を差し出していて、その手をあなたは握っていた。

あなたがそう言うのなら。あなたがそれを望むなら。あなたが僕らに期待をしてくれるのならば。僕らはそれに応えよう。それに応える以外選択肢がないのだから。扉から魁星くんとロウ君も出てきた。やっぱり二人の頬には光一筋が伝っていた。あなたはソファに座って、瞳に溜まった宝石のように眩しく輝く涙を拭き取り、もう一度重ねた。

「期待してるから。あの時みたいに。大人になった君たちなら、俺を救ってくれる、って。だっ、から。俺を救ってくれ、よ」

途切れ途切れに放たれる言葉はどうしても泣きたくなって。どうしても謝らないとね。

「ごめんなさい。あの時裏切ってしまってごめんなさい。あの時、お前を救えなくてごめん」

僕は謝るしかできなかった。あの時、一番最初に裏切ったのは僕だ。僕が、裏切った。

「でも、今のあなたが、僕らに期待してくれるのならば。あの時は、未熟だったから、子供だったから。でも今はっ、大人だから!あなたの期待に応えられるからっ、だから。僕らは一度あなたを裏切った。でも、またっ、僕らに期待してくれる?今度こそはっ!あなたをっ、救ってみせるからね」

今度こそは、救ってみせるから。今度こそは幸せにしてみせるから。

「期待、してるからね」

泣きながらも微笑むあなたの表情は、裏切られない1つの理由になった。ようやく会えたあなたが微笑んでくれたなら、僕らはそれに従おうじゃないか。


NEXT 12月16日

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