テラーノベル
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世界会議が終わり、先程の喧騒が嘘のように静まった午後。次々と帰る国を横目に、日本とカナダはこれから始まるお茶会の準備に勤しんでいた。
準備が終わり、お茶会が始まった。
僕は小さな小皿に控えめに盛られたブルーベリーを口に放った。
「このブルーベリー、美味しいね」
「ああ、このブルーベリーはアメリカさんに頂いたものなんです」
見せた表情に、少し胸が締め付けられた気がした。
君は気づいていないんだろうな、自分がどんな表情をしているのか。
普段は表情筋があるのかと疑うほど無表情な日本が、少し頬を赤らめる瞬間
それは、アメリカに向けられたものだ。
僕には一生向けられない表情。
(君は僕より、アメリカが好きなんだよね)
僕はアメリカには一生、勝てないや。
そんなことは……日本語で「百も承知」? というんだっけ。
「このチョコレート……綺麗だね」
「このチョコレートですか? 綺麗ですよね」
日本が軽く微笑んだだけで、心にじんわりと温かさが広がった気がした。
…いや、僕、どれだけチョロいんだよ。
そんなことを考えながら、色とりどりのチョコレートを手に取る。
口に運ぶと、この会の空気に相応しい甘い味で満たされた。
でも、このチョコレートも、元はとても苦いものだったはずだ。
それを何層も砂糖で無理やり甘くして、不自然な甘さにしてしまった。
この会だって同じだ。
一見、ほのぼのとした甘い空間に見えても、僕の汚らわしい菊への思いも含まれている。
奥底はとても苦くて……
(……馬鹿馬鹿しいな)
まだ口に残る甘さを紅茶で流し込む。
この思いも、一緒に流し込めればよかったものを。
(そんなことできたら苦労しないよ……)
甘い空気の中、カナダはひとつため息をついた。
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