テラーノベル
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それから俺は学校に行かなくなった。行く意味がない。価値がない。俺自身が何なのかも分からない。
死んでもいいと思ってた。いや、死んだほうが楽かもしれない。
だから毎晩、深夜に外へ出た。わざと人気のない道を歩いた。わざと暗い場所を選んだ。
襲って欲しかった。
ニュースで見た“連続殺人鬼”。あれは俺を救ってくれる存在に思えた。
タケルが羨ましい。あいつは“救われた”。
俺も救ってくれよ。俺を終わらせてくれよ。
俺はどうしたらいい?
今までの俺は?
どうやって生きてた?
何を考えてた?
どうやって笑ってた?
全部忘れた。体も心も、もう分からない。
俺は完璧だったはずなのに。完璧じゃない俺なんて、価値がない。
ピーンポーン。
……なんだ?
心臓が跳ねた。こんな時間に誰だ。
でも、聞こえた声で全てが変わった。
栞里の声だ。
嘘だろ……。栞里が来た? 俺の家に?
やっぱり俺のこと心配だったんだ。
嬉しい。
報われた。
俺の努力は正しかったんだ。
俺はベッドから飛び起きて、カーテンを少しだけ開けた。
栞里の顔を見たかった。俺を心配して来てくれた顔を。
でも──その隣に翔太がいた。
なんでだよ。なんであいつがいるんだよ。
あいつはいらない。邪魔だ。俺の世界に必要ない。
俺は睨んだ。呪いをかけるみたいに睨んだ。
でも翔太は──俺を見て笑って、手を振ってきた。
なんで笑うんだよ。
なんで手を振るんだよ。
何も考えてない。睨んでも意味がない。だってあいつには感情がないんだから。
俺の中でまた何かが壊れた。
俺はその夜も外に出た。歩いた。なるべく遠くまで。犯人に出会いやすくなるように。
きっと今日も誰かを救っているんだろう。
タケルみたいに。羨ましいよ。俺も救ってくれよ。
俺を選んでくれ。お願いします。
自分で自分を殺すのは辛い。だからお願いだ。
俺を終わらせてくれ。
「おーい! 俺はここだ! 頼む! 来てください!」
昔の俺なら、こんなこと絶対言わなかった。
でも今の俺は、もうどうでもいい。
……でも何も来ない。俺は犯人にも見られてない。
世界にすら無視されてる。
笑うしかなかった。
そっか。俺は世界に見捨てられたんだ。
自然に涙が出た。心が自分から離れていく感覚がした。
しばらくして、また家のチャイムが鳴った。
ピーンポーン。
栞里ならいいな──なんてもう思わない。
今は犯人ならいい。それだけ。
でも聞こえた声は翔太だった。
ママが楽しそうに笑ってる。嬉しそうに話してる。
笑わないでくれ。きっと俺をバカにしてるんだ。それしか考えられない。
俺は決めた。翔太に伝えることがある。
俺は部屋を出て、ゆっくり階段を降りた。この階段は、俺が“俺を辞める”階段。
「……ごめん。心配かけて。少し翔太と外に出て話したい」
ママも翔太も嬉しそう。多分俺をバカにしてるんだ。
「翔太、公園で話すか」
公園までの道のりは、やけに遠かった。
公園に着くと、翔太は授業のノートを渡してきた。こんなの必要ない。
「話したいことって?」
俺は空を見上げた。そして全部話すことにした。
「あぁ、それだな。……実は俺は栞里のことが好きなんだ」
翔太の反応はいつも通りズレてる。
俺は翔太が嫌いだ。でも今の俺には、このズレが少しだけ救いだった。
「あぁ……そうか。でも多分無理だろうな。振られたしな」
答えなんて求めてない。
ただ聞いて欲しかった。
「もう一度チャレンジだ! 僕に何かできることある!? 何でもする!」
「……何でもだな?」
「うん!」
試してみよう。
「じゃあ……翔太……お前、頼むから消えてくれ」
「え? どこに?」
またズレてる。
「お前がいると、俺はいつまでも栞里とくっつけないんだよ。だから……お前がいなくなれば、栞里は俺のものなの」
「普通友達にそんなこと言うかな〜」
「ああ、普通は言わないな。でも――お前は俺の友達じゃない」
「俺がお前に近づいたのは、栞里がいつもお前と一緒にいるからだ。……何でお前なんだよ?」
全部だ。全部話す。
「何考えてるか分からない……気持ち悪いお前なんかに……」
「え、僕……そんなこと言われたの初めてだよ」
違うよ。お前はいつも悪口を言われてた。
気づいてないだけ。
そうだ。神様に賭けてみよう。
「なぁもうさ。いっそのこと……あの連続殺人鬼にでも二人で会いに行って、どっちがやられるかゲームでもするか?」
「良くないでしょう! 分からないよ。それなら何でずっと部屋にこもってたの? ねぇ、何で? 教えて? タケル君のこと? 一年生の山田君のこと?」
「……タケルの訃報を聞いた時、栞里は俺じゃなくお前を心配そうな目で見てた」
その瞬間、翔太が俺の頭を撫でようとした。
俺は咄嗟に手を弾いた。
「やめろ」
触るな。慰めなんていらない。全部お前のせいなんだから。
俺が下に見えるのか?
そして翔太は、俺の逆鱗に触れた。
「マサシ! 分かった。僕が直接栞里に言ってみるよ!」
あっ、ダメだ。全部ダメだよ。
気づいたら、俺の手が出ていた。翔太を殴っていた。
気持ちよかった。
「何やってるの!?」
栞里の声だ。なんか……すごく嬉しかった。
「はぁあ! 栞里……来てくれたんだ……」
こっちに走ってくる。見てる。俺を見てる。
その瞬間、俺は弾き飛ばされた。
地面に転がったけど、俺は笑っていた。
「はぁ! 栞里に触られた……やっと俺のことを見てくれる」
「大丈夫!?」
心配までしてくれてる。
「ああ! 大丈夫だ!」
「あなたじゃない。大丈夫? 翔太」
……あっ。やっぱり翔太だ。
「僕は大丈夫。あっ、マサシがね、栞里のこと……」
余計なことを言うな。
言うな。
言うな。
俺は咄嗟に近くの石を掴んで投げつけた。
「これ以上言ったら……てめぇの舌、引きちぎるぞ!」
石が地面に転がる音がした。
その音よりも、栞里の顔が変わっていく音のほうが聞こえた気がした。
ゆっくりと、怒りに染まっていく。
「……あんた、本当にクズ。もういい。私はあんたなんか好きにならない。一年生の時も言ったよね? “私たちに近づかないで”って」
そして──
栞里の手が俺の頬を叩いた。
パァン。
世界が一瞬止まった。
「あああ……そっか。そうなんだ」
全部理解した。全部終わった。
もういいや。全部、壊れちゃったから。
マサシはもういないよ。ちゃんと死んだ。
「じゃあ……いいや。壊してやる」
その瞬間から、栞里は俺を“連続殺人鬼”だと推理し始めた。
もうどうでもいい。俺が犯人になるよ。俺が悪でいいよ。
だって、俺はもう“俺”じゃないんだから。
コメント
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ああ……読んでて胸がぎゅっとなりました。主人公の「終わりたい」って気持ちがひたすら痛くて、でも栞里の「クズ」の一言で全部が崩れた瞬間、もう戻れないんだなって感じました。翔太のズレた優しさが逆に残酷で……。最後の「俺が犯人になるよ」の諦めが、すごく重くて苦しいです。続きが気になります。
NGS_ヘビーなしっぽ
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#恋愛