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#現代
ぽたお
198
猫塚ルイ

9,478
122
僕は昔からずっと、ずっと、ずっと、色んなことを気になってた。
なんで?
どうして?
どうなってるの?
僕にとって“なんで?”は、僕を作るために必要な言葉だった。
だから、栞里が友達第一号になってくれた時、
本当に嬉しかった。
だって栞里は、僕の“なんで?”に全部答えてくれたから。
僕は僕を作れる。そう思ってた。
でもね。小学生、中学生になった頃から、栞里は僕に教えてくれることが少なくなった。
僕を叩いて遊んでくれる人がいた。僕はそれが楽しかった。
でも栞里は怒ってた。その子たちは、次の日から学校に来なくなった。
「なんで? あの子、学校に来なくなったの?」
その時から栞里は、いつもこの言葉を使うようになった。
『翔太は気にしなくていいの』
嫌いな言葉。だって教えてくれないから。
僕から“なんで?”を取り上げないでよ。分からないままじゃ、僕は何者にもなれない。
怖いよ。辛いよ。
高校に入って、友達第二号のマサシができた。
これも嬉しかった。マサシも何でも教えてくれた。
でも、少し教え方が下手というか、めんどくさそうにしてる時もあった。
栞里はマサシに冷たかった。なんでだろう?
ある日、栞里がトイレに行くから、僕もついて行った。
そしたらね。栞里が言ってたんだ。
「タケル、山田……許さない。」
気になるよね? 気になるよね?
「ん? どうしたの? タケル君、山田君?
許さない? なんで?」
聞いたよ。ちゃんと聞いた。
でもまたこれ。
『翔太は気にしなくていいの!』
呪いの言葉。
“気にしなくていいの”は、僕を守る言葉じゃなかった。
僕から“なんで?”を奪う言葉だった。
僕を作るための言葉を、栞里はずっと奪ってた。
僕は、僕のままでいていいのかな?
僕は、僕のままじゃダメなのかな?
僕は、僕を作れなくなっていた。
“なんで?”が消えると、僕は空っぽになる。
だからね、決めたんだ。
栞里が教えてくれないなら、直接本人に聞けばいいじゃん。
僕、天才でしょ?
タケル君はね、お友達と喧嘩してて、その日の夜に「家出してやる」って言ってた。
すっごい大きな声だったから聞こえたよ。
だから思った。
チャンスだ。タケル君に“なんで?”を聞ける。
僕は夜、忍者みたいに静かに家を抜け出して、
タケル君の家の前で待ってた。
タケル君が外に出たから、後ろからついて行った。
僕にはね。秘密兵器があるの。スタンガン。
スタンガンはネットで買った。だってさ、
“ビリビリで人が倒れるのはなんで?”って気になったから。
試してみたかったんだ。知りたかったんだ。
タケル君は倒れた。僕は「なるほど〜」って思った。
僕が昔住んでたアパートのガレージに連れて行った。タケル君は「家出する」って言ってたから、“じゃあここでいいよね”って思った。
僕とタケル君、いい関係だと思った。
でもね、タケル君、全然目を覚まさない。
困ったなぁって思った。
起きたらびっくりさせるために、黒いフードとアニメキャラのお面をかぶった。
でも、タケル君は何も話してくれなかった。
おかしいよね?
だから仮面を取ったんだ。僕だって分かれば安心すると思って。
でもタケル君は、僕の顔を見て、小さな声で言った。
「えっ……。あっ、ごめんなさい。」
それだけ。
僕はただ、“なんで栞里が怒ってたの?”って聞きたかっただけなのに。
タケル君は答えてくれなかった。
僕の“なんで?”を返してくれなかった。
だから思ったんだ。
この人は、僕が僕を作るために必要ない。
だから殺してあげた。
抜け殻はね、適当に川に流したんだ。どこまで行くのか気になったから。
ただそれだけ。
タケル君の血が手についてたの、その時は気づかなかった。
次の日、お母さんに言われた。
「翔太。手、赤い絵の具ついてるわよ。昨日描いた後、洗ってないでしょ」
びっくりした。だってこれ、絵の具じゃないもん。
僕は笑ってごまかした。だって説明するのめんどくさいし、説明したら「何で服汚すの!」って怒られると思ったから。
タケル君とはバイバイしたけど、でも大丈夫。
まだもう一人いる。
一年生の山田君。
山田君はね、僕が「タケル君が呼んでるよ」って言ったらすぐついて来た。
僕、嘘つくの上手くなってて嬉しかった。だって“なんで?”を知るためには必要だから。
ガレージまで連れて行って、タケル君の時と同じようにした。
山田君は目が覚めるのが早かった。これもまた知れた。
人によって起きるスピードが違うんだ。
「何するんすか!? 」
怒ってた。なんで怒るの?普通は「よく寝た〜」じゃないの?
僕は聞いたよ。
「なんで? 栞里はタケル君と山田君に怒ってたの? 許さないって言ってたよ?」
「知るかよ! 自分で考えたらどうなんだよ! バーカ」
教えてくれなかった。
まただ。また“なんで?”を奪われた。
すると山田君は急に驚いた顔をした。
「なんだよ、これ……赤いの……? はぁ?」
それはタケル君のだった。掃除、めんどくさかったんだ。
「まさか……タケル先輩の訃報って…… あんたの仕業か!? なんでだよ?」
“なんで?”僕が聞きたい言葉なのに、山田君が僕に聞いてきた。
なんで僕が答えなきゃいけないの?
「言わないよ。だって山田君も、僕に教えてくれないじゃん。」
山田君は僕に掴みかかろうとした。
遊んでくれるのかと思って、僕はまた同じことをした。
でもね、気づいたんだ。
気絶したら、僕と遊んでくれない。
それが一番つらかった。
だから、タケル君の時と同じようにした。
いらない子だから。
バイバイ、山田君。
僕はただ、“なんで?”を知りたいだけなのに、
誰も教えてくれない。教えてくれないなら、僕の世界には必要ない。
川の流れを見ていたら、なんだか不思議と落ち着いた。水ってすごいよね。全部を流してくれる。どこに行くのか分からないけど、きっとどこかで答えに変わるのかもしれない。
僕は、僕を作るために、もっと“なんで?”を集めなきゃいけない。だって、分からないままじゃ、僕は僕になれないから。
夜風が冷たくて、でも気持ちよかった。
タケル君のことも、
山田君のことも、
全部“なんで?”の途中なんだと思った。
明日になれば、僕はまた少し“僕”に近づける気がした。
明日は何して遊ぼうかな?
コメント
1件
うわあ…第11話、めっちゃ心臓にきたよ😭💦 翔太くんの「なんで?」がどんどん歪んでいくのが怖いのに、でも彼にとっては純粋な疑問なんだよね… 栞里の「気にしなくていいの」が呪いになってて、むしろ翔太を壊してたんだなって切なくなった。 タケル君と山田君の最期も衝撃的だったけど、ラストの「明日は何して遊ぼうかな?」が一番ゾッとした… ぽたおさん、この狂気と無邪気さのバランスやばいです!!続きも楽しみにしてます🔥📖