テラーノベル
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千歳と一緒に、近所の夏祭りに来ている。今年も屋台がにぎやかだ。綿あめ、たこ焼き、焼きそば、ビールの屋台まである。
屋台の光りに照らされて、朝顔の浴衣を来た千歳がはしゃぐ。
『かき氷! かき氷!』
今年のお祭りは狭山さんも誘ったんだけど、そしたら金谷あかりさんといっしょに来てくれた。今、夫婦二人で屋台ビールで乾杯している。そうか、金谷さんもう20歳か。俺も年を取るわけだ。
『あっ、星野さん!』
千歳が声を上げたので、見ると星野さん夫婦もいた。
「あら千歳ちゃん、和泉さんと来てるの?」
『うん、あと狭山先生たちも』
千歳は近くの狭山さんを指さした。
星野さんは狭山さんに話しかけた。
「あら、千歳ちゃんのお友達ですか?」
『先生は小説家の先生なんだ! ワシは狭山先生のファン!』
どストレートな千歳の紹介に、狭山さんは照れくさそうにしながら言った。
「いや、あの、若い人向けのファンタジーとかアクションの娯楽小説を書いてます」
まあ、星野さんの年代にラノベって言ったって伝わらないな。
「あらそうなの、あ、もしかして千歳ちゃんが前に貸してくれた本書いた方?」
『うん!』
「あらー! 面白かったですよ!」
狭山さんはさらに照れた。
「あ、ありがとうございます、励みになります」
俺は、星野さん夫婦にいつも野菜をくれることのお礼を伝えた。
「あらいいのよ! 千歳ちゃんにあげるとおいしいものになって返ってくるから、こっちがお礼言いたいくらいだわ!」
「そうですか」
確かに、梅もらったら梅干しにして返したり、びわもらったらコンポートとジャムにして返したり、はしてるんだよな。
いやー、千歳と身の回りの人たちが仲良くしてる光景はいいな。心が温まる。
千歳が射的屋の屋台を見て、『あっ、お前も来たのか!』と走り寄っていった。
「え、あんたおるってことは和泉豊もおる?」
『いるけど』
え、和束ハル!? あ、よく見たら隣に高千穂先生もいるじゃん。
「あー、どうも」
俺が近くに寄ると、和束ハルは高千穂先生の背に隠れるようにした。失礼だな。
この人のせいで、俺は去年の夏ひどい目にあったんだよな……。
でも、和束ハルは高千穂先生と暮らすようになってからぱたっと大人しくなった。和束ハルは、世界を壊すことより、かけがえのない一人の命を選んだ。
あの一件で、和束ハルは憑き物が落ちたのかもしれない。
コメント
1件
夏祭りの屋台の灯りや声が浮かんでくるようで、読んでいてこっちまでほっこりしました。千歳ちゃんが人と人をつないでいく感じ、本当にいいですよね。金谷さん夫妻のビール乾杯も微笑ましい。そして和束ハルが「世界を壊すより、かけがえのない一人の命を選んだ」という描写にはぐっときました。あの一件を経て憑き物が落ちた、という表現が沁みます。
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