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「ねぇ、涼ちゃん」
耳元で囁かれる甘い声。振り向くと至近距離に彼の両眼が藤澤涼架を見つめている。
優しいようで射抜くように真っ直ぐな眼差しから逃れられず、思わず目を伏せてしまった。
彼、大森元貴の顔が段々近づいてくる。首筋に唇が触れるのを感じて、藤澤の身体はびくりと跳ねた。
「チュー、していい?」
そんな様子を知ってか知らずか、大森はそう言いながらにこやかに笑いかけてくる。
ああ、俺はこの表情に逆らえない。
刹那、藤澤はそう痛感した。期待している自分がいることは間違いなかった。
「いいよ」
言い終わらないうちに大森の顔が近づいてきた。暖かい唇が触れて、接吻を交わしているのだと気づく。まるで、小鳥がじゃれ合うような爽やかなフレンチキスに、藤澤は伏せた目を開けた。
「ん、やっと涼ちゃんの目が見えた」
と、視界に入る大森の両眼はじっと藤澤を見つめたまま。
「恥ずかしいよ、元貴」
身じろぐような仕草で顔を背けた藤澤の項に触れるか触れないかのようなキスを落としながら、大森は彼を追い詰めてゆく。
「涼ちゃん、好きだよ」
好きだから、全部俺に見せて?
逃げ腰になってしまうのを咎めるように、後ろから優しく抱きとめられる。そのまま大森は藤澤の項に顔を埋めていた。
まるで、幼子が母に甘えるような仕草に、藤澤の心はどうしようもなく乱れてしまう。羞恥心が邪魔をして、素直になれない藤澤に、大森は焦れるように小聡明い表情を向けて寄越した。気持ちを見透かしているかのようなその仕草に藤澤の心はは絆されてしまう。
「俺も、もときが好き」
後ろから抱き締める力が強くなるのを感じながら、藤澤は元貴の髪を後ろ手で撫でつけた。藤澤の背中に伝わる大森の鼓動が先程よりも早くなっていることに気づく。
「えっちしよ」
耳元で囁かれる情事への誘いに、藤澤は何も言わずただ首を縦に振ることしか出来なかった。
大森はそんな藤澤の両眼をじっと見つめると、にこやかに笑いかけた。
「涼ちゃんの可愛いところ、全部俺に見せてね」
少し艶を帯びた大森の声が、先だっての情事を藤澤に思い出させてしまう。と、同時に自分の痴態も脳裏にフラッシュバックしてしまい、藤澤は身体がカッと熱くなるのを感じた。
「いいよ、もとき。俺も」
抱かれたい。
言葉にならない声で懇願した藤澤を背後から抱きしめつつ、大森は彼の腰を撫で上げた。
それからどうやって戻ったのか、藤澤は思い出せなかった。きって、タクシーか何かを呼んだのだと思ったが、頭にもやがかかったようで思い出せない。
意識がはっきりとしたのは、自宅マンションの玄関を開けて中に入った時だった。靴を脱ぐのももどかしく、性急に求めてくる大森を宥めながら寝室のドアを開ける。
ベッドに雪崩れ込むと同時に、大森は藤澤の着ていたシャツのボタンを外した。白い鎖骨が闇に浮かぶのをちらりと見遣りながら、大森は噛み付くようにその首筋に口付けを落としてゆく。
「好きだよ、涼ちゃん、好き、好き」
まるで譫言を繰り返すように愛を囁きながら、藤澤の肢体を愛撫していく大森。
その様を彼の腕の中で見上げる藤澤。
乱暴に見えるが、実際はその様は慈愛に満ちていた。藤澤が苦痛を感じないように念入りに前戯の時間を取り、彼の身体が解れてゆくまで大森はじっくりと愛撫を施してゆく。
「あっ…、、はぁ…」
寛げられた藤澤の胸元を大森の掌が這い回る。かと思うと、不意に胸元の突起を指で転がすように弄ぶ。その度に藤澤の身体ははねあがり、口から嬌声が漏れた。
「涼ちゃん、乳首弱いよね。気持ちいいの?」
「だって…元貴が、気持ちいいとこばっか、弄るからぁ…あっ! やだぁ…あぁん」
耳たぶを舐め上げられて、藤澤は身悶える。
「涼ちゃん、可愛いよ」
もっと可愛いところ、見せて。恥ずかしがらないで?
大森はまるで呪文のようにそう言うと、藤澤の下半身に手を伸ばした。パンツのファスナーを下ろしてゆっくりと脚を引き抜くとそのまま床に落とす。
無機質な音が響き、外気に晒された両脚の間を大森の身体が割って入った。
藤澤は何も太刀打ち出来ないまま、下着の上から大森の熱い猛りが押し当てられる。
涼しい顔をしているが、大森はかなり張り詰めていたのだと藤澤は痛感した。そして手を伸ばすと、その猛りに触れる。大森の吐息が段々と荒くなっていき、藤澤の首に吸い付くような口付けを落とした。痣になっているかもしれない程強く吸われ、藤澤は眼を閉じて大きく息を吐いた。
2話へ続く。