テラーノベル
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東京駅から深夜の新幹線に飛び乗り、僕は北の大地へと向かっていた。
車窓を流れる闇を見つめながら、僕は雨宮さんから受け取った古ぼけた原稿用紙を広げる。
そこには『極夜の街、眠らぬ観覧車』とだけ記されていた。
地名も名前もないその一文から目的地を割り出すため、僕は手帳を開き、遺された手がかりを繋ぎ合わせるように思考を巡らせた。
鍵となったのは、手の中で静かに回転を続けるルービックキューブだ。
よく見ると、揃っているのは「青」と「白」の2色だけ。
これを見て、僕は黄泉國さんが以前、事務所で路線図を眺めながら言っていた妙な雑談を思い出した。
『助手くん。日本の鉄道の看板や新幹線のカラーリングというのは、実によくできています。例えば、白地に青いラインは……いや、あれは雪と海をそのまま走るための保護色なんですよ。北に行けば行くほど、青と白がよく馴染む』
あの時はまたいつもの適当な雑談だと思って聞き流していた。けれど、違ったんだ。
「青と白のカラーリング」
それはまさに、僕が今乗っているJR北海道の新幹線の車体デザインそのものだった。
キューブの「青と白」は、この鉄路を北へ走れという彼なりのメッセージだったのだ。
だとすれば、「極夜の街」というのは、日本で最も緯度が高く、冬になればあっという間に太陽が沈んで「最も夜が長くなる街」――つまり北海道の札幌を意味している。
そして新函館北斗駅で特急に乗り換え、長い車窓の旅を経て、僕は明け方の冷たい空気が満ちる札幌の街へと降り立った。
ビル群の向こう、すすきののビル屋上にそびえ立つ観覧車『ノリア』が、朝霧の中で静かに佇んでいる。
「さて、、、ここからどうやって、二番目の編集者の居場所を特定するかだ」
僕は駅前広場のベンチに腰掛け、手帳で観覧車のスペックを調べる。
ゴンドラは全部で32台。一周約10分。そして、ゴンドラの色はすべて「黄色」だ。
「黄泉國さんなら、どうやってここに居場所を隠す?」
彼のこれまでの手口を思い出す。彼はいつも、現実の風景をまるで『原稿』のように扱い、そこにある「不自然なズレ」を指摘することで真実を暴いていた。
だとすれば、この札幌の景色、あるいは観覧車そのものに、彼が仕込んだ「ズレ」があるはずだ。
僕は観覧車の乗り場がある商業ビルへと向かい、エレベーターで屋上へと上がった。
営業時間前の静かなロビー。
ガラス越しに、ゆっくりと試運転で回り始めた黄色いゴンドラたちを凝視する。
1台、2台、3台……。
その時、僕の目に信じられない光景が飛び込んできた。
「……あそこだけ、色が『ズレ』ている」
32台あるはずの黄色いゴンドラの中に、1台だけ、不自然に「青色」に塗りつぶされたゴンドラが混ざっていた。一般の人間には、きっとあれも「黄色」に見えているのだろう。
カチリ。
手の中のルービックキューブが、まるで「正解」を告げるように自律回転を始めた。
揃っていた「青」と「白」の面が崩れ、代わりに「黄色」の面が一瞬で組み上がる。
そして、キューブの底面がカチリと音を立ててスライドし、小さなのぞき窓が現れた。
「のぞき穴……?」
片目を瞑り、キューブのファインダーを覗き込みながら、あの「青いゴンドラ」に焦点を合わせた。
レンズの役割を果たしているキューブのガラス越しに、青いゴンドラを見る。すると、本来なら無人のはずのゴンドラの中に、一人の女性が座っているのが見えた。
彼女は、膝の上に分厚い革装丁の本を抱え、こちらを見下ろして静かに微笑んでいる。
『――ようこそ、尊くん『原稿』を紡ぐ『執筆者』だっけか。長い列車の旅、ご苦労さま』
頭の中に直接、彼女の涼やかな声が響いた。
「見つけた……二番目の編集者、装丁家だ」
ゴンドラがゆっくりと地上へと降りてくる。
僕はキューブをポケットにねじ込み、彼女が降りてくるプラットホームへと一歩を踏み出した。
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めっちゃ調べたのー昨日
電車とかさ
誤字は報告!(もはや恒例)
コメしてくれてもいいのに
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コメント
1件
もう、この仕掛けの連鎖が粋すぎますよ……!「青と白」で「北へ行け」ってメッセージ、そして黄色いゴンドラの中に1台だけ潜む青いゴンドラ——現実の観覧車のスペックをちゃんと調べた上での伏線なのが、読んでいてゾクゾクしました。装丁家の登場も、ルービックキューブがファインダーになるギミックも、物語の世界観にピッタリで痺れます。作者さんの「調べたのー」って一言に、このクオリティを支える努力を感じて胸が熱くなりました。次が待ち遠しいです!