テラーノベル
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桜は彼のデスクにアイスラテを置いたまま、なんとなく去りがたくてじっとジンが物思いにふけって百面相をしているのを見つめていた ・・・
ずいぶんこたえていらっしゃるみたいだわ・・・
無理もない、このままでは『WaveVibe』の存続の危機だ、この社長以外にこの会社を切り盛り出来る人物はいない、あの強欲な株主達に会社が渡れば、自分達の安泰の地もなくなる
コトッ・・・と音を立てて、桜がデスクの向かいに新しいアイスラテを置いた
「社長、いつもよりシロップ多めにしておきました」
彼女はニコッと笑ったがその笑顔はどこか緊張感に満ちていた、その瞬間、ふいに二人の目がバチッと合った
ジンの切れ長の三白眼の瞳が何かを語る様に桜をじっと見つめる 、社長室に妙な沈黙が流れた・・・
桜もじっとジンを見つめ返してくる、彼女も何かを言いたげだ、その時ふとジンは思った
―この娘(こ)も・・・日本人だよな―
ジンの脳が追い詰められてショート寸前で暴走した
―ダメだ・・・こんな空気、耐えられん! 何か言わなきゃ!―
自暴自棄の狂気はジンの心をどこまでも落ち込ませる、ジンはフゥッと息を吐いて、突然口を開いた
ボソッ 「山田さん・・・上司命令で 君は僕のヨメになると言ったらどうする?」
―シ・・・ン・・・―
オフィスの空気が一瞬で凍りついた、ジンは自分の発言にハッとし、プイッとそっぽを向いた
― しまった! 何でそんなこと口走ったんだ、僕は?―
ジンの心臓が途端にバクバクと暴れ出し、額に冷や汗が滲む、目の前の書類が急に霞んで見えた、まずい!撤回しろ!セクハラで訴えられるぞ!
「なぁ~んてね、冗談です! ハハッ、冗談、冗談! 忘れてください!」
彼は慌てて両手を振って誤魔化した、だが、声はどこか上ずって普段の冷静なCEOの姿はどこにもなかった、ジンはデスクの書類をガサガサと弄り、平静を装おうとしたが、動揺して指先が震えているのが自分でも分かった
やばい!やばい! 何を言ってるんだ僕は! いくらビザ問題で追い詰められているとはいえ、頭がパニックになり、つい自暴自棄に冗談を口にしてしまった、こんな時にふざけてる場合じゃない、会社を・・・社員を守らなきゃいけないのに!
「ア・・・アハハっ!まったく冗談言ってる場合じゃないですよね!ほ、ほら、明日までに株主に「経営管理ビザ」問題の解決策を出さないと・・・もういいですよ、山田さん、行って下さい」
彼女がどんな顔をしているのか怖くてまともに見られない、もし、セクハラで訴えられたら・・・!
あの強欲な株主たちに頭を下げるよりも、彼女に軽蔑した冷たい視線を投げられる方がよほど恐ろしい気がした、頼む、笑って流して早く出て行ってくれ、山田さん・・・!
ところが、桜はまだ社長室の真ん中に立ったまま、一歩も動かずその場に固まっていた、彼女の目はジンをガン見し、唇が小刻みに震えている
―え?なに? 怒ってる? ショック受けてる?本当にごめんなさい!どうか訴えないで!―
ジンの背筋に冷たいものが走った、今の彼女は・・・まるで何か大きな決意を秘めたような、キラキラした目でこっちを見ている
「承知しましたっ!」
突然、桜がキッパリと言い放った、桜はタブレットを胸に抱き、頬をほのかに染めながら続けた、彼女の声は少し震えていたが、どこか力強かった
「私、社長と結婚します!」
「はぁ!?」
ジンは椅子からズリ落ちそうになり、慌ててデスクを掴んだ、心臓が喉から飛び出しそうだった
「ちょ・・・ちょっと待って、さっきのはホントにジョークだから! ほら、ビザのことで頭パニックで、ついふざけただけなんだ! どうか気にしないで!」
ジンはさっと立ち上がり、両手をバタバタ振って弁解した、しかし桜の目はキラキラと輝き、まるでヒーローを見る少女の様だった、その視線にジンの胸が妙にざわついた
コメント
2件
やった!これで上手くいくかも⁉️
ぎぁ〜あっぱれだぁ👏🎊最高!!! ジンさんも桜ちゃんもよく言った🤩