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「これでいいんじゃないか?」

「私はこれがお勧めですね」

はい。任せます……

地球に転移した後は、マンションで組み立て式の小さなお家のデザインをどれにするか話し合っていた。

正直どーでもいいが、こういうことを疎かにすると後々に響くって、雑誌の女性とのコミュニケーションコーナーに書いてあったからな。

俺は平和を愛する使者だからな!

「ミランちゃんのお勧めでいいかな?」

「もちろんだ。このパンフレットの商品はいつ届くんだ?」

「担当者にメールすれば在庫の有無を教えてくれるから、最短で今だよ」

…道理でネットじゃないわけだ。すでに手回し済みか。

「夜遅くに申し訳ないな」

「日本の営業マンに昼夜の概念なんてないんだよ」

ウチはホワイトだな……

ひどい所を基準にしたらダメだけど。

「あるんだって。まだ会社にいるからユニックに積んで持ってきてくれるみたいだよ」

聖奈さんがメールすると、すぐに対応してくれるみたいだ。

コールアンドレスポンスぱねぇ……

と、いう事で、聖奈さんはミランと共に転移で帰って、俺は会社に届くから取りに向かうことに。





前の倉庫と違い、新しい事務所は鉄の板で倉庫兼事務所の敷地を囲んである。

その壁の高さは4mくらいあり、入り口が閉まっていると中の様子は一切見えないだろう。

俺は入り口を開けて、業者が持ってきてくれるのを待った。



持ってきてくれた材料を転移させたら、今度はまたマンションへとんぼ帰りだ。

普段もこんなことばかりしているので慣れたものだ。

ちなみに会社へはフェラーリでは行かない。

なんかいやらしいじゃん?




「これがあの家になるんですね」

翌日の朝食後、ミランと共に裏庭に出ると、コメントを頂いた。

「そうだな。規模は違うけど、俺達の世界の家も同じように組み立て式だ。

昔は異世界ここと同じように現場で加工していたけど、今は加工されたものを組み立てる工法が主流だな」

「なるほど。組み上げるだけなのでしたら、私でもお手伝い出来ますか?」

うん。頼むよ。流石に一人は無謀です。

ライルは不器用だからって伝えられて、さっさと王都に送らされたしな。

どんだけ商人がしたいんだ?

「俺も見学させて貰おう」

「いや。ガッシュさんも手伝ってくれ」

何ナチュラルにサボろうとしてんだよ。

この為に態々早朝から迎えに行ったんだぞ!

「私はエリーちゃんとマリンとお家の掃除をしておくね」

貴女は働きすぎだからサボってくれ。

こっちがどれだけ働こうとも頑張った気がしないんだよ……

「わ、私もセイさんと…」

「ダメよ。エリーはそう言ってサボる気でしょ?」

マリンも段々とわかってきたな。

エリーもサボる気はないと思うが、楽な方を選ぼうとしたのは間違いない。

3人が家の中に消えると組み立てに取り掛かった。

ちなみに価格は70万した。

決して安くないが俺達からしたら必要経費であり、むしろ安く感じた。

もう金銭感覚は戻らないかもしれん。

「どれくらいで組み上がる物なのですか?」

「良い質問だ!組み上げるだけなら3人がかりなら1日だ。

ここでは基礎工事を出来ないから、土台は力技でならしてこの石みたいな物を並べることで済ます。

地球でもそれくらいの感覚で出来る事なら、身体能力の高いガッシュさんと魔法が使える俺がいるからもっと早く終わるはずだ」

昨夜にしっかり勉強しといた。

こういうのは手順を覚えているかどうかでスピードが全然違うからな。

まずは50センチ四方の取手のようなものがついた鉄板で地面を平らにしていく。

水平器を使い土を足したりしながら微調整をする。

1時間ほどで簡易的な基礎である土台作りを終えて、次は上物だ。



「お昼だよ〜」

聖奈さんが声を掛けてくれた。

「おっ。熱中してたらもうそんな時間か」

「意外に楽しいですね」

「ミランは物作り好きの血が半分流れてるからな」

バーンさんの顔が過ぎったのか、複雑そうな顔をしていたが、それもまた可愛い。

食事を終えたら午後からも作業だ。





「出来ましたね…凄いです。こんな短時間でお家が建ちました」

組み上げは終わった。

もちろんこのままでもそこまで不備はないが……

「実は仕上げがあるんだ。だけど、それは明日だな」

みんなが完成した6畳のログハウスを見て、口々に感想を漏らしていた。

中でも聖奈さんは『セイくんが作ったって思うと安心して寝れないねっ!』と言っていた。無視した。




翌日、朝からまたログハウスの前にいた。

「今日は何をするんですか?昨日ベッドなどの家具も搬入しましたよね?」

「一応防腐処理がされているけど、長く使う為にさらにこれを塗るんだ」

俺はそういうと塗料を魔法の鞄から取り出した。

この世界にも塗装はある。リゴルドーでは少ないが、王都ではちらほらと白色に塗られた壁などを見た。

不自然じゃないなら塗った方が長持ちするからな。

ちなみにバーンさん達家具職人も仕上げにニス(に似てる物)を塗っていた。

その日はミランと二人で塗装屋さんに転職した。




「塗り終えました」

今日は晴れていたお陰で、2度塗りが出来た。完成だ。

塗料臭いから寝れないけど。

「でも良いのでしょうか?こんな勝手をして」

「良いんだよ。多分本人もここに住んだほうが気が楽だしな」

「いえ、そっちじゃなくて…その…」

ああ。ミランが言っているのは、ログハウスの小さな三角屋根の下に、犬小屋のプレートみたいに『ライル』って書いたことか。

「いいんだよ。実際犬みたいな奴だから」

餌付けされた元野良犬みたいな奴だしな……

ライルって名前も犬っぽいし。




「おい!俺の名前が書いてあるぞ!」

夕食前、本当の意味で完成したので、改めてみんなに見てもらった。

ライルが何か吠えているが、嬉し鳴きかな?キャンキャン

「俺の家だ!ありがとな!セイ!ミラン!」

マジかよ…ホントに喜んでたのかよ……

「セイくん。わざとだよね?」

「ああ。この世界にはまだ犬小屋文化は早かったようだな」

何もライルを家から追い出したかったわけじゃない。

俺はできることならライルと同室がいいくらいだ。

正直ほぼ女子部屋では気が休まらないからな……

これでライルも彼女が出来たら気兼ねなくライル小屋に連れ込めるってもんだ。

「これでセイくんは大部屋に戻れるね!マリンもライルくんと一緒に住んだら?」

「な!?セーナ!!いきなり何言ってるのよ!」

なーんか。満更でもなさそうだなぁ……

いや、パーティが仲良いのはいいんだよ?

でも不純異性交遊はおじさん感心しないなぁ……

俺がイケメンに嫉妬しているとーーー

「明日からはまたダンジョンだろ?飯食って寝よーぜ」

「そうです!デザートも食べるです!」

22階層か……

何が待っているのやら。

また歩き回るだけな気がするけど、頑張るか……





翌日、22階層に俺達の姿はあった。

「コイツら程度ならまだ大丈夫だな」

「セイの索敵の精度が高いからだ。気を緩めるなよ」

俺達は既に一戦交えていた。

戦ったのはオークとリザードマンの混成部隊で、強さ的にはオークキング、リザードマンキング並みだった。

「戦う前に敵の位置がわかって、さらに前後から囲まれないようにルート選択が出来るんだ。こんな事は他のパーティでは無理だからな。過信は禁物だ」

「そうだな。俺達はどうも実力以上に運が良いみたいだ。

不運が訪れた時の事を考えて行動しよう」

ガッシュさんの言葉にリーダーとして同意しておこう。

じゃないとウチのメンバーはみんなすぐに調子に乗るから……

俺が調子に乗れないのはきっとコイツらのせいだろう。


しかし、俺たちにもちゃんと不運が押し寄せていた。


ここではないどこかで。






sideナターリア国王

「報告します!ハンキッシュ皇国の沿岸部に魔物多数出現との報せあり!」

今日も酒を飲もうとしていたら、臣下から報告があった。

どうやら余の休暇は終わりを迎えたようだ。

「応援要請は?」

「未だありません!」

爺の言葉に兵士が答える。

あの馬鹿な皇帝は自分達だけでどうにかするつもりのようだな。

しかし、わかっておるのか?

「陛下。帝国に放った者を呼び戻されますか?」

「今呼び戻しても情報が少ない。

放っておいてもあの男がこの機を見過ごすわけがない。

我が国はいつでも兵を出せるように準備しろ。

それと、エンガード国王に文を出す」

「はっ」

隣国を併合してからのこの数十年は大人しかったが、帝国最大の悲願は皇国の皇家の滅亡。

必ず動くはずだ。

エンガード王国の北は未踏の山に抑えられ、東は魔物の生息地、そして南は帝国。

さらに唯一の交易路でもある皇国がなくなれば、強制的に鎖国状態になってしまう。

そういう事情からも、皇国が無くなった後の未来は、予想ではなく必然に変わる。


「時代が動き出したか…」






〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓


エトランゼ編の途中ですが、お気づきの通り事件です。

話がわかりやすいように、この後も出てくるであろう人達の紹介をもう一度します。


※注意:年齢は初登場時のまま。


ミラン(13歳金髪美少女、冒険者、160cm、5月生)

長濱 聖奈(大学の学友、以前所属していたサークル仲間、165cm、6月生)

王城執事。セバス(白髪初老男性)

第二王子アンダーソン(14歳、金髪、165㌢)

近衛騎士シュバルツ(崖の人)

魔導士エリザベス・ドーラ(銀髪美少女、150㌢、赤ローブ、18歳、8月生)

カイザー・セイレーン・ナターリア(国王、30代後半、金髪偉丈夫イケメン、酒好き、女好き)

アメリア・ナターリア(第3王女、13歳、金髪美少女、158㌢)

身体強化の師匠ビクトール(60以上、白髪のロン毛、マッチョ、聖より背がだいぶ高い)

セイレーン冒険者リリー(グラマラス美女、20前半、Bランク)

王宮魔導具管理局長イラン(30歳、細身、茶髪)

冒険者ライル(20歳、茶髪短髪、172㌢、イケメン、ソロ、7月生)

マリン・パート(20歳、青髪、162㌢、美人、9月生)

以上がこれまでに出てきて、エトランゼ編でこの後も出てくるであろう人物です。

()内はイメージしやすいように程度です。

順番は大体出てきた順ですが一部前後しています。

この話以降の感想にはネタバレ防止の為、一部お答えできませんが、無視しているわけではないのでご了承下さい。



〓〓〓〓〓〓〓〓小話〓〓〓〓〓〓〓〓

本編が少しシリアスな展開を迎えたので、小話は中止にさせていただきます。

〜ぼっちの月の神様の使徒〜

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