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夢を渡る少年

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夢を渡る少年

6 - 第6話

2025年11月20日

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◆ 第6章 ユメトのいない朝 目を開けた瞬間――

 部屋は、ひどく静かだった。

 昨日まであった温もりが、

 手を伸ばしてもどこにも触れない。

 遥はしばらく天井を見つめていた。

 夢の余韻が、心の奥にまだ残っている。

 ユメトの声。

 ユメトの笑顔。

 夜の街を歩いたときの横顔。

 すべてが鮮明で、やさしすぎて、

 胸の奥をそっと締めつけた。

「……ユメト」

 名前を呼んでみた。

 返事は、もちろん返ってこない。

 だけど、不思議と涙は出なかった。

 泣きたいのに、涙がどこにも見つからない。

 ――泣かないって、あいつが言ったから。

 その言葉だけで、胸が張り裂けそうになる。




● 部屋に残された「気配」

 ベッドを降り、周りを見渡す。

 机。

 窓。

 床。

 椅子。

 どれも昨日と同じはずなのに、

 どれも少し違って見えた。

 ユメトがそこに立っていたような、

 触ったような、

 笑ったような気配だけが残っている。

 窓際に目を向ける。

 昨晩、二人で並んで座った場所。

 ユメトが外の景色を見ながら

 「現実の夜、好きだな」と呟いた場所。

 遥はそっと窓に触れた。

 冷たい。

 けれど、その奥に暖かい記憶がある。

「……いなくなったんじゃないよな」

 遥は自分に言い聞かせるように、

 ゆっくりと息を吸って、吐いた。

「俺の中には……ちゃんといる」




● 外の光

 ふと、外を見た。

 朝日が昇っている。

 薄橙色の光が地面を照らし、

 街は新しい一日を迎えようとしている。

 昨日二人で歩いた道も、

 今日の光の中では、また別の顔をしていた。

 思い出が増えた道。

 ユメトと歩いた唯一の道。

 遥は窓を少しだけ開けてみる。

 風が入ってきた。

 その風の中に、ほんの少しだけ――

 ユメトの気配が混じっているような気がした。

「ユメト。今日から俺……ちゃんと生きるから」

 風に向かって、静かに言う。

「お前の友達だった俺で、胸を張れるように」

 その瞬間、

 どこからか羽ばたく音が聞こえた気がした。

 黒い翼の風。

 優しく包むような、あの感覚。

 遥は目を閉じ、

 こみあげる何かをしっかり抱きしめた。

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