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白雪.。o○
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◇実行直前
部屋の前で、柔太朗と舜太が小声でスマホに向かってこれからの本番を説明する。
「今この会議室の中で三人は俺たちのことでめちゃくちゃ混乱してると思う」
「その三人に『俺たち付き合ってるから認めて欲しい』って言うたらどんな反応をするか、がドッキリやで!」
「カメラは部屋にもう仕掛けてるから、あとは俺たちの演技力だね」
「ん!頑張って恋人同士感出すから見守っててな!」
◇別れろ
ガチャリ、とドアを開けて柔太朗と舜太が部屋に入る。
何か言われたら、まず舜太から話を切り出すというシナリオだった。
部屋の中央に、膝に肘を付いて所謂ゲンドウポーズでこちらを見ている勇斗とめいいっぱい足を広げて腕組みをし顔を顰めて二人を睨んでいる仁人が並んで座り、少し離れた椅子に太智が面倒くさそうに座っている。
「…二人ともそこ座って」
仁人が自分たちの対面に置かれた2脚の椅子に座るようにすさまじく低音で言う。て言うか命令した。
思っていなかった部屋の中の空気に少したじろぎながら、柔太朗と舜太が言われるままに椅子に座る。
「あの、俺たち…」
「…さっき、俺、お前らが階段とこにいるの見たんだけど、あれ何してたの?」
舜太の発言を遮るように仁人が低い声で訊いた。
「あれは」
「俺だから良かったけど他の人だったらいくら事務所の人でもヤバかったの分かってる?」
少しだけ怒気を含んだ仁人の声が静かなだけに余計に怖い。
「仁人」
一方的に詰問していた仁人を勇斗が止めた。
「…二人の言い分も聞いてやらなきゃ」
そう言って、視線で柔太朗と舜太を促す。
「えっと、俺たち」
予定と微妙に違う進行に舜太が言い淀む。
と、それに寄り添うように柔太朗がそっと舜太の手を握った。
ピクリ、とそこへ年上三人の視線が集まる。
「俺たち、実は付き合ってて!
そんで…、できたらみんなにそれを認めてほしくて…!」
演技するまでもなく勢いを付けてそれを言うしか出来なかった。
一瞬の静寂。
それを破ったのは仁人だった。
「…ダメでしょ。俺たちの立場分かってる?
アイドルだよ?隠して付き合うつもり?
無理無理、俺たちにこんな簡単に見つかってさ」
ドスドスと正論が述べられていく。
「…別れろ」
仁人が少しだけ眉をひそめて、容赦なくそれを言い渡す。
柔太朗も舜太も本当に叱られてる気になってしまって固まっていたが、握りあっていた手をもう一度ギュッとして『反対された場合』のシナリオの続きを思い出す。
「…嫌だ、だって俺舜太のことめちゃくちゃ好き、だし…っ」
「俺も…っ、本気や!柔と別れるとか絶対ない!」
「…お前らさぁ」
「…仁人」
二人を睨みつけて何か言おうとした仁人を、今一度勇斗が止める。
「…柔太朗、舜太、本当に付き合ってんの?」
勇斗が改めて訊く。
「…うん」
「いつから?」
「…ちゃんと付き合い始めたのは2ヶ月くらい前」
ブルブルと震えながらそう言う柔太朗を舜太が心配そうに見つめる。
「…本気で付き合ってる」
静かな柔太朗の声がやけに重く辺りに響く。
「…やっぱ無理だよ、考え直せ」
冷えた声で仁人がもう一度二人に告げる。
「…でも、お互い本気で好きになったんなら、俺たちにそんな事言う権利はないでしょ」
勇斗が、憤りの態度を隠さない仁人の肩に手を置いて落ち着かせる。
「権利ある。メンバーだから。だってこいつらM!LKの事考えてない。浮かれてるだけじゃん」
「そんなの、付き合って2ヶ月なら一番楽しい時じゃん。仁人も分かるでしょ」
「でも、俺はもっと我慢できてた」
「…いやぁ、そぉ?でもまぁその分二人きりの時の切り替えはすごいよ、仁ちゃん?」
「…うっさい」
勇斗があまり見た事のないような甘い顔で仁人の顔を覗き込む。
仁人は口元をキュッと噛んで耳と目元を赤くした。
「それに、俺たちは付き合ってんのに柔太朗と舜太はダメとかかわいそうじゃん」
「…でも」
勇斗がチラリと二人を見て仁人を抱き寄せ、仁人はそれに抵抗せずに俯いた。
「え…」
舜太が思わず声を漏らす。
「…どういうこと?勇ちゃんと仁ちゃんて…、付き合ってんの?」
「うん、…付き合ってる」
勇斗が少し照れたように肯定した。
「なんか…二人ってもしかしてって思ってたけど…えー、あー、そうなん…?」
柔太朗も驚いた顔で勇斗と仁人を見つめる。
「そ、だからまぁ、仁人はまだ思う所があるだろうけど、…俺はお前たちの恋愛を認めるわ」
「あ、え、うん」
ここはありがとうと言うべきなのだろうか、シナリオどうだっけ?
「…太智はどう思う?興味ないだろうけど」
これまで、一切話に関わってこなかった太智に勇斗が声をかける。
「…別に、自分に関係ないことやからどうでもええよ、好きにやりや〜って思うけど〜
…グループ内にカップル2組もいるのしんどい!!」
心底嫌そうな顔で太智が喚いた。
「あー、太ちゃん、その…」
そろそろバラさないとヤバくなりそう。
本当ならもっと深刻な場面でドッキリをバラすはずだったのにタイミング間違えた。仁人が怒ってる時にすれば良かった。
引っ張ったばっかりに年長組の恋愛が明らかになった上、なんだか愛が溢れた結末になろうとしている。
「〜〜〜あんな!実はこれドッキリで…!」
耐えられなくなって舜太が打ち明けた。
「その…付き合ってるって言うのは嘘だから!」
柔太朗もそれに追従して仕込みをバラす。
一瞬その場が静まる。
「…知ってた、俺たち」
静けさの中、沈黙を破ったのはまたも仁人だった。
そして、自分の肩にまわっていた勇斗の腕を面倒くさそうに振り払うと柔太朗と舜太に意地悪そうな笑顔を向けた。
「お前たちが朝から俺たちにイチャついてるとこ見せて下地作ってたのも今この部屋に隠しカメラ設置してドッキリしかけに来たことも全部。だから三人で話して逆ドッキリ仕掛けたんだよ!」
「ッ…!? えぇ…マジ?」
舜太が、思わず脱力してしまう。
「え…、じゃあ勇ちゃんとよっしーが付き合ってるのは…」
柔太朗が『と言うことは…』という風の表情で尋ねる。
勇斗は薄く笑って仁人は一瞬真顔になった。
そして、二人が顔を見合わせて悪戯っぽく笑い自分たちの仕掛けたそれを明かす。
「……俺たちが付き合ってるわけないじゃん!
逆ドッキリだよ、ばぁぁぁか!!」
つづく
コメント
1件
おお、これは二重のドッキリで思わず笑っちゃいました!「付き合ってる」という嘘を仕掛けたら、先輩たちにも「付き合ってる」という嘘で返される——嘘が嘘を呼んでひっくり返る構造が面白い。特に仁人が最初あんなにガチで怒ってたのに、実は逆ドッキリの仕掛け人だったというギャップにやられました。太智の「カップル2組もしんどい!!」って嘆きが一番リアルで、そこも好きです。次話も楽しみにしてます。