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C _ chan @ 多忙
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も も .
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蝶姫
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17
別に、生活に不満があったわけじゃない。
わけじゃない、けど。ふと思い立ったら居ても立っても居られなくなって、最終電車に飛び乗った。
高鳴る胸とはやる呼吸を収めようと、胸の前でICカードを握りしめる。
やった。やってしまった。こんな、不良少年みたいなことを。帰りを心配する親からの連絡でスマホが震えた。友達の家に泊まると嘘をついて、電源を切った。
俺はその日。初めて、繁華街を見た。
ネオンと煙草の匂いと、たくさんの喧騒。
俺がいつも生きている「平穏な日常」とは全く違う雰囲気に、広がる知らない世界に、目を輝かせた。
見慣れない建物たちの中で、家の近くにあるコンビニが目についた。何故か引かれるように入店する。
ここまで来たらもう何をしたっていいだろう。 普段なら飲まないエナドリを買ってみた。コンビニの外でしゃがんでエナドリを飲む。
「…なにしてんだろ、俺」
ぼーっと街を眺める。ネオンの光は眩しくて。騒がしくて楽しそうな街を見ていると、なんだか視界が滲んだ。
「はー…… 」
ため息と共に潤んだ瞳を拭う。もう涙は出ていなかったけど、俯いた頭を持ち上げられなかった。
「ねぇおにーさん。なにしてんの?」
だから、頭上からかけられた声が俺に対するものだと気づくのに時間がかかった。
「ねーってば!なに?酔ってんの?」
ぺちぺちと頭を小突かれる。それでやっと俺への言葉だったと理解して、顔を上げる。
「お、起きてた。なにしてんのって」
「あんた、誰…?」
目の前に立っていたのはかっこいい男の人だった。明るい茶色の髪は肩につくぐらいまで伸びていて、蜂蜜みたいに綺麗な金の瞳は自然と人の視線を集めそうだった。
「俺?俺はur!あんたは?」
「ur…俺は、jp」
「jp彡ってここらの人じゃないっしょ?俺らいっつもこの辺りで遊んでんだけど、普段は見かけない子いんなーって」
urは、俺が関わったことがないタイプの子だった。きっと同い年ぐらいだろう。ストリートっぽい服を着こなす姿は、びっくりするぐらい大人びていた。
「お、みんな帰ってきた。jp彡さえよければ、俺らと遊ぼうぜ!」
urに手を引かれて立ち上がる。urが俺のことを引っ張ってくれて、俺もあの景色の一部になれたような気がした。
みんなと遊ぶのは、とても、楽しかった。夢を見ているみたいに楽しくて、いつまでもここにいたい、と思った。
「jp彡電車?俺んち駅向こうだから駅まで一緒に行こうぜ」
解散した後、urがそう言った。
自然と「また明日な」なんて約束ができるみんなが羨ましくて仕方なかった。きっと俺はもうここには来れない。
urと肩を並べて駅までの道を歩く。
「そうだ、jp彡。俺のとびきりの場所、教えてあげる」
少し離れたビルの非常階段を上がった先で、電車までの時間を潰す。すっかり疲れて地面にしゃがみ込んだ俺を見て、urは楽しそうに笑っていた。
「……jp彡、また来れねーの?」
「……多分、無理かな。きっと親にバレちゃうし、勉強しなきゃ」
「ふーん…」
urがおもむろに煙草を取り出して、吸い始めた。ぎょっとして声を上げる。
「うっ、ur!?未成年じゃないの!?」
「あ、……ないしょね?」
urは悪戯っぽく笑って、吸い込んだ煙を吐き出した。その煙は甘くてちょっと苦くて、やっぱり大人っぽい匂いがした。
「あ、時間…」
始発の電車はそろそろ動き出す。
立ち上がって、うーんと背伸びをした。
「もう行っちゃうのかよ、jp彡」
「……うん、帰んなきゃ」
urがわざわざ改札まで見送りに来てくれた。たった数時間しか一緒にいなかったのに、こんなにも別れを惜しんでくれる人がいる。
その事実で、胸が熱くなった。
「じゃあ、ね。ur、めっっちゃ楽しかったよ」
urが寂しそうに笑う。口を開いて、でも声にならない声を飲み込んで、俺に駆け寄って来た。
「jp彡!」
パーカーの胸を引っ張られて、キスをされた。
とても甘くて、ちょっと苦くて。
あ、これが、urの吸ってた煙草の味なんだ、と無意識にわかった。
「これでさよならなんて、させねーから!またな、jp彡!」
そう言い放って、urが駅を駆けていく。
さっき来た方の入り口に向かって。馬鹿だな、家が駅向こうだなんて嘘だったんじゃないか。嘘をついてまで、わざわざ見送ってくれた。
「………好き、だなぁ」
顔が熱い。ホームから電車が到着するとアナウンスが聞こえる。きっと今、俺の顔は真っ赤だろう。
親にも怒られるだろうし、きっと明日からは普通の毎日に戻るだろう。だけど、いつも通りの日々になんて、戻れるわけがない。
君が、君の匂いが、顔が、声が。
焼きついて、離れない。俺に焦げ付いた、あの味が忘れられない。
きっと君に出会った時。『普通の俺』は、壊されてしまったんだろう。
俺は、この夜。キャラメルみたいな恋をした。
コメント
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おお、これは……1話から心掴まれちゃったわ。夜の繁華街に迷い込んだ「普通の俺」が、urの煙草の味で世界ごと塗り替えられる感じ。非常階段のとこも駅の別れも良かったけど、最後の「キャラメルみたいな恋」って表現に全部持ってかれた。甘くてちょっと苦い、まさにそれだわ。……これ、俺も続きが気になりすぎて今夜眠れないやつ🔥