テラーノベル
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カチ カチ
真っ暗な部屋で,時計の秒針だけが響く。
何もやる気が起きない。
画面を見る気も,動画撮影も,編集も,ご飯を食べる気力でさえ沸かなくて
何もやりたくない。
ただ天井をぼーっと見つめて, やめて,また見つめて,
もうどれくらいの時間がたったのだろう?
分からない… 分かりたくもない。
最近はずっとこんな感じだ。
別に辛いことなんて何一つない。
お金もあるし,家もあるし,
大切な仲間だっているし,恋人までいる。
なのに気が滅入って,あることない事考えて、
いつもだったらスルーできる事も 今では目に留まってしまう。
そして泣いての繰り返しだ。
自分でも馬鹿馬鹿しい,おかしいと思うけど、
人間,感情には勝てない。
その感情を生み出しているのも結局は自分だから。
諦めて,ただただ暗い感情にしがみついて、
それしかできることが無い。
「ん,…なんか来た…」
突然電話が掛かってきた。
現在朝の2時、
こんな時間に誰だろう?
着信先を確認するとおらふくんだった。
「もしもし…?」
「あ,!もしもしおんりー、今暇〜?話そーよ」
「もう夜中の2時だよ、!?寝たほうがいーって!明日撮影もあるし…」
「ま‑大丈夫やって!それでさ〜」
俺の話も聞かずに急に話し始める。
「そーいや,おんりー今何してたん?」
「今?特に何もしてないけど…なんで?」
「いや,普段この時間はいつも配信しとるやろ?やのに今日は配信しとらんかったから,
なんかあったんかな〜って」
「おらふくんは何してたの?」
「僕?僕はおんりーに通話かけてたよ」
「そうじゃなくって!」
「あぁ、!おんりーと話したいなぁって思っとった!」
「え、あそう…」
無意識?それとも意識的?
そんな少女漫画のイケメンさんが言ってそうなセリフを言われても…
「ねぇ,今から家行ってい〜?」
「今から!?流石に時間も遅いしー…」
「おけ,ドア開けて?」
「え,?」
あわててドアスコープを除くとスマホをピコピコ弄っているおらふくんが立っていた。
「おらふくん歩きながら通話してたの!?」
ドアを開けて,おらふくんと目が合う。
「やっほー,おんりー」
目線を俺と合わせるなり優しい顔でニコニコ笑った。
そうやで,歩きながらおんりーと喋っとった、
なんて呑気に言っている。
部屋に通して、2人でソファに座った。
「こんな夜中に…何かしたい事でもあったの?」
「特に無いな〜」
「なにそれ…w」
取り敢えず飲み物だけ出して2人で飲んだ。
「〇〇で〜,〇〇の時〜ww」
楽しそうに話している。
どの話も全部の俺との話。
ここまで楽しそうに話されると,嬉しさが込み上げてくる。
こんな楽しい時間が,
「ずっと続いたらいいのに…」
不意に口から出てしまった。
取り消そうにももう遅い。
おらふくんが少し驚いた顔でこちらを見てくる。
気付いたら泣いていて、
「ッ, ごめ、…なんも、ない、」
泣き顔を見られたくなくて、必死に顔を隠した。
「どーしたん?」
声からでも伝わる,不安と心配。
「いや,なんでも…」
「なんでも無いとは思わんけど?」
何とか俺を助けようとするおらふくんの意思が伝わる。
でもほんとうに何もないんだよ…
仲間も家もお金も、おらふくんという大切な人も居る。
なのに、辛いことなんて何もないのに。
「ほんとに、本当に何もないの…」
説明が出来ない。
息が詰まって、胸が苦しくなる。
「辛いことなんて、ない、のに…」
泣いてるからか思うように声が出ず、つまってひっかかってしまう。
「なるほどな…」
「辛い内容が見つからないからって辛いって言っちゃいけない訳では無いんやで?」
俺の横まで来て手を握る。
その手はとても暖かくて、心のどこかにあったモヤモヤが消えていく感じがした。
コメント
3件
途中まで感動してたのにエロ広告のせいで気分だだ下がり