──────椎谷視点──────
しばらく悶絶した後、やっと苦痛から開放される。しばらくの間は自身の四肢が胴体と繋がっているかを確認する。そうした後、ようやく一息つくことができた。
───出来ればあの思いはもうしたくないな。
なんて思ってしまう。だが、私の考えを否定することはできなかった。本当に、あれは痛かった。肉体的な面でここまで削られたのは初めてだ。
「いやー今回のGルート時間掛かり過ぎじゃないですか?何回やり直したんだか全く…。」
「…は?」
『何回もやらかした』。その意味を私はよくわかってるはずだ。私は、この星の中で、めめ村がいる世界で何度も何度も世界に入っては死んで、また戻って───を、何回も繰り返している。
しかし、仲春の言い回しなら、私は『Gルート』そのものを繰り返していることになる。ただ、私には全く身に覚えがないことだ。
「どういうことですか?」
「いや、そろそろ展開的に明かしといた方が面白いかなーって思いまして。」
こいつはいつもこうだ。物事を面白いかどうかで決める節がある。私との契約内容も面白い話を作る手伝いをしろ、というもの。幼い私はあっさりと承諾しているが、今考えれば正気じゃない。
何故ならばこんなことが出来るやつと面白いというものさしが私と同じ基準な訳ないからだ。私が面白い、と思ったことはこいつにとってつまらない、ということになるかもだからだ。だから、割と無茶苦茶な契約内容である。なおかつ、彼女は世界を物語のように語る。if世界線を二次創作や、別世界と呼び、自身と並列の存在を読者と呼ぶ。そして、自身を作者───詰まり創造神と名乗る。神であることは認めるが、少し…うん、変人だ。人間である私の主観ではある。もしくは神というものがそういうものなのかもしれない。
ということは1度置いておいて。
どうやら彼女は展開───という名の未来について教えてくれるらしい。まあ、それはありがたい事ではあるが、意味深な言葉を使うのはやめていただきたい。
「椎名さん。あなたはなんと!Gルートをクリアするために37回繰り返しました!!多いですね〜!」
「…?」
言葉の意味がわからず、思わず首を傾げる。彼女はそんな私の反応に温度の差に気づいたらしく、わざとらしく咳払いをして解説を始める。
「えっとですね。実は、Gルートをあなたは37回やりました。」
「え、なんで?」
純粋な疑問が思わず飛び出る。37回もGルートをやった記憶はないが、それよりもそれをやった意味がわからない。なにか不具合でも起きたのか。不具合だった場合起きすぎだろ、という疑問が絶えない。
「いやーあまりにもつまらなすぎたので。実は面白い物語が未来に既に作られていまして。で、その過程の話も書くことになったんです。まあ、書くなら面白い結末じゃないと、ということでやり直してもらいました。」
「じゃあなんで私に記憶が無いの?」
「そりゃあなたがそのルートで学ぶことが何も無かったからですよ。不要なものとしてリセットです。その過程を書くのも面倒ですし。」
「…さっきから書くとか未来で作られてるとか───いい加減そういう言い方やめてくださいよ。私は、生きて、ここにいるんです。あなたは未来が見えてるかもしれませんが私は手探りで頑張って見つけ出そうとしてるんですよ!!」
私がそう反論すると、彼女は目をぱちぱちと瞬きをさせてから───吹き出した。
あまりにも失礼な反応。しかし、私は予想だにしなかったその笑いに、反応することができなかった。
「あははっはははっはは…ッ!!いやはや。まさか本当に信じていないとは。騙されやすそうだなーとは思ってましたがここまでとは…。」
「えっと…つまり?」
「ここは本当に物語の世界ですよ。あなたは登場人物で、メインキャラクターであり、東雲椎名というレッテルが貼られてるキャラクター。で、私はこの物語に唯一干渉することが出来る…まあ、つまるところあなた達から見たらこの世界の創造神ですね。」
声を出すことができなかった。あの妙な言い回しが、そのままの意味である。何かに足元をすくわれたかのような感覚。
───じゃあ、この人は自らハッピーエンドが創れるというのに、わざわざ私達を絶望に突き落としていたということか。その残酷な現実は私の心臓を容赦なく潰してくる。
「信じられないですか?なら特別に見せてあげますよ!『第3の壁』を。」
そう言うと、私と彼女の真横に私達の姿を映し出すかのようにスクリーンが現れる。
目の前には大きな人影。私達とは比べ物にならないほどの大きさの。私は、短く悲鳴を漏らし、そこからいち早く逃げる。
「あぁ、安心してください。あの人達は『読者』。この世界の観測者、とも言い換えられますね。彼らは私達に干渉できません。」
そう言ってにこにこした表情で彼女は彼らに手を振る。とても慣れている動作であった。───こんなの、手の込んだイタズラに決まっている。そう言いたいのに、否定したいのに。本能が、それが真実だとつたえる。じゃあ、私は一体何のために何をしているのだ。
「それはですねー。未来のあなたが言っちゃったんですよ。何も知らないくせに共感するなって。だからみんなが共感できるように今、書いてるんです。」
「じゃあ、え?私のやらかしはあなたがそう書かなかったから───」
「ああ、その言い訳はできませんよ。書いてる人あるあるなんですけど、突然キャラが勝手に行動して話し出すんです。そういう時はキャラが生き生きしていて…だからそのままにするんです。たとえ思っていた結末でなくても。」
「じゃあ…」
「はい、あなたの意思です。あなたがどういう人間で、どういうことをしでかすか。一番理解しているのがあなたであり、私ですから。」
そう言って彼女は目の前からスクリーンを消す。
その一瞬、私は『あなた』と目が合った気がした。
ここで切ります!Gルートにて、れいまりさんはこの世界の真実について知ります!最後はちゃんとカメラ目線アピールしてくれましたねー!嬉しい限りです。
てことで、なんとGルートクリアのためにかかったのは37回でした。詳しく説明しますと、そのルート事に能力や種族などが固定されてます。そのルートで面白い展開にしない限り記憶を消してやり直すということですね。
Gルート解説
今回は人外ハンタールートでした。
れいまりさんは人間で、能力は『ラジコン』。
登場キャラは地区リーダーめめさん、副リーダーいえもんさん、上司のガンマスさん、みぞれさん、同期のレイラーさん、敵として一瞬登場のラテさんですね。
今回は全員参加の前にれいまりさんが行動したことでめめいえコンビが動いてしまいました。けれど、れいまりさんの魔法の発動や、まさかの逆転しかける、という面白い展開に恵まれ、Gルートクリアとなりました。
人外ハンターの上層部は天使と悪魔で構成されている、という話を本編で出しましたねー。なので、その地区の上層部であるリーダー副リーダーめめいえは天使悪魔コンビでした。彼らは治安の維持とともに、辺りの人外の沈静化を役目、そして強い人間を見極めるためにいます。
で、人外が人外ハンターをやっていることがバレると人間から反感を買い、操作するのが大変になるため、人間に擬態しています。そして、人外である情報がバレると不味い。けれど、れいまりさんの血が使われたぬいぐるみ。それで、いえもんさんが情報を盗もうとしてるやつが内部にいることが分かる。大胆なことをしているため複数犯と断定。ならばここにいる人間は用済み。ということでいえもんさんが悪魔の姿に戻り、暴れます。逃げ延びたやつはめめさんが撃退した、と嘘をつき安心させた後、暗殺予定でした。
まあ、れいまりさんの実力を侮りしすぎて追い詰められてしまったんですが、そこはいえもんさんがカバー。
なんだかんだこの世界でもめめいえコンビは最強の人外コンビですねー
あ、この後勇者が誕生して人外達は割とあっさり殺されます。
それでは!おつはる!
コメント
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いや〜すごいね〜
…れいまりんの年齢この時点で下手したら1000は行ってるよな…?