テラーノベル
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「怖い?」と問いかける現在のルイの瞳。
その奥に、十年前の雨の日が重なる。
「……ルイ、行かないで。私、怖いよ」
まだ幼いマイロが、ボロボロの服の袖を掴んで泣いていた。
魔法の資質が見つかり、領主に「献上」されることが決まった前夜。
村外れの古い納屋で、二人は震えながら身を寄せ合っていた。
「……大丈夫だよ、マイロ。私が、必ず君を連れ戻すからね」
木剣を握りしめたルイの手は、今の騎士としての強固な手ではなく、ただの痩せっぽちで、無力な子供の手だった。
「約束だよ。……何年かかっても、君を買い戻すから、……君を、自由にする!だから、待ってて!」
「……うん。信じてる。……ルイ、大好きだよ」
――けれど。
数年後、騎士となったルイがようやく辿り着いたのは、「領主の館」ではなく、地下の奴隷オークション会場だった。
「……次、希少な魔力持ちの少女! ……開始価格は、金貨百枚から!」
檻の中で、薬漬けにされて虚ろな瞳をしたマイロ。
かつての輝きは消え、ただの「商品」として値踏みされる彼女。
その瞬間。
ルイの心の中で、何かが音を立てて死んだ。
……ああ、そう。
……「自由」なんて、この世界にはなかったんだね
……私が彼女を『自由』にしようとしたから、彼女はこんな地獄に落ちたんだ。
……なら、最初から、私が誰の手も届かない場所に閉じ込めておけば…
騎士の誇りも、正義も。
すべてを捨てて、ルイは血の海を潜り抜け、彼女を奪い返した。
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「……ルイ、さん……?」
怯えるマイロの頬を撫でるルイの手は、今や迷いなく、彼女を捕らえている。
「……約束、守ったよ。マイロ…」
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