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成長した彼女をずっと想像していた。翔の頭の中では、最後に会ったあの日の着物姿のままだったから。それが目の前で、あの夏の夜よりも長い時間お喋りを楽しんでいるなんて。
きっとあの夏の日から、俺の好みのタイプは変わっていないんだろうな。可愛い子とか優しい子とかじゃなくて、萌音がいいんだ。こんなに誰かのことを知りたくて胸が苦しくなるのは彼女だけだった。
何もしなくたって、いつかは萌音は俺のものになる。そう思うと安心してフランスにも送り出せたのだ。
そして今日再会した彼女に、思わず心を奪われた。特別素晴らしい格好をしていたわけじゃない。でも彼女から|迸《ほとばし》るオーラが眩しくて、今やりたいことを楽しんでいることが伝わって来て、そんな彼女がとてもキレイだと感じた。
懐かしさから食事に誘ってみたが、話しているともっと一緒にいたくなる。そんな魅力が彼女にはあった。
「このままでも、八ヶ月後にはめでたく結婚だもんな。でもびっくりするだろうなぁ、萌音ちゃん。まさかずっと知るのを避けて来た婚約者が、仲良しの店長だぞ。きっと交際ゼロ日婚でも上手く行くこと間違いなしだな!」
元基がケラケラ笑いながら言うと、翔は突然深妙な顔になる。
「どうした?」
「……そこなんだよ」
「何のことだ?」
「このままでも、萌音と結婚するのは変わらないんだけど、それだけだと物足りないというか……。欲張りなんだけどさ、萌音とちゃんと恋愛がしたいなぁと思って」
「……言ってる意味がわからない。じゃあ身分を明かすのか?」
「いや、それだとやっぱり違うんだよ」
「じゃあどういうこと? まさか婚約者から萌音ちゃんを奪うとか? まぁどっちも自分だから変わらないけどさ」
元基の言葉に、翔の瞳が輝く。
「俺という婚約者から萌音を奪う……なるほど……思いつかなかった……」
「まぁロマンチックではあるけど、萌音ちゃんはどうなるんだよ。苦しくなるのは婚約者を裏切ることになる萌音ちゃんの方だぞ」
「……じゃあ期間限定とかはどうかな。萌音が結婚するまでの間だけの恋愛。そうすれば後腐れないし、もし本気になって萌音が悲しんだとしても、俺が婚約者だってわかれば安心するだろうし」
翔は決して冗談で言っているわけではなかった。たとえ翔自身が萌音を愛していたとしても、今のままでは親の言いなりになって結婚するという印象は拭えない。
ちゃんと自分の気持ちを彼女に伝えて、願わくば彼女からも同じ気持ちを返されたい。
元基は翔の気持ちがわかるからこそ、小さくため息をついた。
「……そんなに上手く行くかな? 傷つけることに変わりはないと思うけど」
「……確かにどうなるかはわからないよ。それでもちゃんと気持ちを確かめ合いたいんだ。既に結婚が決まっているのに、心から愛し合ってから結婚したいって思うのは贅沢なのかな」
「でも告白してフラれたら、それこそ気まずい結婚生活になるかもよ」
「そしたら何度だってアタックし続ける」
翔の決意を聞き、元基は堪えきれずに大笑いをする。
「そこまで考えてるならやってみればいいじゃん」
彼に背中を押された翔は既に作戦を練っているのか、頬を赤らめながら不敵な笑みを浮かべた。