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───🍣side───
閉めきったカーテンの向こうから,轟々と降りしきる雨音が響く。
デスクの傍には大量の空き缶と無造作に丸められた書類の山。
薄暗い室内にぼろぼろの布切れが如く横たわったまま,ぼんやりと天井を見つめる俺のメンタルは限界を迎えていた。
桃『…』
<コンコンコンッ
桃『……誰』
<…りうらです。
<今いい?
桃『…ん』
<…ガチャッ
廊下の灯りがすっと射し込み,部屋に舞う細かな埃を白く照らす。
ぼやけた視界の奥には,遠慮がちに部屋をのぞき込むりうらの姿。
赫『……もう夕方だよ、ないくん』
『まだ籠るつもり?』
桃『…うん』
『今はなんにもしたくない』
赫『…そ』
何か折り入った話でもあるのか,控えめな音を立てて扉を閉める。
ちらりと見やったりうらの顔はひどく悲しそうで,不甲斐ない感情が滲み出るように影を落としていた。
桃『いむのことでしょ』
赫『…』
図星だったのか,緩くカーブを描いていた背筋がぴんっと伸びる。
桃『……簡単に見つかるなんて思ってない。』
『アイツらも馬鹿じゃないから。』
赫『…うん,そうだね』
『もっと範囲拡大して探してみる。』
『わかり次第また来るから。』
桃『…ありがと。』
赫『…』
ばたん…っ
再び雨音のみに身を包む俺の部屋。
左手に握った一枚の写真を顔上に掲げたのと同時に,ストレスで痩けた頬へ一筋の涙が伝った。
桃『……いむ,』
レフに収まったいむは,無邪気で恥じらしげで,それでいて嬉しそうな笑みを浮かべながらこちらを見ている。
血色のいい色白な肌を親指でそっと撫でるも,そこにあるのは写真特有のべたついた手触りだけ。
大好きなあの匂いも,柔らかさも,温かみも,何一つ感じられない。
いむはもう…ここにはいないんだ。
桃『………取り返さなきゃ』
いむの隣に写った,俯きがちな1人の少年と,恐らくフレームの外側にいるであろう2人の青年に静かで確かな殺意を込める。
いむは絶対渡さない。
いつか絶対,完全に俺のものに…
そこまで考えたところで,ここ最近の睡眠不足が祟り,俺の意識は闇に呑まれて深く深く沈んでいった。
───💎side───
身体がふわふわと軽い。
宙に浮いているような,誰かに抱きしめられているような,なんとも言えない懐かしい感覚。
僕…もしかしてもう死んじゃった?
水 「……生きてるなぁ…」
霧がかかったようにはっきりしない頭と急激にひらけた視界で,自分がまだ地に足を着いた存在であることを認識する。
星柄の天井,枕元のぬいぐるみから推測するに,ここは恐らくさっき初兎ちゃんに案内してもらった昔の僕の部屋だ。
いつの間に眠ってしまっていたんだろうか。
水「……? 」
上半身を起こそうとお腹に力を入れるも,やけに重い体が言うこと聞かない。
…いや,重いというより…
白『…zzz』
水「…」
水((なんかしがみつかれてるんですけど!?!?
水「…ちょっとしょーちゃん…重いからどいて?」
白『…』
水「…ねーえ」
白『…』
右腕をがっちりホールドされ,柔らかくて艶やかな髪の毛が頬を擽る。
胸骨の辺りを第2関節で軽く小突いてみるも,熟睡しているのか一向に目を覚ます気配はない。
水(警戒心なさすぎでしょ…)
白『……んん…』
水「…」
猫のように両端が軽く上がった口元。
心底心地よさように眠る彼を起こすのは,人として気が引ける。
優しさなんかじゃない。ただの道徳心だ。
水「うーん…」
がちゃっ
水「…ん?」
碧「……あ」
水「…」
「…救世主」
碧『………は?』
水「せめてあにきだったらよかったんだけど…」
「まぁありがとね。」
碧『…普通にありがとうって言えや』
『嫌味な奴やな』
額に血管を浮かせ,綺麗に弧を描いた眉をぐっと顰めるいふくんは,岩のように守りを固めていた初兎ちゃんを難なく僕からひっぺがしてくれた。
そんな事知る由もないであろう表情で眠り続ける様。ある意味尊敬する。
水「……それで 」
「何で僕こんなとこで寝てたの?」
ぐいーっと伸びをしながらあくび混じりにそう尋ねる。
脇の下辺りにずり落ちた毛布を初兎ちゃんの肩までかけ直していたいふくんは,僕の言葉に分かりやすく目を張った。
碧『…まじかよお前』
水「?」
信じられないとでも言うように顔を強ばらせ,再度溜息を漏らす。
嫌味ったらしくてねちっこいのは絶対こいつの方だ。
碧『そこで急に倒れたんよ』
『うわ言ブツブツ言いながら』
水「…え」
マネキンのように綺麗な親指がすっと入口の方をさす。
確かあの辺で初兎ちゃんと軽く会話して,よくわかんないぬいぐるみ拾って,タグがどうのこうのみたいな話聞いて…それで……。
水「……ねえ,それって何時間くらい前の話?」
碧『…丸1日?』
水「ッま…っ!?」
「…」
「うわやっば…何にも覚えてない」
「お酒でも飲んだっけ僕」
碧『あほか未成年やろ』
水「いやそうだけどさ!」
「…無理やり飲ませたとか…」
碧『…』
水「いた “…ッ!?!?泣」
─── 🤪 side ───
白『いむくーーーーーん!!!!(泣』
『目ぇ覚めてよかった…まじでよかったぁぁぁぁ…っ泣』
水「 ~~ ッぁ”ーもう…しつこいっ!!」
「暑いから離れてっ!!!」
白『嫌や!!無理!!もう離さへん!!』
『ふんっ!!泣』
水「…(諦」
どうすることも出来ないと悟ったのか,諦めたようにすとんと肩を落とすほとけ。
…と,その隣で苦笑いを浮かべるあにき。
黑『許したってやー?笑』
『ほとけが倒れてから気が気じゃないってずっと傍におってくれてたんやから』
水「…絵に描いたみたいな爆睡こいてたのに?」
黑『……それは初耳やわ。』
水「もうぐっすり」
黑『…まじかよ』
水「まじだよ」
黑『…』
水「…」
白『うぅ “ ~~~ …っ(泣』←聞いてない
碧『…』
…コントかよ。
碧 『…なあほとけ』
水「…(ピクッ」
「…なにさ」
碧『……あからさまに嫌な顔すんなよ』
水「別にそんなんじゃないし…」
「…で?なんか用?」
碧『…』
どうもこいつは俺のことが嫌いらしい。
昔はもっと可愛げあってんけどな…
碧『……はあ』
『…薬のことやけど』
薬,というワードに敏感に反応した…ように見える。
見向きもしなかった態度から一転して俺の目を見て首を傾げた。
水「…薬って…常備薬のこと?」
碧『…多分それ』
『あれって何の薬なん?』
水「………さあ、知らない」
碧『…は??』
水「飲めって言われたから飲んでるだけだよ。」
ぱちぱちと瞬かせた目に浮かんだのは純粋な【無知】の感情。
碧『…意味わからへんねんけど』
『誰なん?その…飲めって言うてきた奴。』
水「…」
「言わない。」
ふいっと顔を背けて頬杖を付き,そっと目を閉じる。
…ワケありか。
碧『……あっそ』
『ほな質問変えるわ』
水「…。」
碧『…お前んとこのボスは,常闇ないこってやつで合うてる?』
白『………』
黑『…ッ!』
水「…」
きゅっと開いた瞳孔。
縦に長く,丁寧に切り揃えられた爪が頬に軽く食い込んだ。
碧『…合うてるんやね』
水「ッちがっ_…!(机叩」
碧『あ”?ほな誰?』
水「……ッ,」
言葉に詰まった様子で下唇を噛む。
碧『…嘘が下手やなぁ。お前。』
水「ううう、うるさい…っ!!」
「…てか,なんでいふくんがボスのこと知ってんのさ!?薬のことも!!」
碧『…』
『さっきほとけが倒れた時,ピンクの薬ってぼやいててん。気失う寸前にな。』
水「…っ」
碧『ここに連れてきた時,内ポッケに入ってたから回収しといたんやけど,』
『何や飲ませんとそのまんま死んでまう気ぃしたから初兎に取りに行かせたってわけ。』
『な?』
白『…おん』
遠慮がちにコクコクと頷くしょにだ。
碧『…飲ましてびっくり。一瞬で顔色戻るし,さっきまでの過呼吸も嘘みたいに治まった。』
『普通の処方薬じゃありえへん効用よな?』
水「…」
そうなの?とでも言いたげに瞳を揺らす当の本人は明らかに動揺している。
本当に何も知らないんだろう。
碧『…俺の海外の知り合いに薬学者がおんねん。』
『ソイツに聞いてみるさかい,サンプルに1粒貰ってもええか?』
一瞬の沈黙の後,一周まわって冷静さを取り戻したほとけが小さく口を開く。
水 「……拒否ったところでどうせ持ってくんでしょ」
碧『…まぁな』
伏し目がちに深く息を吐き出し「お好きにどーぞ」と吐き捨て,部屋を出ていった。
その背中を初兎が慌てて追いかける。
黑 『なあまろ…』
碧『…』
黑『…あいつの名前出すの,まだ早かったんとちゃう?』
碧『…いつ言うたって一緒や』
『いずれは話さなあかんことなんやから』
黑『それはそうやけど…』
『……いつ話すつもりなん?』
碧『1ヶ月後。』
黑『…えらい溜めるんやな。』
碧『おん』
『……勿忘草が咲くさかい』
バルコニーに視線を移した俺を見て, 何かを察したように俯くあにき。
黑『…そうか』
『まあ…まろのしたいようにしたらええよ。』
『無理なくな。』
碧『…ありがと』
『ちょっと電話してくるわ』
黑『…ん,了解』
碧『…』
脈略的に考えて,薬を渡したのはないこだ。
今更遅いかもしれないが,どんな作用があるかくらいは知っておいた方がいい。
たんっ_(タップ音
碧『…』
『…Hello.This is If.《もしもし。威風です。》』
『I have something I want to ask you_《聞きたいことがあるんやけど_》』
…お前の事は俺が1番よう知っとる。
居場所なんかとっくの昔に割れてるんよ。
せやけど…せやけど多分,お前は…お前らは…自分の足でここまで来るつもりやろうから。
しばらくは4人で隠れさせてもらうな。
碧『………待ってんで,ないこ。(ボソッ』
──────ᴛᴏ ʙᴇ ᴄᴏɴᴛɪɴᴜᴇᴅ──────
コメント
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うわ!気になる終わり方✨ 最初から最後まで書き方好きすぎる🫶💕 どう言う関係なんだろ、?(((o(*゚▽゚*)o))) 続き楽しみです♪
垢変わりましたがあるとです!! ほんとに神すぎます🥲 どうなるのかちょっとだけわかってきた感じしてきてわくわくしてます!!w 続き楽しみに待ってます!